She’s Mercedes meets Japan / Vol.23

中山道・北国街道 前編  川原製作所 川原隆邦

受け継がれてきた心を大切に守り繋げている蛭谷和紙職人

日本各地に伝わる手仕事や、受け継がれてきた技を次世代へ伝えようと、活動をしている「uraku」。彼女たちが旅のみちみちで出会う日本の美しい風景や物、事、そしてそこに集う人々のつながりを、メルセデスと共にみつめる旅紀行。女性2人ならではのロードストーリー。今回は秋も深まりつつある秋分の頃、肌寒くなってきた富山への旅です。遡れば古代からの歴史と文化が積み重なる場所で、伝統を継承しつつ新しい発信を試みる魅力的な人たちを訪ねます。

photo/鬼澤礼門 text&edit/石崎由子(uraku) navigator/田沢美亜(uraku)

 

日本海に面し、古くから文化が芽生えた場所

秋分を過ぎ、田んぼの稲穂が豊かに実り黄金色に染まり始める頃、私たちは富山県へと向かいました。日本海側へ訪れるのはメルセデスでの旅では初めてのことです。
朝晩は気温が下がり、肌寒くなってきた頃ですが、日中はまだまだ過ごしやすく、風も気持ち良い季節です。

富山県といえば、豊富な海産物と、豊かな農産物が頭に浮かび、とにかく美味しいものに溢れているところというイメージを持つ方も多いかもしれません。
この場所は古代から大陸との交易があり、縄文や弥生の遺跡も数多くみられ、古くから人々の暮らしの痕跡が多くみられる地域の一つです。
江戸時代は越中と呼ばれ、加賀藩が支藩の一つとして治めてきた地域ということもあり、たくさんの文化や工芸が現代に継承されています。

今回最初に訪れるところは、富山県の立山町という県庁所在地である富山市と隣接する町で、西側は田畑が広がり、東側は飛騨山脈にかかり山深い地域です。名前の通り有名な立山連峰があり、長野県との県境には黒部ダムもあります。
霊山立山を対象とした山岳信仰が古くから根付いた地域で、立山修験は江戸時代には広く知られていたようです。立山は女人禁制だったため、女性の信仰に向けて行われた布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)は今でもその文化を色濃く残す儀式として継承されています。

そんな歴史ある地域で、伝統工芸品、越中和紙の一つである、蛭谷和紙(びるだんわし)の唯一の継承者でありながらも、和紙作りを独自のスタイルで表現し、現代に果敢に挑戦し続けている和紙職人 川原製作所の代表、川原隆邦さんを訪ねます。

今回も旅を一緒にするのは、もちろん、メルセデスEQ。そのEQシリーズの新型として今年発表されたばかりのコンパクトSUVモデルのEQA 250 、カラーはマウンテングレー。未来の自動車の姿として発表したCO2を排出しない地球環境を考えて提案された、100%電気自動車です。
乗り心地は、新感覚とも言える滑らかで振動をほぼ感じることのない静かな走り、快適で疲労感を感じないので、今回のような長距離の運転ではとても助かります。
高速道路など長距離で加速する時の滑らかな反応は電気自動車でしか味わえないほどスムーズでまるで飛ぶような感覚を覚えます。コンパクトながらもパワーはたっぷりあるので女性や小柄な体格の人には扱いやすいタイプなのではと感じます。

さて、ゆっくりと田園風景を眺めながらドライブしていたら、川原隆邦さんとの待ち合わせの場所に到着です。

素材から育てて行う、和紙作り

待ち合わせの場所に一足早く到着されていた川原隆邦さんは、私たちを見つけると軽トラックから少しはにかみながら降りてきて迎えてくださいました。
この場所は和紙の原料である楮(こうぞ)の畑で、川原隆邦さんは原料から育て和紙製作を行っています。
和紙づくりを知るにはまず原料から、ということで最初に楮畑を訪ねることになりました。
楮の畑がある場所は、大きな煙突があり現在はもう使用されていない瓦工場のすぐ脇、緩やかな斜面が広がっているところです。もとは廃棄した瓦が積まれていた場所に、7年前700株ほどを植え始め、楮畑を育てていったそうです。
この楮、育てるのが特に難しい植物ではないそうで、そんな要因もあってか日本全国で楮栽培が普及し、各地域で和紙作りが行われるようになったそうです。

畑の中を歩きながらおもむろに一本枝を落とし、樹皮の部分を剥いで、その弾力のある繊維の質感や感触を体験させてくださいました。
日本古来より伝わる和紙は、今私たちが日常的に使用している紙のように簡単に破れたり、引き裂いたりできないぐらい非常に強度があります。また容易に水に溶けたりもしません。江戸の頃、家事の際には大福帳を井戸に投げ入れて守ったりしたと伝えられているぐらいです。
楮がもつ繊維のしなやかさと強さを、実際に触れることにより実感し、だからこそ和紙が生まれるのだなと体で感じることができました。

もう一つ和紙作りに欠かせない素材に、トロロアオイという植物がありますが、こちらも川原隆邦さんは育てています。楮畑から車で10分ぐらいの場所に、自宅と和紙の工房があるのですが、その近くにトロロアオイ畑はあるそうなので、そちらの方に移動することになりました。
このトロロアオイ、和紙の他にも蕎麦や蒲鉾のつなぎや、漢方薬としても使われていてオクラに似た、少し南国を感じさせるような綺麗なお花を咲かせます。
花オクラとも言われていて、食用のエディブルフラワーとして使われることもあります。
一ついただいてみましたが、とても美味しくて自分でも育ててみたくなりました。
素材となる植物を見せていただき、このあとどのように和紙になっていくのか、今度は工房へ移動です。

畑で見た素材が和紙へと変わる

トロロアオイ畑がある立山町虫谷という20件ほどの集落に、川原隆邦さんの工房と自宅、ギャラリーはあります。すべて使われなくなった古民家を改修し、素敵な空間となっていました。
工房へ入ってすぐ目に飛び込んでくるのは大きな円形の水溜めです。その中には先ほど立ち寄った楮畑で見せていただいた、樹皮がゆったりと浸されていました。
手を入れてみるとひんやり冷たく、この温度が良いのだそうです。
和紙作りは基本的に冬の寒い時期の方が向いているので、なるべく冬に製作を行い、夏は素材作りという流れになるように心がけているそうです。

剥いだ樹皮は重曹を入れてまる1日かけて煮込み柔らかくし、水溜めにひたしておき、製作する量に合わせて使用していきます。私たちのために少し和紙制作を見せていただけるということで、川原隆邦さんは、少量の楮樹皮を鍋に入れまた煮出し始めました。取り出した樹皮を今度は木槌でどんどんと叩き、繊維を潰していきます。まるで紙粘土のようになった塊を触らせていただきましたが、粘質のある質感で、水の中に入れるとフワッと手から溶け出して、不思議な質感を体験できます。
以前真綿を水の中で広げた時に似たような、肌触りが気持ちよく、少し癖になりそうな感覚です。

その楮が溶けている水にトロロアオイの根から取れる、ネバネバした「ねり」を合わせ、大きな水槽に入れて紙漉水を作ります。その「ねり」が想像以上にネバネバしていてこんな素材がこの植物から採取できることには驚きました。この「ねり」は楮の繊維を一つ一つ固まらないようにバラバラにしつつ繋げるという効果を与え、和紙へと変化していくのだそうです。

ダイナミックで繊細な紙漉き

さて、いよいよ紙漉きです。漉桁(すげた)という大きな木を組んで作られた四角い枠に手がついたような物に漉き水をすくいあげ、漉簀(すきす)というすだれの様な物の上に、均等に繊維が行き渡る様に繰り返しゆすり、頃合いを見てまた漉き水をすくうという動作を繰り返していきます。
川原隆邦さんは大きな漉桁を使用していて、とてもダイナミックながらも繊細な動きで紙漉きを行います。
ざぶんざぶん、じゃぶじゃぶ、ちゃぷちゃぷと、手元の力を加減しながら、感覚を研ぎ澄まし行う紙漉きの水の音と、動作に合わせて生まれる水の動きもがなんとも心地よく、傍でずっと眺めていたい気持ちになりました。

出来上がった和紙は、漉桁から漉簀を外して隣の台まで運び、その台に基準となる端を合わせてのせて、すうっと気持ち良いぐらい綺麗にはがし取り積み重ねていきます。厚さや、質感だけでなく、透かしなどの模様や柄などもできるようで、いくつか試しに漉いてくださいました。
漉いたばかりのわしは水気を含んでちょっとぷるっとした質感を帯びていてとても綺麗です。
このような感じで何枚か漉いた紙がまとまってきたら、重石などを乗せて上から圧力をかけ、水気を取っていきます。

ある程度水気が取れたら、今度は積み重なった和紙を一枚一枚はがし、大きな和紙を乾かすアイロンのような役割の鉄の板に貼り付けていきます。
これもまた気持ち良いくらいすうっとはがし、ハケを使って綺麗にムラなくピタッと貼り付けます。その手際もあっという間で驚いていたら、「一枚やってみますか」と言われて少し挑戦してみましたが、やはり川原隆邦さんのようにはうまくはいきませんでした。

このアイロンのような機械を温めたりや、楮を茹でた大きな鍋を温めたりする作業に使うエネルギーは、全て薪を焚くことによって発生する熱で行なっています。
皮を剥いだ後に残る楮も薪の一部として使用されているようで、エネルギーも自然から、できるだけ自分たちで生み出したもので行っていけるようにと考えているのだそうです。

この機能美が詰まった工房の隣には、広い空間の作業場と休憩できたり、商談できるスペースがあります。また近くには古い蔵を改装したギャラリーもあり、作品がいくつか展示されていました。
オリジナルの作品や、近くの神社のお札など様々な作品をみせていただけて和紙の奥深さを感じることができ、川原隆邦さんから生み出される和紙たちの世界観が保たれながら、見ることができる素晴らしい空間でした。
ギャラリーで作品の説明や建物の説明を伺った後、サッカー少年だった川原隆邦さんが蛭谷和紙の継承者になっていった過程に、どんな経験があったのか、ゆっくりうかがってみました。

米丘寅吉さんとの出会い

サッカーに夢中な学生時代を過ごし、社会人サッカーでも活躍されていた川原隆邦さんは、両親の転勤に伴い富山へ移り住みます。転勤族だった両親のもとに育ったこともあり、その地に長く根付いているものには自然と心惹かれていたのだそうです。
初めから和紙職人を目指していたというわけでもなく、なんとなく漠然と心惹かれ、長い歴史を持つ伝統工芸とはどんなものだろうかと興味をもち、21歳の時に蛭谷和紙の唯一の継承者で伝統工芸師の米丘寅吉さんを訪ね、その出会いが大きく川原隆邦さんの人生を左右することになったのだそうです。
そのころの米丘寅吉さんはすでに83歳で、和紙製作はほぼ行っていない状態だったそうです。しかしながら彼の和紙作りへの眼差しや想い、またそれ以外の戦前、戦中、戦後の話や、その時代を生きてきた彼の生きる姿勢、考え方などにとても深く感銘を受け、和紙作りというより米丘寅吉さんそのものの存在に心揺さぶられ、彼の思いを引き継ぎたい、それが和紙であるならば、和紙作りを引き継ごうという思いが沸き起こり、米丘寅吉さんが継承してきた蛭谷和紙の技術を教えていただくことになったのだそうです。

最初は米丘寅吉さんと出会った富山県の朝日町で和紙製作を始めますが、この時代、伝統工芸の生産はどんどん先細りしていくばかりで、様々な試行錯誤を重ねていったのだそうです。
そんなときいつも米丘寅吉さんの「和紙と心中だけはするな、それだけで生きていくことはない、いろいろなことをやりながらでいいのだよ」という言葉を思い出すのだと川原隆邦さんは語ります。
その後、今工房がある立山町虫谷へ移り住み、自らの生活スタイルと合わせ、表現していきたいイメージを反映した工房、ギャラリーを開き、今までの和紙作りとは違った世界での展開に挑み続けていくことになります。

時代を超えて思いを引き継ぐ

大判サイズの和紙を製作することができたり、様々な技法に臆することなく挑戦したりするという姿勢があるからか、従来の和紙製作だけでなく、インテリアやオブジェ、アーティストと協業したアート作品なども川原隆邦さんは多く手がけます。
様々なスタイルを非常に柔軟に、しかし和紙作りには真摯に向き合い、こだわりと完成度を追求して取り組まれています。
米丘寅吉さんから教わった通り、表面的なこだわりではなく、大切な真のような部分を追求し、こだわり、その結果新しい姿を私たちに見せてくださっているようです。
そんな枠にとらわれない川原隆邦さんの活動は、時には様々な波紋を呼ぶこともありましたが、それすらも糧にしてさらに進化を続けているかのようです。

川原隆邦さんは米丘寅吉さんの弟子になり、和紙作りだけを教わらなかったのがよかったのではないかと語ってくださいました。なぜなら、彼の考え方や哲学、生き方をじっくり聞いて教わっていたからこそ、米丘寅吉さんが継承してきた心をしっかり受け継ぎ、それを和紙というツールを通して表現できているのではないかなと、そのことを伺って、時代を超えて継承していくということは本来こういうことなのではないかなと感じていました。

時代によって表層的な価値観やルール、道具なども変わっていきます。その部分はどんな形になろうとも私たちは時代の流れに乗っていかなければなりません。しかし継承しなければならない、もっと深い部分を貫く真のような、フィロソフィーのようなものさえブレなければ、どんな物事であれそのものは、時代を超えて生き続けていくのだなと川原隆邦さんのお話を伺い強く感じていました。
ギャラリーに飾られた川原隆邦さんの美しい作品を見ながら、私も米丘寅吉さんという和紙職人さんにお会いしてみたかったなと、彼の紙漉きをする姿を想像していました。

店舗データ

川原製作所

川原製作所

http://www.birudan.net/top/

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とプレスやディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えて行く事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

ABOUT CAR

EQA 250

メルセデス・ベンツの電気自動車ブランド、メルセデスEQのコンパクトSUVモデル。静粛性が高く、室内空間はフューチャリスティック&ラグジュアリー。パワフルなモーターを搭載しているので立ち上がりもスムーズ。EQCと同じく、新しいクルマの楽しみ方を教えてくれる一台です。

Share on:

*/ ?>

Mercedes-Benz LIVE!

メルセデス・ベンツの
ブランドポータルサイト
Mercedes-Benz LIVE!もチェック