She’s Mercedes meets Japan / Vol.3

埼玉 坂戸市から比企郡小川町へ(旧街道児玉往還)前編 和紙作家 森田千晶

日本各地に今も伝わるぬくもりのある手仕事や、受け継がれてきた確かな技を 次世代へつなげて行こうと活動をしている「uraku」、彼女達が旅のみちみちで 出会う日本の美しい風景や物、事、をメルセデスと共にみつめる旅紀行。 女性2人ならではのゆったりとしたロードストーリーの行き着く先は・・・

photo/ 濱野智(glife) text&edit/石崎由子(uraku) navigator/田沢美亜(uraku)

整備されていた陸路、旧街道

メルセデスで巡る旅第3回目は、東京から少し足を伸ばして埼玉の比企郡小川町まで進みます。江戸の町は水路が発展していて交通、運搬が発達していましたが、陸路も100を越える街道が整備されていて同じ様に人、物が行き交っていました。誰もが耳にした事がある、東海道、中山道などの5街道の他にも細かな街道が張り巡らされ、宿場町などが整備されていたようです。今回訪れる町、坂戸と小川町は中山道の測道、児玉往還にあります。特に小川町は当時より和紙の産地だった事もあり、今も風情ある町並みが残る町です。今回の旅のお供はメルセデスGLC 220 d 4MATIC Sportsのセレナイトグレー、安定した走りが心地よい車です。爽やかな秋晴れなのでルーフをオープンにして壮快気分でお出かけです。
最初に訪ねたのは、小川町で和紙作りを学び、独立して自らのアトリエを友人と坂戸に立ち上げた和紙アーティスト森田千晶さん。和紙が通す光の様に柔らかで暖かなまなざしを持つ森田さんに、和紙の可能性を伺いました。

育ててくれた「水」に呼び戻されて

工房を訪れると、ちゃぷちゃぷちゃぷ、とリズミカルな水の音色が心地よく響いています。和紙アーティストの森田千晶さんの工房は、埼玉県坂戸市の線路脇にあり、傍らにはこじんまりとですが、和紙の原料である「こうぞ」畑もひろがっています。
森田さんは原料の「こうぞ」から育てて和紙を漉き、作品を制作していらっしゃいます。
元々は金属を使ったアクセサリーのアーティストだった森田さんですが、素材の可能性を求めて様々な体験や研究をしている時に、和紙に出会い、魅力に取り付かれてしまったそうです。日本の手漉き和紙技術が、ユネスコ無形文化財に登録されている小川町は、森田さんの生まれ育った坂戸から近かったこともあり、小川町で修行して和紙製作のノウハウを学んだそうです。
柔らかく光が透ける様がとても美しく、そのうえ原料から自分の手で育てられるという所にとても魅力を感じたのだと森田さんはおっしゃっていました。
なによりも水のたゆたう感じやその音が、自身が浄化されるような清らかな気持ちになれるのだと。
水かきれいな小川町と同じ水脈上にある坂戸で育った森田さん、アクセサリーのアーティストの頃は、東京で活動されていたそうなのですが、結局自分のルーツに戻ってきたのかなと柔らかく微笑んでいらっしゃいました。

「こうぞ」と「とろろあおい」から原料を作る

工房の傍らに植えられた「こうぞ」は人の背丈を遥かに超えて大きく成長しています。この「こうぞ」の根から少し上をのこし刈り取って、紙の原料にするにはとても手間のかかる仕事です。
切りそろえ、皮をむき、その後もいくつもの工程を経てやっと綿状の繊維のような「こうぞ」へと変わります。この「こうぞ」ともう一つの大切な原料である「ねり」を「とろろあおい」から抽出し、この二つの原料、をきれいな水の入った漉き舟で混ぜ合わせてやっと紙漉きができます。
さて紙漉きですが、こちらも均等で美しい紙に仕上げるには技が必要です。
漉桁(すげた)という大きな板に手がついたような物に漉き水を救い上げ、漉簀(すきず)というすだれの様な物の上に、均等に繊維がいき渡る様に繰り返しゆすっていきます。薄く、柔らかな光を通す様な美しい和紙を作るには絶妙な、ちから加減とタイミングを計れる様にならなければなりません。
森田さんは、ご自分でデザインされたとても繊細なレースの様な型紙を漉簀の上にのせて、細かな模様の和紙を漉き出していきます。その細かさと美しさに、思わず感嘆の声をあげてしまったほどです。

柔らかな光を伝えていく

工房の2階はアトリエになっていて、出来上がった和紙をさらに加工して作品をつくっています。美しく繊細な作品をいくつか見せていただきながら、和紙への思いを語っていただきました。
モビールのような雪の結晶柄のオーナメント、「さび」を施した加工の和紙、藍染めの団扇、和紙のカーテン、壁紙、和紙のお茶室など、日本人が昔から見つめてきた柔らかな光を感じさせる作品ばかりです。
森田さんは和紙の魅力に取り付かれて紙漉きを勉強しましたが、一方で、和紙を取り巻く現状も肌で感じたそうです。どんなに職人さんが美しい和紙作りにこだわって作っても、紙を買うという行為が、現代に生活する人にはリアルな行為では無いのだという事実です。住環境も変化して、障子もふすまも私達の生活から消えてしまっている現代は和紙がさらに身近ではなくなっていきます。そこでその美しい和紙をつかった生活に入り込める制品や作品を作っていこうと考えたそうです。
今、また新たな製品や作品をあれこれと考えていらっしゃるとの事、どんな作品が見られるのか楽しみです。またアトリエを改装してカフェ&ギャラリーも作る計画があるのだとか、これからの活躍がますます見逃せません。
森田さんのアトリエで壁や、仕切や、カーテンに使用されている和紙は、私達日本人が見てきた柔らかな光を感じさせてくれました。コントラストの強い光でなく、やんわりと全体的に優しく包む光が、日本人の感覚を養ってきたのだと思います。
「こうぞ」という素材から育て上げた伝統的な和紙を伝えて、現代の生活にあった作品を提案して行くことは、長い間見つめてきたあの光を未来に伝えて行く事なのだと思いました。

アトリエ線路脇

アトリエデータ

アトリエ線路脇
埼玉県坂戸市
http://www.senrowaki.com/
一般営業はしておりません、商品や個展の問い合わせはホームページのコンタクトよりお願い致します。

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とTOKYO DRESS などのプレスやアパレルブランドのディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)の2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えていく事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

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