A Mercedes Moment / Vol.4 /

メルセデスのクラシックカーで甦る、あの夏の思い出。

メルセデスにまつわる素敵な体験談や思い出を綴っていく「A Mercedes Moment かけがえのない瞬間(とき)をメルセデスとともに」。第4弾は、男性オーナーが初登場。メルセデスのクラシックカーを見ると今でも甦るという、ある夏の日の物語。

Illustration: Karen Greenberg
Editor: Junko Hirose

大学一年生の夏休み、私は4歳上のクラスメイトの女子と意気投合し、別荘での専門書読破を企画した。
出発の朝、待ち合わせの場所に、彼女はメルセデスの1965年式230SLに乗って現れた。「それ誰の?」。びっくりして尋ねると、「家のクルマ」と素っ気ない返事。オフホワイトの流麗なフォルムもさることながら、内装の艶やかな赤とステアリングホイール、シフトノブのアイボリーのコントラストが何とも眩しい。
そのクルマはサングラスを掛けて運転する彼女の横顔を、キャンパスとはまるで別人のように昇華させ、北軽井沢の別荘に到着するまでの2時間余りの道のりは夢見心地であった。ともあれ、そのクルマ230SLが私のメルセデス初体験である。
別荘に滞在中は、辞書と首っ引きで専門書に張り付き、遂に艶っぽい話もないまま。今思えば女心も察することができなかった自分が恥ずかしい限りだ。
斯く言う私はこの夏以降、周囲の同い年の女子大生がとても子どもっぽく見えてしまうことに苦しむことになった。それは時間の流れとともに解消されたが。
今でもメルセデスのクラシックカーに吸い込まれるように惹きつけられていく自分に気づくとき、瞬時にあの思い出が甦る。34年前の出来事。彼女の実家のガレージに、230SLがあの頃のままの姿で佇んでいることを祈っている。

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