
街にクリスマスのイルミネーションが灯り、クリスマス・ソングが流れる季節になると、必ず胸をよぎる記憶がある。
我が家の愛車シャンパンゴールドのメルセデスC180に、幼稚園児である下の子を乗せた私は、ショッピングからの帰り道を運転していた。当時子育てに忙しかった私は、家でゆっくり音楽を聴くという時間がなかなか持てず、クルマの中が唯一の、音を楽しめる時間。この日も、お気に入りのボーイズトゥメンや嵐の曲をかけて、ハンドルを握っていた。
六本木ヒルズのけやき坂にクルマが差し掛かった頃、通りを彩るLEDライトによる白とブルーのイルミネーションに、食い入るように見入っていた息子が叫んだ。「ママ、あの曲かけて! “クリスマスが今年もやってくるー”」。
それは、私がクルマの中でいつも聴いていた、竹内まりやの『すてきなホリデイ』。「“近づいている冬の足音——”」。目をキラキラさせながら、息子が歌い出しを口ずさむ。活発な2歳上の姉にいつもくっついて行動する息子は、生まれてこの方、私たち親にほとんどわがままを言わない、おとなしい良い子だった。そんな息子の”自我の芽生え”とも取れるひと言に、私は驚きと愛おしさで胸がいっぱいになった。家に着くまでの道のり、私たちは何度も何度もその曲をかけ、大きな声でデュエットした。
クリスマスの定番ソングとなったこの曲が毎年かかる度、15年前のあの日に思いを馳せる。19歳になった息子は年齢のせいか、最近はあまり話もしてくれないけれど、大きく頼もしく成長した姿を見て、私は自分の幸せを家族の幸せに重ねる毎日だ。クリスマスが今年もやってくる。
曲名『すてきなホリデイ』より引用 作詞・作曲:竹内まりや
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