She’s Mercedes meets Japan / Vol.10 /

神奈川県 横浜市(旧東海道)
前編 茶道家 松村宗亮

photo/ 浜野智(glife)
text&edit/石崎由子(uraku)
navigator/田沢美亜(uraku)

文明開化とともに歩んだ横浜の街

メルセデスで巡る旅も第10回目、となりました。今回も旧東海道を辿る旅、江戸の日本橋を出て、ほどなく到着する横浜を巡ります。
もともとの東海道沿いの宿場町は神奈川宿という場所、横浜は小さな漁村でした。幕末に黒船が来航し、日米和親条約の締結後、横浜に港が開港されました。
多くの人が持っているイメージ通り、横浜にモダンな雰囲気が漂うのは、その後迎える明治維新からの日本の近代化と共に大きく発展してきた街だからかもしれません。
今でも洋館や、異人館街が多く残る横浜は、歴史的景観を保つ他の街とは違うモダンさに満ち溢れています。
来年開港160年を迎え、異国情緒あふれる横浜の街を走る今回の旅のお供は、GLA 220 4MATIC、カラーはマウンテングレー、内装は本革仕様です。四輪駆動のSUVですが小回りが効き、取り回しが良いところが特徴です。
今回お会いする方はモダンと伝統が交錯する街にぴったりな、現代の茶人、松村宗亮さんと、彼の主催するお茶室「SHUHALLY」です。日本国内では収まりきらず、伝統と革新という言葉にも収まりきらない、数寄物そのものとも言える茶人の見つめてきた世界と、新しく自由な発想で挑み続ける、新たな世界をうかがってきました。

都会の真ん中の異空間

横浜の関内駅から歩いてすぐ、近くには中華街もあり、商業施設も多く立ち並ぶ繁華街の真ん中にあるマンションの5階に、松村宗亮さんの主催するお茶室「SHUHALLY」はあります。本当にこんなところにお茶室が?と、一瞬疑ってしまうようなエントランスですが、5階に上がると「SHUHALLY」のサインが見えて少し様子が変わり始めます。
引き戸を開けて中に入ると、そこはもう異空間が広がります。
お茶室、広間はもちろんですが、綺麗に手入れされた露地が目の前に広がりを見せて現れるのです。それは、何よりも茶の湯の基本とも言える、おもてなしの空間作りが、まず強く感じられる心地よい空間です。松村宗亮さんの持つ保守的な様式美や伝統への思いと、生粋の横浜っ子特有の、新し物好きで革新的な感覚が入り混じり、他にはない独特の世界観がこの「SHUHALLY」には漂っています。それは細かな部分にもしっかり表れていて、松村宗亮さんのこだわりが感じられます。
松村宗亮さんはよく通る声で凛としながら茶目っ気たっぷりな笑顔で、私たちをお迎えしてくださいました。今日のお召し物も独特なセンスが光ります。まさに現代の数寄物。
まずは露地に出て、木々達のご説明をゆっくりしてくださいました。外の世界から隔離され、ゆったりとした時間が流れています。
この後、まずは広間でお茶をいただくことにしました。

まずは一服

松村宗亮さんは裏千家という流派の茶道家になります。
お茶は平安時代に中国からもたらされました。少しずつ普及し室町時代に現在の茶道の元になるスタイルが徐々に生まれ、安土桃山時代に堺の町衆たちにより確立されていきます。その中心人物「千利休」さんにより当時の武士たちにも広がり発展を見せます。
その後町方へも広がり「三千家」へと繋がって今の茶道の形になりました。
茶釜からは湯気が立ち上り、柄杓でゆっくりお湯を注ぎます、湯気の音、お湯を注ぐ音、お茶をたてる音、その全てが心地よく、静かでゆったりした空間に響き渡っています。
早春の季節、露地からは優しい風が心地よく入りなんとも落ち着く時間です。
まずは一服、ゆっくりといただいた後に、なぜこんな伝統と格式を強く感じる茶の湯の世界に、横浜っ子の青年が入って行ったのか、とても気になっていた質問をぶつけてみました。お茶を点て終えた松村宗亮さんは、あのよく通る声とお茶目な笑顔でゆっくり話してくださいました。

生粋の浜っ子

松村宗亮さんは生まれも育ちも横浜っ子、異国情緒溢れ、異文化が入り乱れる環境で育ちました。異国の友人は当たり前、松村宗亮さんの目の前にはいつも海外への門戸が開かれていたのだそうです。そんな少年時代を過ごしていたので、伝統や、日本っぽいことなど全く興味はなかったそうです。そんな松村宗亮さんの頭の中に、日本らしいものへの興味が湧くきっかけが訪れたのは、フランスへ留学した時のことだそうです。
センスの良いフランスの友人たちは、日本の文化や、伝統的な物や事、伝統工芸などに興味があり、またとても詳しかったのだそうです。「自分は日本人なのに何も知らない、何も説明できない」そんな思いをしたことが悔しく思い始めます。また、まだ若かったこともあり、「日本の伝統的なこと知っていた方がイカしてるのかも」という考えも芽生え始め帰国してからお茶やお花、お習字などを習い始めることになります。
様々な日本的な習い事をしていたのですが、お茶の世界の歴史など茶の湯が確立された時の様子など知っていけば知っていくほど、ふと自分に身近に感じられるようになったのだそうです。それは戦国武将たちが自分の美意識を尽くし、見せ合い、おもてなしをしている姿が、友人や、彼女を自分の部屋に呼ぶ時、いかにカッコよく、自分の美意識を表現し、その上心地よく過ごしてもらうかと、思い巡らせていたあの思いと不思議とリンクした瞬間だったようです。松村宗亮さんが勝手にイメージしていた格式高い茶道がとても近しい存在になり、ぐっと面白くなったのだそうです。

もっと気軽に、もっと自由に

さてもう一つある小間の方でもお茶を点てていただくことになりそちらへ移動です。
こちらはさらに独特の空間です。造りは利休四畳半の典型とされる「又隠」をうつした小間ですが、漆黒の畳と、その下から照らすLEDの光が幻想的な空間を作り出しています。光と闇が生み出す影の美しさも体感できる空間です。
このような茶室を演出できるのも、松村宗亮さんの持つ茶の湯に対する思いと、世界観なのだと思いました。
茶の湯を確立していった千利休やそのお弟子さんたちは、様々な新しい美意識と、前衛的な感覚をぶつけ合って、それぞれの最高と思える空間を演出していったのだとしたら、生粋の浜っ子ならではのノーボーダーな世界観を茶の湯に込めた松村宗亮さんの表現方法は、茶の湯が引き継いできた形や形式ではなく、思いを継承しているのかもしれません。
松村宗亮さんと「SHUHALLY」は、茶の湯(茶道)をもっと気軽に、もっと自由に、そんな風に私たちに門を開いてくださっているのだと思います。
松村宗亮さんの自由な発想は止まることなく、まだまだ続いていくそうです。
様々な異文化、異業種の方たちのコラボレーションや、「SHUHALLY」としてオリジナルのお抹茶を発売したり、その他にも展開を考えているそうです。
現代に誕生した数寄物、松村宗亮さんと「SHUHALLY」は、ともすれば保守に走ってしまうことによって初心から外れてしまったり、発展を止めてしまうかもしれない伝統の世界に、心地よい風を引き込んでくれる存在なのかもしれないと、もう一服いただきながら考えていました。

立ち寄りデータ

SHUHALLY

SHUHALLY

〒231-0028 神奈川県横浜市翁町1-3-18
松文ビル ルジャルダン横濱関内506号
tel:045-263-8869
https://shuhally.jp
定休日:日曜日、月曜日
営業時間:11:00~21:00

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とTOKYO DRESS などのプレスやアパレルブランドのディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)の2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えていく事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
SINME:Dress

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