She’s Mercedes meets Japan / Vol.7 /

東京銀座から品川へ(旧東海道)後編 泰明小学校(銀座の柳)、伊勢半本店、吉田家

photo/ 浜野智(glife)
text&edit/石崎由子(uraku)
navigator/田沢美亜(uraku)

日本初の街路樹

エネルギッシュで優しい笑顔の「銀座もとじ」のお二人とお別れの挨拶を交わしていた私たちは、ふと、彼らが話していた銀座の柳と、泰明小学校の課外授業のことを思い出し、見てみたくなりました。そこで早速、啓太さんにご紹介していただき泰明小学校へ、ここにも立派な柳があるとのことで訪れることにしました。
向かう途中よく見てみると、銀座の街路樹は柳がとても多く、他の街とは少し違った風景であることに気がつきました。そんな柳の街路樹の脇を今回もC 180 Laureus Editionのポーラーホワイトカラーで軽快に走り抜けます。
銀座の街は日本で初めての街路樹を植えた街でもあります。当初は松、楓、桜が植えられたのですが、地下水位が高い銀座の街ではうまく育たず枯れてしまったそうです。
そこで銀座の街路樹は柳へと植え替えられたというわけです。ただ、関東大震災や戦争、または開発によって銀座の柳はほとんど見られなくなってしまいます。近年銀座の有志により、復活また植樹が進み、柳の街路樹が現在も見られるようになったのだそうです。
街路樹にも色々複雑な歴史が詰まっているのですね。
泰明小学校に着くと副校長先生が迎えてくださいました。小学生のお子様たちは授業中で学校は静かな様子です。この銀座の中心地にある泰明小学校は明治11年に創立され、現在139年の歴史を持つ歴史ある小学校です。現在の校舎は大正12年の関東大震災で一度全壊し、昭和4年に復興されたものとのこと、「近代産業遺産」に指定された趣ある素敵な建物が目を引きます。卒業生に島崎藤村始めそうそうたるメンバーが顔をそろえる由緒ある小学校です。
この小学校の入り口にある大きな柳の木は「柳の木二世」なのだとか、暖かい季節にこの小学校の校庭で、銀座もとじさんの課外授業が行われるのだそうです。その時は子供達の明るい笑い声にあふれているのだろうなと想像してしまいます。

唯一残る「紅」の老舗、門外不出の技

小学校を後にして次に向かったのは表参道にある「伊勢半本店」さんのミュージアムショップです。伊勢半さんの創業は文政8年(西暦1825年)とのこと、ほぼ200年近く続く老舗化粧品メーカーです。今では、現代的なコスメティックブランドを販売しながら、伝統的な「紅」も作り続けています。「紅」は紅花から抽出される赤い色料で紅花の花弁にわずか1%程度しか含まれていません。このわずかな色料を花弁を採取してから抽出し、衣料の染料、化粧品、書画の絵の具などに私たち日本人は利用してきました。良質な化粧品としての「紅」を作り上げる技術は門外不出の技で、代々口伝で受け継がれてきたのだそうす。もともとは京阪が製造の中心だった紅屋ですが、「伊勢半本店」さんの創業者、初代澤田半右衛門が修行の末、日本橋で開業した頃、江戸でも紅作りが盛んに行われるようになったそうです。
江戸時代に全盛期を迎えた紅産業ですが、明治以降化学染料の普及により紅花から作る紅の染料の需要は激減してしまいます。さらに大正になると、合成染料と有機顔料による洋風の口紅(洋紅)が日本に入ってきたことにより、一層需要が減ってしまいます。
その為、現在日本で伝統的な「紅」を作り続けている紅屋はこちらの「伊勢半」さんのみとなってしまったそうです。
「伊勢半」さんは唯一残る紅屋として、紅の歴史や文化、そして技を後世に残し伝えていくことを目的とし、こちらのミュージアムを紅の資料館として設立されたそうです。

妖艶な玉虫色の輝き

ミュージアムの中では「紅」を作る工程の説明や、当時の女性たちが「紅」を入れていた可愛らしい容器、または当時の宣伝材料や看板などが展示されていて、ちょっとタイムスリップしたような感じです。昔から女性の美への意識は変わらないのだなと、ちょっと微笑ましくなります。
ショップの方では「紅」を購入することができます。もちろん「紅」を引いていただく体験もできます。私も「紅」を引いていただくことにしました。
この伝統的な「紅」は点ける人の肌の色素によって微妙に発色が変わります。その人にあった紅色へと変化します。また何層も重ねて塗ると不思議な玉虫色へと変化していきます。そもそも器に入っている時は玉虫色をしていて、そこに水をつけて溶かして少しずつ使用するのですが、水をつけると赤い色になるのですから驚きです。
ちょっと写真では分かりにくいのですが、うっすら玉虫色になるまで重ねていただきました。この重ね塗りが江戸時代に流行ったというのですから、ちょっと不思議な感じです。でもつけてみるとなんとも色っぽくて、女性のおしゃれ心をくすぐるのもわかります。器も磁器で出来ていて、可愛らしい柄が描かれています。昔は器に「紅」がなくなると紅屋さんに行って、器に「紅」を刷いてもらったそうです。江戸時代の女性も今と変わらず、流行など取り入れながらおしゃれを楽しんでいたようです。

江戸っ子の愛したお蕎麦

江戸時代にちょっぴりタイムスリップした後、少し早めの夕食ということで旧東海道沿いにある、こちらも江戸時代から続く老舗お蕎麦屋さん「吉田家」さんへ向かうことにしました。
江戸の町では欠かせないお蕎麦、江戸っ子はお蕎麦が大好きで、こだわりも強かったようで、江戸時代中期には「江戸八百八町(はっぴゃくやちょう)に蕎麦屋は数え切れないくらいあるが、うどん屋は万に一」と言われるほど、江戸っ子に親しまれていたようです。
今回訪れた「吉田家」さんは品川区の立会川駅ほど近くにあり、創業は安政3年(西暦1856年)とのこと、160年続く老舗そば懐石のお店です。創業時は鮫洲でお店を構えていたそうですが、大正元年(西暦1912年)に立会川へ移ってきたそうです。
店舗は戦後に建て替えれらた建物で趣ある店構え、奥に進むと風情ある中庭と池もあり都会の真ん中ということを忘れるぐらいゆったりとし時間が流れています。黄昏の時間にお部屋の明かりが灯ると、さらに風情が増して優雅な心持ちになれます。
店内に入るとカツオの良い香りがふんわりと漂います。厨房の奥の方から聞こえる仕込みの音がワクワクしてきて食欲を誘います。
「吉田家」さんでは蕎麦懐石や、お鍋もメニューにありますが、やはり160年こだわり続けたお蕎麦をいただかないと、と思い天ぷら蕎麦を注文しました。
現在店主の池田さんが、お蕎麦を待つ間、こだわりのお蕎麦の事や、お店の歴史の事など、いろいろ親切にお話ししてくださいました。

こだわりのお蕎麦とお店

こだわりのお蕎麦は群馬県赤城山の麓で栽培されたものを使用されているとのこと、種から選んで栽培してもらっているそうで、もちろん十割そばです。蕎麦の茹で時間はなんと15秒、さっと茹で、見極めてあげることにより、蕎麦の風味を損なわない味わいになるのだとか、その時間でちょうど良いような食感になるように、蕎麦を作るのだそうです。蕎麦つゆの出汁となるカツオ節も枕崎近海で一本釣りされたカツを、生のままカツオ節に加工した上質なカツオ節を使用しているそうです。毎朝厨房で職人さんがカツオ節を削り美味しい蕎麦つゆを仕込んでいるのだそうです。
運ばれてきたお蕎麦は、見るからにツヤやかで美味しそうな姿です。蕎麦つゆからも美味しそうな香りが漂います。食べてみるとつるっと喉越しが良く風味も抜群です。
また、何度でも訪れてみたくなる味に、長く続いている歴史を感じました
池田さんは素材と調理はもちろんだけど、お客様をおもてなしすることが大切と語ってくださいまいました。器などもこだわった漆器を使用していて、お蕎麦に負けない雰囲気を放っています。店内には浮世絵が飾ってあって、それも演出なのだとか。創業時にお店を構えていた歌川広重作「鮫洲の風景」の浮世絵です。
粋なセンスに散りばめられた「吉田家」さんには160年の思いと、重みが感じられました。お蕎麦を食べ終わってお茶をいただきながら、ふと東海道を徒歩で行き交った当時の人々が同じようにお蕎麦を食べて一休みしていたのかなと想像し、私も東海道の先に広がる遥か彼方の街並みを思い浮かべていました。


 

立寄りデータ

中央区立泰明小学校脇の柳

No Image

小学校ですので校内の見学はできません。ご注意ください

店舗データ

伊勢半本店 紅ミュージアム

伊勢半本店 紅ミュージアム

東京都港区南青山6-6-20 K’s南青山ビル1F
tel:03-5467-3735
http://www.isehanhonten.co.jp/
定休日:毎週月曜日 
(月曜日が祝日または振替休日の場合は、翌日休館)、年末年始)
営業時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
専用駐車場はございませんのでお近くの駐車場をご利用ください

そば懐石 吉田家

そば懐石 吉田家

そば懐石 吉田家
東京都品川区東大井2-15-13
tel:050-5869-1613(ご予約)
tel:03-3763-5903(お問合せ)
http://www.soba-yoshidaya.com/
定休日:毎週火曜日(祝日は営業しております)
営業時間:[月・水~金] 11:00~14:30(L.O 14:00)、17:00~21:00(L.O 20:30)
    [土] 11:00~21:00(L.O 20:30)
    [日・祝] 11:00~20:30(L.O 20:00)
土日祝は昼休憩なく営業しております。
営業日や時間などは詳しくはホームページをごらんください
専用駐車場はございます。

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とTOKYO DRESS などのプレスやアパレルブランドのディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)の2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えていく事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
銀座もとじ

Share on: