She’s Mercedes meets Japan / Vol.11

神奈川県 小田原市(旧東海道)前編 鈴廣かまぼこ 鈴木智博

日本各地に今も伝わるぬくもりのある手仕事や、受け継がれてきた確かな技を次世代へつなげて行こうと活動をしている「uraku」、彼女達が旅のみちみちで出会う日本の美しい風景や物、事、をメルセデスと共にみつめる旅紀行。女性2人ならではのゆったりとしたロードストーリーの行き着く先は…

photo/ 濱野智(glife)
text&edit/石崎由子(uraku)
navigator/田沢美亜(uraku)

域を大切にする人々がいる町、小田原

メルセデスで巡る旅、今回も旧東海道を辿る旅です。前回の横浜を通り過ぎてそのまま進み、箱根の手前、小田原へと向かいます。
小田原の歴史はとても古く、縄文時代の遺跡も残り古くから人々の営みが行われた場所でした。特に発展したのは歴史ドラマなどでもよく取り上げられる小田原の街を作り、治めた北条氏の時代からです。今年はその北条氏が小田原に北条氏の本拠地を移して500年の節目の年でもあるそうです。北条氏の初代、北条早雲は最初の戦国大名とも言われ、荒々しいイメージの反面、領民の安寧を理想とする国づくりを行い、地域の民からは慕われていたようです。小田原の駅前、ロータリーのど真ん中には北条早雲の像が設置され、その思いがうかがわれるようです。
そんな歴史的な街を走る今回の旅のお供は、C-Classのクーペモデル、カラーはダイアモンドホワイトです。スポーティーで少し遠出する時には快適な乗り心地と、室内空間が特長です。
古くから栄えた街、というだけあってこの小田原は様々な商売人も行き交い、商店も多く立ち並んでいました。今回お会いする方はそんな小田原を代表する商品でもあり、その商品の老舗「鈴廣」の11代目にあたる鈴木 智博さんにお話を伺いました。
地域を大切にして、繁榮と豊かさを地域に暮らす人々と共有するという早雲から引き継がれているかのような心意気を伺いました。

鈴廣かまぼこの里

かまぼこのお店としてその名が知られる「鈴廣」さんは小田原とその周辺には多くの店舗を構えています。本店のある風祭という区域は小田原の市街地から東海道を箱根方向へ少し進んだ場所にあります。
ここは「鈴廣かまぼこの里」と言い、本店以外に大きな販売店や、かまぼこ博物館、ゆっくり食事ができる食事処、箱根ビール醸造所、などがまとまった、集合施設となっています。
1865年この小田原で創業し、今年で153年となる「鈴廣」さん。現在は10代目が引き継がれていますが、今回お話を伺うのは、次世代を引き継ぐ11代目にあたる鈴木智博さんです。シャキッとスーツ姿で私たちを出迎えてくださいましたが、笑顔はまだ初々しい感じの漂う好青年です。
まずはかまぼこ博物館で、かまぼこの歴史や、製造工程などを見せていただきながら、説明してくださいました。このかまぼこ博物館では、かまぼこを手作業で作り上げていく成形の作業を見学することができます。また歴史が分かる展示や、原材料となるお魚の種類や、特徴、練り物の種類なども詳しく分かる展示があります。また、かまぼこの手作り体験もできたりと、より詳しくかまぼこを知ることができる場所です。

「鈴廣」さんのかまぼこは、厳選された天然の“シログチ”と言うお魚を中心に使われています。このお魚をすり身にし、その後3段階の工程を行います。板にすり身をつけ土台を作る「引き起こし」、その次は、形を私達の知っているかまぼこ型に整える「中掛け」、最後に、表面につやのあるすり身を重ね、両端を綺麗に仕上げる「上掛け」です。全て熟練の職人さんが手作業で行っています。この手作業のかまぼこ職人さんには試験が有り、国家資格が必要なのだそうです。作業の技術や、お魚の取り扱い、見極めなどの知識を持った資格保持者というわけです。鮮やかな手さばきは見ていても惚れ惚れします。
かまぼこの前身の練り物の歴史は約900年前の平安の頃よりあり、お魚をより美味しく食べる方法はないかという発想から生まれた保存も兼ねた調理法で、様々な練り物のスタイルが日本各地にあります。この扇型で、板に付けたかまぼこの形は「小田原かまぼこ」と言い、この地が発祥なのだそうです。

小田原ならではのかまぼこ

職人さんの資格とは別に、販売や営業のため、製法や、歴史、など様々なかまぼこに対する知識をきちんと身につけるため、社内制度で資格付けを行い、ソムリエのようなランクをつけているそうです。その資格のある方が販売店内にあるかまぼこバーで、かまぼこの試食と説明などをしてくださるそうで、早速かまぼこバーへ伺いました。
素材と、製法にこだわった手作りのかまぼこは、お魚の味と風味がしっかりと最後まで
口の中に広がり、みずみずしくプリッとした弾力のある食感が、癖になります。
メインディッシュになるほどの存在感で、また食べたいと思わせるかまぼこです。
新鮮なお魚を無添加のこだわりの製法で、美味しいかまぼこを仕上げていくという事を、大いに助けているもう一つ大切なものが、豊かな自然が育む丹沢水系のお水だそうです。ここのお水で作ると、プリッとした食感に仕上がるのだそうです。そして、東海道の途中の城下町であったという事が、全国に広がる要因にもなっていたのだとか、まさにこの小田原の地ならではの商品なのだと思いました。

身の丈にあった企業のあり方

美味しいかまぼこをいただいたら、お土産が欲しくなり本店でお買い物です。
お買い物を終え、鈴木智博さんにゆっくりお話を伺いました。
子供の頃から身近にお店を感じていた鈴木智博さんは、ごく自然に「鈴廣」を引き継いでいくのだなと感じていたそうです。学校卒業後、一度お魚の買い付けをする会社に就職してから、「鈴廣」に入られたそうです。
小さな商店ではなく、関東圏で大きな流通を持つ会社でありながら「鈴廣」さんは
商品だけでなく、小田原という地域にもこだわりを貫いているところが魅力です。
魚のいのちを人のいのちに移しかえることを商いとして行なっているという考えが、そのこだわりを支えているのだそうです。
鈴木智博さんのおじいさまの代で色々な体勢を確立されたようです。その頃、流通手段や、科学薬品などに変化が起こり始め、日本の企業が大量生産へと変化していった時期です。そこであえて原点を見据え、自分たちを育んだ小田原の自然を大切にして、海、山の自然を保つこともかまぼこ作りの一部ととらえて活動を行ったり、魚の命や味を添加物や、薬品で変化させることは、自分たちの技術の無さをごまかしていることになると考え使用しなかったり、またそのために独自の研究機関を作り、日々、より美味しいものを自然な形で提供する技術の開発を行っていたりと、とにかく身の丈にあい、地域をを大切にした、商品提供を行なうことに徹しています。
その結果、信頼できる味と品質を、長らく保ち続けているのだなと思いました。
“山の麓で久しく長く輝く星であれ”という意味の会社のマークを誇らしげにつけている鈴木智博さんの姿は、そんなご先祖さまから引き継いだ思いをしっかり背負っているのだなと感じました。
細やかな手仕事や職人が誇りだったはずのこの国は、いつしか大量消費、大量生産になってしまっています。これからの日本人や、企業が見つめ直さなければいけない、新しい社会をささえる企業のあり方や理念は、この「鈴廣」を見つめたら答えが見つかるのではと思いながら、「鈴廣」さんを後にしました。


 

店舗データ

鈴廣かまぼこの里

鈴廣かまぼこの里

〒250-0032 神奈川県小田原市風祭245
tel:0465-22-3191(代)
https://www.kamaboko.com/sato/
営業時間:平日 9:00~18:00
     土・日・祝 9:00〜19:00(施設により異なります)
 
鈴廣のかまぼこ博物館
〒250-0032 神奈川県小田原市風祭245
tel:0465-24-6262
https://www.kamaboko.com/sato/shisetsu/hakubutsukan.html
営業時間:9:00~17:00
*かまぼこの手作り体験はご予約が必要です。

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とTOKYO DRESS などのプレスやアパレルブランドのディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)の2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えていく事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
Comptoir des Cotonniers:Jacket
Comptoir des Cotonniers:Pants

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