
「子抱き富士」を眺めて
富士の裾野、広大な樹海の森を横目で見ながら、前・中編に引き続き、原点をキーワードにめぐる山梨の旅の後編となる今回もメルセデスと共に巡ります。
山梨最終編で訪れる場所は、前編で訪れた青木ヶ原入り口のすぐ近くにあり、もう一度樹海の方向へのドライブです。せっかくなので紅葉台木曽馬牧場を訪ねる前に、前編でお話を伺った舟津川さんから教えていただいた、富士山がきれいに見えるスポットへ早起きして足を伸ばしてみることにしました。
今回も旅を一緒にするのは、もちろん、メルセデスEQのSUVモデル「EQB 250」で、カラーはデジタルホワイトです。メルセデスが近年提案しているこのEQシリーズはCO2を排出しない100%電気自動車で、地球環境を考えた未来の新しい生活に向けた自動車の姿を提案しています。
富士の裾野の森の間を滑るような静かな走りで、全くと言っても良いほど振動を感じさせず、コーナリングもスムーズなので細やかな林道でも戸惑うことなくEQB 250は清々しく走り抜けます。
木漏れ日がきれいなのでサンルーフを開けて走ると、より一層心地よさが深まり気分も上々です。
また、3列目シート7人乗り可能車種なので、家族や友人ちとの楽しいドライブも一緒に楽しめます(※3列目シートは、乗車時の安全確保のため、身長165cm以下の乗員のみが使用可)。3列目のシートを使用しないときには、大容量のラゲッジスペースとして利用できるところも魅力的です。
快適なドライブを楽しんでいたら富士山の姿を拝みに訪れた精進湖に到着です。
まずは持参したモーニングコーヒーを旅の仲間とゆっくりと楽しみます。この場所から見る富士山は本当に美しいのはもちろんですが、前編で訪れた大室山を富士山が抱いているように見える特別な場所でもあります。ここから見える富士山は「子抱き富士」と呼ばれているのだそうです。
さてあまりのんびりはしていられません、目的地の紅葉台木曽馬牧場へ出発です。
希少となってしまった日本在来馬種
「子抱き富士」を堪能し、紅葉台木曽馬牧場へ到着すると、本日お話を伺い、また乗馬のインストラクターもしてくださる、漆澤太さんが出迎えてくださいました。
紅葉台木曽馬牧場は私たちが普段よく知る乗馬クラブや、馬の牧場とは少し活動が違い、日本古来の原種の“和種馬”と呼ばれる馬たちを保護、育成、日本古来の騎乗技術の研究と復古を試みながら、馬たちが活躍する場を広げるための活動を行っています。
現存している在来和種の馬は、木曽馬(長野、飛騨地方)、道産子(北海道地方)、御崎馬(宮崎地方)、対州馬(対馬地方)、野間馬(愛媛地方)、トカラ馬(鹿児島地方)、宮古馬(宮古島)、与那国馬(与那国)の8種のみとなり、そのほかの種は絶滅してしまいました。現在この8種も非常に希少で、頭数もかなり少なく純血種のみを残していくにはいろいろ難しいこともあり、こちらでは主に木曽馬を中心に道産子と掛け合わせたりするなどして、和種馬の保護に務めているのだそうです。
漆澤太さんと、挨拶を交わし紅葉台木曽馬牧場の簡単な説明を伺った後は、まずは馬に乗ってフィールドに出てみましょうということで、早速乗馬のスタイルに着替えることにしました。
漆澤太さんの横には、本日お世話になる木曽馬の“エビちゃん”が準備も終えてお待ちかねです。
初めての和馬での乗馬
着替えを済ませ、準備が整ったらまずは馬場で乗馬のレッスンを行います。
乗る前に“エビちゃん”にご挨拶してみたら優しい眼差して頭を擦り寄せてきてくれて、なんだか嬉しい気持ちになりました。乗馬の経験は少しありますが、和種馬は今まで乗馬したことのあるサラブレットとは見た目も少し違います。
まずはその大きさです。肩までの高さが大体125cm〜135cmとサラブレットより30cmほど低く(サラブレットは160cmぐらいが平均です)その代わり胴回りは太めで、足も骨自体が太くしっかりしています。
そのため騎乗した時の目線が低く座面が広いこともあり安定していて、初めて騎乗した時の怖さがあまり感じられません。馬場で乗馬のレッスンをしばらくしていただきましたが、座りが安定しているのでぐらつかず、また一歩一歩しっかり踏み締めているような歩みなので、今まで経験したことのある乗馬と違う安心感を感じました。そもそも木曽馬は全体的に気性も穏やかで安定していて、人を乗せることに慣れている馬種なのだとか。その中でも特に“エビちゃん”は穏やかな性格なのだそうで、漆澤太さんのおっしゃる通り、“エビちゃん”は、ゆったりとそして優しい気持ちで背中に乗せてくれているかのようでした。
何周か馬場を歩いて慣らしたら、青木ヶ原樹海のお散歩コースに出発です。
樹海のお散歩コースは、樹海といっても前編で訪れた場所とは少し違い、鬱蒼とした深い森というよりは、背の高い草木が生い茂った草原と、木漏れ日がたくさん降り注ぐ林道をゆっくりと1時間ほどお散歩する、そんなコースです。“エビちゃん”はゆっくりと優しく歩いてくれるので、木々や草花の香りや、その間を抜ける風をゆったりと感じながらお散歩できます。歩きながら富士山が見えたり、途中で鹿の群れと遭遇したり、富士の裾野の雄大な自然を体感することができる乗馬コースです。ゆっくりゆっくり進んで“エビちゃん”と息があってきて信頼が深まったからなのか。途中で休憩した時はさっきよりも強く頭を擦り寄せてピッタリと私の傍に寄り添っていてくれました。
乗馬するだけでなく、自然を感じ、さらに馬と心を通わせることによってとても癒されていく、素敵な体験コースだなと“エビちゃん”を撫でながら感じていました。
古くから日本人の生活に寄り添ってきた和種馬
林の中をお散歩しながら、紅葉台木曽馬牧場のことをもう少し伺ってみることにしました。
前述した通り和種馬と括られる日本在来種は、非常に数が少なくなっていてすでに絶滅している馬種も9種ほどあります。文献ではかなり古い時代、5世紀ごろから馬と人との関わり合いを見ることができ、農耕馬、運送馬、そして戦場でと和種馬たちは活躍してきました。この日本列島で長らく人の生活と寄り添ってきた馬たちは、それぞれの場所で性格や気質などを伸ばしてより良い品質となるように交配され活躍してきたのです。
そんなに活躍してきた和馬がなぜ少なくなってしまったのか、漆澤太さんに伺ってみると、明治に入った頃、海外の馬が輸入されるようになり、軍馬をより大きく強くするためにということで和種馬と外来種の交配を重ねていき結果的に和種馬が減少していくことになったのだそうです。
乗馬や、武術などで活躍していた和種馬たちは姿を消し、一部神馬や、隔離された地域や島などにいた農耕馬や運送馬がかろうじて残り、それらが今に繋がっているのだそうです。
木曽馬についてはある神社に生き残っていた神馬が今に繋がっているのだとか、そのため木曽馬の交配には限界があり、純血種はかなり希少なのだそうです。その話を伺って、紅葉台木曽馬牧場をはじめ日本で和種馬を繋げる活動をされている方々の苦労は如何程のものだったのかと考えてしまいました。
ちなみに、“エビちゃん”は数少ない木曽馬の純血種なのだそうです。
優れた和種馬の魅力をより多くの人に知ってもらいたい
お散歩が終わり出発した馬場へ戻り、今度は漆澤太さんに日本古来の騎乗技術の一つでもある流鏑馬(やぶさめ)の実演を見せていただくことになりました。この紅葉台木曽馬牧場では和式馬術だけでなく、流鏑馬体験などの馬上武芸を体験できます。また、日本各地の神社などに漆澤太さんが赴き流鏑馬を披露されたり、流鏑馬のために和種馬を貸し出したりされています。そのほかにもテレビや映画などにも貸し出しされたりもしているそうです。
間近でみる流鏑馬はとにかく迫力満点で、圧倒されてしまいました。何よりも馬の上で両手を離し、かつその上半身が全くぶれることなく真っ直ぐの姿勢を保ちながら矢を放つ姿に、一同歓喜の声をあげてしまったほどでした。
そんな鮮やかな流鏑馬を披露してくださった漆澤太さんですが、実は山梨の方ではなく東京出身なのだそうです。なんとなく馬と関わる仕事がしたいなと思いこの場所を訪れ、短期間だけのつもりが、すっかり和種馬に魅了されてしまい、気が付いたら20年ほど経ってしまったのだそうです。もう東京には戻れないですねと笑っていらっしゃいました。
そんな話をしていたら、ここ紅葉台木曽馬牧場のオーナーの菊地幸雄さんがひょっこりと顔を出し、鎌倉時代の馬具を見せてくださいました。今の馬具とは違い不思議な作りをしています。
オーナーの菊地幸雄さんは和種馬の保護、育成はもちろんですが、洋馬より劣っていると誤解されている和種馬の能力と、日本古来の騎乗技術の素晴らしさをもっと広めていきたいと考えていらっしゃるのだそうで、漆澤太さんは和種馬の魅力に惹かれると共に、オーナーの活動に対する共感が深まりこの地に長く留まることになったのだろうなと思いました。
ほんの150年前までは日本各地で活躍していた和種馬たち、ここで育成されている木曽馬は戦国時代には武田信玄の騎馬隊として活躍していたはずです。他の和種馬たちもそうやって私たちの生活に寄り添っていてくれました。その大切な記憶を、ここ紅葉台木曽馬牧場では取り戻し、それだけではなく、その魅力を発信し、忘れ去られてしまった和種馬の活躍の場を少しずつ広げていってくれています。
大きな富士山の裾野で和種馬にふれあい、考えることにより、発展の中で置き去りにしてしまった大切な物、事、を見つめ直さなければいけないのかもしれないなと改めて思う旅となりました。
また“エビちゃん”に会いに来よう、そう思いながら紅葉台木曽馬牧場を後にしました。
施設データ
紅葉台木曽馬牧場

〒401-0320 山梨県南都留郡鳴沢村8529-86
TEL: 0555-85-3138
http://kouyoudaikisouma.g3.xrea.com/index.html
*詳しい営業時間はWEBサイトにてご確認ください。
<urakuプロフィール>
http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とアパレルブランドのプレスやディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)の2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えて行く事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。また梅仕事など日本の食文化を伝えるため栽培から生産まで行い、その際に出る剪定枝を使用した草木染め事業もスタートするなど、手仕事と循環をテーマにしたライフスタイル提案も行っています。
<Special Thanks>
PLANET PLAN & CO. (https://www.planetplan-co.com):Tops、Pants
ABOUT CAR
EQB 250
メルセデスの電気自動車ブランド「Mercedes-EQ」初の7人乗りSUVモデル。最大限のスペース効率を追求して生まれたスクエアなボディが特徴。電気自動車ならではの静粛性とトルクフルな走り、高度な操縦安定性を高いレベルで実現している。