
今、脚光を浴びるプロサッカー選手へ
梅雨の中休みとなったこの日、東京・六本木には“ときの人”の姿があった。場所はメルセデス・ベンツの最新モデルが気軽に試乗でき、食事やショッピングも楽しめるブランド情報発信拠点「Mercedes me Tokyo」。そこに最先端のレーシングテクノロジーを注ぎ込み、究極の走破力を実現したMercedes-AMG GT 4-Door Coupéを駆って、プロサッカー選手の三笘薫が現れた。日本代表の活動のために一時帰国したタイミングで、1ヶ月にわたる同車の試乗機会を得たためだ。
タイミングはブラジル戦を含めた日本代表の4連戦を終えた直後。そのためもあってか、撮影が始まりしばらくすると、カフェにいた客からヒソヒソとした声がこぼれるようになる。
「見て見て、あれ三笘選手じゃない?」
「本当だ。でも、なんでこんなところにいるの?」
店内の客層は、試乗目的のミドルエイジ、ランチを楽しむ若い女性、PCに向かうリモートワーカー、クリエイターと思われる打ち合わせ中のグループなどとさまざま。そのいずれもが、チラリチラリと、窓ガラス1枚隔てた屋外でスタートした撮影に視線を送り出していた。
思えば、“三笘薫”の名前は昨年の夏以降に一気に広まった。
2020年に川崎フロンターレに加入してリーグ制覇に貢献すると(ベストイレブンにも選出)、翌年の夏には東京オリンピックに出場。3位決定戦のメキシコ戦では後半から途中出場し、相手DF陣をドリブルで切り裂き唯一のゴールもゲットした。
大会後には英国プレミアリーグのブライトン&ホーヴ・アルビオンFC(以下、ブライトン)へ完全移籍。同シーズンはベルギー1部のロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズへレンタル移籍をして過ごすことになったが、リーグ出場5試合目でハットトリックを記録するなどコンスタントな活躍を見せた。秋以降は今冬開催のカタールワールドカップ最終予選に向けA代表に選出。7大会連続7回目の出場を決めたオーストラリア戦での2ゴールは記憶に新しく、あまりの衝撃から“三笘薫”の名前はあまたのメディアに載り、その存在はサッカー界を超えて知られるようになった。

スピードスターが魅了されたGT 4-Door Coupéのスピード
そして今、時代の寵児が目の前に座っている。上に行く者とは、やはりギラギラと野心に満ち溢れている——そう思わせられたのはサッカーについて質問をしたときだ。落ち着いた物腰で、静かな語り口で、一つ一つの問いに対して真剣なまなざしで口にした返答には、サッカーへの真摯な気持ちが表れていた。
一方、今回の取材テーマであるカーライフに関する話では、まなじりを下げるときがあるほど軽やかなトークが続いた。
「格好良いクルマに乗りたいという思いはずっと持っていました。プロになれたらその思いは叶うのかなと、良い選手ほど良いクルマに乗れるのだろうなと、小さい頃からそう思っていたんです。そのため、いつか乗りたいと目標にしていたメルセデスに、今こうして乗るチャンスができて、一つの夢が叶ったという嬉しさがありますね」
兼ねてよりメルセデスには高級感を抱き、大人が乗るクルマというイメージを持っていたという。そしてプロサッカー選手となり、憧れだったメルセデスのステアリングを握れる状況となって、子供たちに夢を提供する立場になったことをさらに意識するようになったとも明かした。
そんな三笘選手が試乗したクルマは、Mercedes-AMG GT 4-Door Coupé。“LIFE IS RACE(日常を究極へ)”をコンセプトに開発された4ドアスポーツカーであり、イメージムービーでは“自宅のガレージを出ると、そこはサーキット”という設定でダイナミックに疾走する模様が収められている。かようにドライビング性能を追求したモデルであり、それでいて大人4人が快適に座れ、ラゲッジルームを備えるなど実用性も高い一台だ。
三笘選手はまず、全長は5mを超え、全幅が2m近いその大きさに特徴を感じたという。
「最初は車体感覚が掴めていなくて、大丈夫かなと慎重にステアリングを握っていました(笑)。ただ最近は慣れてきて、ドライブが楽しくなってきています。やはり軽く踏んだだけでスピードが出るんです。正確には、出てしまっている、という感じですね。それだけ加速がスムーズで、スーッと、クルマに乗っているのではなく自分だけが動いているような印象で、気づくとスピードが出ているんです。僕自身、アクセルを踏むのが結構好きなので、これは気をつけないと危ないなと(笑)」
世界基準の速さでフィールドを疾走する男は、世界の自動車界をリードするメルセデスの速さに共鳴したといったところか。移籍先はドイツが良かったのでは? そう聞くと、「アウトバーンがありますからね」と笑って返してくれた。

乗る人だけが抱くことのできる優越感
室内空間も印象的だったという。まず空間そのものが優雅で、ドライバーズシートに腰を沈めるとフルデジタルのディスプレイに未来感を抱いた。そのディスプレイは1つをコックピット用、1つをインフォテインメント用と2つ並べ、見やすさと使いやすさを同居させたもの。非常に高いユーザビリティに三笘選手も目を見張り、さらに「夜はディスプレイが夜画面表示になってライトアップされ、室内も柔らかなLEDライトで照らされるのですが、あのエモーショナルで格好良い空間は、乗っている人だからこそ感じられるものだと思うと優越感を覚えました」とナイトドライブ時のエピソードを教えてくれた。
ここで三笘選手が指摘した光とはアンビエントライトのこと。ドア、ダッシュボード、エアアウトレットなどに備わるLEDが車内を柔らかな間接光で照らし、華やかでありながら深い安らぎを生み出して心地良い空間を創造。しかも照明色は64色から選べ、明るさも調整できることで、ドライバーが自身の好みにそくした空間を生み出せる仕様になっている。
また、「使いこなすためにはもう少し時間が必要ですが、もっとコミュニケーションが取れたらドライブが楽しくなるだろうなと感じました」と言ったのはMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)。車両の操作をドライバーの言葉、ジェスチャー、指先で行えるシステムだ。さらに各機能の使用履歴からドライバーの行動や嗜好を分析し、目的地やBGMの選曲、ディスプレイの表情、シートポジションなどをクルマ側から提案することも可能になる。乗るたびに両者の関係は最適化されていき、その関係が深まるほどにドライブ環境はより快適になっていくのである。

英国の日常で鍛え、カタールを目指す
「今まで経験したものとは別次元のリーグ。早く順応したいですし、そのような環境で毎日を過ごすことで自然と鍛えられるのだと思います。第一の大きな目標はレギュラーとして試合に出ること。そこから着実にステップアップをして上のステージに上がって行きたいですね」
ベルギー以上に各国の代表選手が名を連ねるプレミアリーグ。練習から世界レベルの時間が待ち受け、試合では過日のブラジル戦のようなトップ選手とのマッチアップが常となる。
「後半から途中出場したブラジル戦は、少ない時間ながら世界のトップレベルと対峙できた貴重な試合でした。自分のプレーをし、ドリブルで2本止められましたが、それが体験できたこと自体が収穫だと捉えています。一方で、時間が短かくトライできないこともありました。あの試合のように、今は一回の勝負で勝った負けたと言われる状況です。他国の選手はドリブルで突破できても、ブラジルの選手には通用しないと言われる。その状況は改善したいですし、成長のためには常に高いレベルでプレーする必要がある。インターナショナルの舞台を日常にし、世界のトップ選手を相手にする日々を多く送ることで成長できるのだと思いますし、よりレベルの高い試合を求めて貪欲に上のステージを狙っていきたいです」
ブラジル戦で三笘選手のドリブルを止めたのはエデル・ミリトン。通算14度の欧州制覇を成し遂げているスペインの名門レアル・マドリードに所属する選手だ。プレミアリーグにはミリトン選手のような世界のトップオブトップのプレイヤーが山ほどいる。そのような環境で多くの真剣勝負を体験できれば代表活動にも生きてくる。冬にはワールドカップがあるのだ。

「カタール大会は選手として出場を現実視できる最初の大会です。しかしもう25歳。年齢的にも出場すべき立場ですから、今回を逃すわけにはいかない。そう思っています」と、一点の曇りもなく堂々と語る。4年前のロシア大会で日本列島が涙したベルギー戦についても、「ワールドカップを経験している先輩たちとのコミュニケーションは積極的に取っています」と言い、代表チームに刻まれる伝統の継承はしっかりとなされていると話す。
来るべき新シーズンに向けては、「今年は昨年以上に忙しくなると思います」と呟いた三笘選手。「今、趣味はありません」というほどサッカーと向き合う日々のなか、ドライブは数少ないリフレッシュ法となる。ベルギー時代は買い物や食事、歴史的な建築を目的にアントワープへ。ロンドン近郊の海辺のリゾートにある新しい拠点では、潮風を感じながらのドライブを心待ちにする。
そして多くのファンが注視する開幕は8月5日だ。ブライトンの初戦は7日となり、対戦相手はリーグ優勝20回を誇る強豪マンチェスター・ユナイテッドである。
きっと三笘選手の姿は対戦チームの本拠地、オールド・トラフォードにあるに違いない。
112年の歴史を有し、7万5000超の観客を収容する超大型スタジアムでのアウェーゲームで、屈強な相手ディフェンダー陣を置き去りにする勇姿が今から楽しみである。
PROFILE
三笘 薫/Kaoru Mitoma
1997年生まれ、神奈川県出身。25歳。川崎フロンターレU-18から筑波大学へ。2020年に川崎フロンターレとプロ契約し、東京オリンピック終了後の2021年夏に英国プレミアリーグのブライトン&ホーヴ・アルビオンFCへ完全移籍。欧州挑戦1年目はレンタルでベルギーのロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズの一員として過ごした。昨年11月には日本代表初招集。カタールワールドカップ最終予選では、初出場となったオマーン戦で初アシスト。出場2試合目のオーストラリア戦で2ゴールをあげた。
【着用アイテム】※全て税込価格
ブルゾン¥352,000、ニット¥199,100、Tシャツ¥67,100、パンツ¥136,400、スニーカー¥107,800/全てロロ・ピアーナ(ロロ・ピアーナ ジャパン TEL:03-5579-5182)、サングラス¥23,980/レイバン(ルックスオティカジャパン カスタマーサービス TEL:0120-990-307)