She’s Mercedes meets Japan / Vol.21

甲州街道 前編  ReBuilding Center JAPAN  オーナー東野唯史

諏訪湖を囲む美しい水の街から発信する未来の生活スタイル

日本各地に伝わる手仕事や、受け継がれてきた技を次世代へ伝えようと、活動をしている「uraku」。彼女たちが旅のみちみちで出会う日本の美しい風景や物、事、そしてそこに集う人々のつながりを、Mercedes-EQと共にみつめる旅紀行。女性2人ならではのロードストーリー。春分を迎え、暖かい日が多くなってきたこの時期に向かったのは長野県の諏訪市。循環型のライフスタイルを提案するパワー溢れる方々を訪ねます。

photo/鬼澤礼門 text&edit/石崎由子(uraku) navigator/田沢美亜(uraku)

再訪した美しい「水の都」

春分を過ぎた頃からちらほらと、例年より早めの桜が咲き始め景色を彩りましたが、今年も昨年に引き続き、街はやや静かな様子です。
さてそんな春の気候の中、今回お届けするメルセデスで巡る旅は、長野の諏訪市へ向かいます。
諏訪市は、この旅紀行が始まった最初の頃、2018年の夏にも訪れていて2回目の訪問となります。
その名の通り諏訪湖を有する水の豊かな美しい街は、戦国時代のお話ではもちろんですが、弥生や縄文、古墳時代の遺跡も数多く発見されている、古い歴史のある街です。また御柱のお祭りで有名な諏訪大社の名前で耳にしている方も多くいらっしゃるかもしれません。
日本という国がまだなかった時代から人の営みが続く、神秘的なこの街を走るのはメルセデスが未来の地球のことを考えて2019年に日本に導入された100%電気自動車、EQC 400 4MATIC、カラーはハイテックシルバー。CO2を排出しない電気自動車で、新しい常識を提案してくれます。
振動が全くと言って良いほど感じられない静かな走りと、スムーズな走りはまさに新感覚です。
高速道路などでの加速の滑らかな反応はガソリンエンジンとは別次元のスムーズさと言えます。
メルセデスの他の車と同じような、様々な最新技術はもちろん搭載されていて長距離も疲労感なく運転できます。
さて、ストレスのないドライブを楽しんでいたら今回の目的地、諏訪の街に入り、諏訪湖が見えてきました。

都市部からの移住者が増え続ける魅力

ここ数年、移住したい県ランキングの1〜3位に毎年選ばれている長野県ですが、訪れてみるとその魅力は肌で感じることができます。自然や歴史的な文化遺産が豊富で、またそれらが日常的な生活の場からすぐ近くにあること、もちろん空気や水も綺麗であること、東京や名古屋などの大都市とのアクセスも良いことなど、たくさんのポイントがあります。でも1番のポイントは、古くから心の拠り所となる信仰の場が近くにあり、ゆったりとした時間が流れていて心の平穏が保たれるからかもしれません。
前回訪れた時、お話を伺った宮坂醸造の宮坂勝彦さんに、気になる人や物、場所をいくつか紹介していただいたのですが、その中で諏訪という地域を未来に向けて盛り上げていこうとしている方たちがいるということを伺い、今回の旅へとつながりました。
この古くから引き継がれている街で、日本だけでなく、世界の未来へ目を向けた新しい街づくりを目指す若者たちを今回は訪れます。
まず最初に訪ねるのは、リビルディングセンタージャパンの東野唯史さんです。諏訪湖のほとりを軽快に走り抜けたら目的地へ到着です。

リノベーションとDIYを楽しみながら行うことのできる店

到着すると笑顔の東野唯史さんがお店の前に立って待っていらっしゃいました。
スタッフの皆さんは開店準備で忙しそうに出入りしています。
車を駐車場まで案内していただいたあと、早速お店を案内していただきながら、お話を伺うことにしました。
リビルディングセンタージャパン/通称リビセン(以後リビセンと呼ぶ)は古材と古道具を販売する建築建材のリサイクルショップです。またその古材を利用して新たな家具や道具の製作や、古民家などを新しい空間に作り替えるリノベーション業務も併せて行っています。
「REBUILD NEW CULTURE」の理念のもと、今の社会を楽しみながらより心地良い未来へとつないでいきたいと考える活動を行っていこうと考えるチームのような会社です。

店舗は3階建ての古いビルを改装していて、1階には作業場と併設した古材の売り場と、カフェ、2階には生活雑貨や食器などが中心に、3階はガラスや、家具、照明器具などと、奥には家具作りのワークショップを行うスペースが設けられています。
3階から順番に下へと案内していただき、最後にカフェに立ち寄ることにして3階へ向かいます。
オーナーの東野唯史さんとは前回諏訪を訪れた時に、前述した宮坂勝彦さんに紹介していただき、それから何度かお話はさせていただいてはいましたが、詳しくお話を伺うのは今回が初めてで、ワクワクしながら階段を一歩一歩上がり、お店を案内していただきます。どの場所もまるで宝探しのようで、気になるものがあり過ぎて、つい立ち止まってしまい時間がどんどん過ぎていってしまいそうです。

3階に到着すると、たくさんの椅子が目に入ります。自然光がたっぷり入る建物なので、日の光に反射して、古い椅子たちがアートのような存在感を放っていました。古いガラスは様々な模様や柄、細工のものが並び、一つ一つ見ても飽きることがありません。ついついその物たちについて質問をしてしまいましたが、東野唯史さんは丁寧に説明してくださいます。それぞれの物たちのお話を語っている姿を見ていると、「物」に対する愛情が深いのだなと感じます。
奥にあるワークショップスペースでは定期的にDIYの講座を行っているそうで、工具や道具の使い方から教えていただける基礎コースから、テーブルなどを作るコースまであり、自分にあったレベルの講義が受けられるのだそうです。

2階は主に生活雑貨や食器などが手前に多く並んでいます。奥にはタンスや、食器棚、テーブルなどの家具がありました。カゴや葛籠、行李も多く、ついまた立ち止まってしまいました。
これをお部屋のあそこに置いて、いやここかな、と想像しているだけで楽しくなります。
この階でもまたついたくさん質問してしまいましたが、東野唯史さんは、使い方や手入れの仕方まで質問すると丁寧に教えてくださいました。
1階は半分がカフェスペースで半分が古材販売と作業場スペースになっています。
レスキューしてきた古材をこの作業場で使えるよう、丁寧に整理して加工していきます。
釘などが入っていないか金属探知機で検査して、見つけたら丁寧に取り除き、そのあと綺麗にクリーニングして、使いやすいように形を整えて店頭へと並べていきます。

2階、3階どちらにも、レスキューしてきた「物」たちを綺麗にして蘇らせるだけでなく、素材として販売したり、またアップサイクルした新しいアイテムに生まれ変わらせて販売したりと、今の生活にあった活用の仕方も面白く提案されていて、見ているだけで自分の生活空間に取り入れたくなってきます。
そのアイデアで、古民家の改装や、内装デザインもされていると伺っていたので、どこか内装デザインを拝見できないかとご相談したら、すぐ近くに手がけたパン屋さんがあるとのこと、早速そちらにもお邪魔しさせていただくことになりました。

諏訪で100年続く老舗のパン屋さん

内装を手掛けたという「太養パン店」はリビセンから歩いて3分ほどのところにあります。こちらはなんと1916年創業で100年以上続く諏訪では老舗のパン屋さんです。
まだパン屋さんがあまり日本で見られなかった時代から諏訪の人たちの食卓を100年以上も彩ってきた歴史あるお店が、昨年リニューアルすることになり、リビセンに依頼をしたのだそうです。
お店に入るとすぐに目に入る、古材を組み合わせた壁は、麦の穂と、パンをこねる動作をイメージしたのだそうです。床のタイルはオーナーの奥村さんが以前友人からいただき、奥に眠っていたものを利用、面積に対して十分な量がなかったので、不足分はリビセンの木材をうまく利用してモダンな柄になるよう貼り合わせされています。ランプは、リビセンのお店にあったアップサイクルランプシェードを使用し、ショーケースやカウンターの木材も古材を効果的に利用しています。
モダンながらも温かみを感じるデザインで、オーナーの奥村さんの人柄も表しているかのような店舗で、ゆっくりコーヒーを飲みながらくつろげるスペースとなっていました。
このように、クライアントに合わせて、古材やリサイクルの素材を効果的に利用し、デザイン性豊かな内装デザインと施工も数多く行っているのだそうです。
せっかくお邪魔したので、コーヒーを一杯いただいてから戻ることにしました。

作品を作るかのように作業する彼ら

「太養パン店」で、ゆっくりとコーヒーをいただいてからまたリビセンのお店に戻ると、レスキューに行った車が、タイミング良く戻ってきたところに遭遇することができました。
リビセンのお仕事の大切な柱の一つでもある、「レスキュー」とは、解体する家や、整理される家に伺い、今までならば廃棄されていたようなものたちをできるだけ蘇らせるようにとレスキュー(救出)してくる作業です。
到着した車の中には、家具や、道具、食器、ミシン、建材となっていた板など様々なものがびっしり詰め込まれていました。
それを運び出し、このあと一つ一つチェックし、クリーニングしてから、そのまま使えるもの、手を加えてアップサイクルさせるもの、部品として使うもの、建材として使うものへと整えていきます。
手間がかかる重労働なのですが、なぜかスタッフの皆さんは生き生きと楽しそうに、まるで作品を作る仲間たちのような躍動感と、融和感を感じました。
気がつくと、さっきまで私たちと話していた東野唯史さんが、その楽しそうな輪の中に混じって運び込む作業をしていました。誰よりも率先して動く姿を見ていて、ふと、リビセンをあらわす姿はこの感じかもしれないと思いました。リビセンのお店や、内装を手がけたお店、もちろん東野唯史さんやスタッフの皆さんに漂うこの雰囲気、それが、この諏訪という歴史ある街に絶妙にマッチしてさらに魅力を増幅させているのかもしれないと感じていました。

デザインだけでなく、作業ができるスキルを持つこと

リビセンに漂う良い雰囲気を作り上げている東野唯史さんですが、一体どんなものを見て、何を体験してきたのだろうと思い、1階にあるカフェでゆっくりしながら、詳しく伺ってみることにしました。
東野唯史さんは大学で建築デザインを学んだあと、内装や、ディスプレイを行うデザイン会社に入社。そこで年間100件近くのの案件をこなしているなかで、もともと思っていた「世の中に役立つ仕事をしたい」という思いがつのり退社。とりあえず世界一周の旅に出かけ帰国したのちに、独立することになります。
独立した直後にあの東日本大震災が起こり、ボランティアなどに参加しているところで、あるゲストハウスの立ち上げに参加することになります。もともとリノベーションなどをしていきたかったこともあり、また参加しているメンバーがデザイナーでありながら、大工仕事ができたり、ツリーハウスビルダーがいたりと、複数のスキルを持つメンバーの集まりであったことに大いに刺激を受けたのだそうです。そのあとは、日本各地のゲストハウス立ち上げや古民家改築などの依頼を受け、リノベーションデザインと大工や工事の作業を約3ヶ月ごとぐらいずつ転々とする生活が始まっていき、移動するごとに地域の大工さん、建築家、工事現場の作業の方などと交流し、自身もどんどんスキルをアップしていったのだそうです。

その建築の旅の途中で、奥様の華南子さんと出会い結婚し、2人で諏訪の作業に訪れた時、体の弱い華南子さんの体調が安定したことがきっかけで諏訪に落ち着くことにしたのだそうです。
この諏訪は日本列島の中心あたりに位置するので、どこへ行くにも便利だったということも理由の一つだったとおっしゃっていました。
そのあと新婚旅行を兼ねて訪れたポートランドでReBuilding Centerに出会います。もともとDIYセンターみたいなお店があったら良いのに、と考えていた東野唯史さんは、理想的なお店に出会い感動したのだそうです。しかもリサイクル特有の少し暗い感じが一切なく、すがすがしい空気の漂うその雰囲気がすっかり心を捉えたのだとか。
そのあと日本に戻り、ポートランドのReBuilding Centerに直談判して了承をいただき、晴れてReBuilding Center JAPAN設立へとこぎつけます。立ち上げメンバーは4人だったので、全く手が足りず本当に大変だったそうです。今はスタッフも13人となり、なんとなくですが、少しずつ回り始めてるかな、と語ってくださいました。

世の中のためになるデザインをすること

「REBUILD NEW CULTURE」の理念を持ち、ものが溢れる今の時代、忘れ去られてしまったり、失われたりする文化がたくさんある中で、あえて引き継ぐこと、価値がないかもしれないと思い込んでいるところに、新たな価値や文化を見つけることを、とにかく体を動かしながら生き生きと実践している彼らを見ていると、未来はそんなに悪く無いのかもと思わず心が躍るような気持ちになります。
ほとんどがリサイクルしていた江戸時代、彼らにはリサイクルという概念があったわけではありません。どちらかというとゴミという概念がなかったのかもしれません。
東野唯史さんを中心としたリビセンの皆さんは、もったいないというだけの気持ちでなく、この世に生み出されたほとんどのものは、循環するものであるという考えがしっかり根付いているかのようです。
今彼らは日本各地からの依頼で飛び回っていてそんな考え方を多く語るわけでなく、実践しながら見せてくれているのかもしれません。

さてそんな東野唯史さんは、立ち止まることはなく、さらに進化を続けています。
一つは、古民家をリノベーションと、リデザインするという活動の中で、現在ドイツなどヨーロッパではノーマルな考え方になりつつある、断熱ハウスにも取り組んでいます。
エコロジーの観点から見ても、クリーンエネルギーだけでなく、そもそもエネルギーを極力使わない家に住むという考え方、また1年中ゴールデンウィークの頃のような気候が保たれる住環境で、健康寿命が保たれるということを新たに学習し取り組んでいます。
実際私たちも断熱の家の体験をさせていただきましたが、その快適さは本当に驚きでした。
これが古民家なの?と疑うほどです。
そしてもう一つは、「諏訪未来デザイン会議」という活動です。諏訪でそれぞれ活動をする若者たちが集い、諏訪湖のほとりにあるかなり大きな面積の、旧東洋バルヴ諏訪工場跡地を諏訪市民のために有効な活用方法を考える会を発足し活動しています。
この内容については、中編で詳しくご紹介します。

大学生の頃、講師の先生に言われた「デザインで世の中を良くしていきなさい、世の中のためになるデザインをしなさい」という言葉は、東野唯史さんの心にいつも留まり原動力になっています。
誰かが悲しむことはしたくない、みんなが笑顔でいられる会社でありたいと語りながら朗らかに笑っている姿を見ていたら諏訪の未来はなんだかすごく素敵になるのかも、と思わずにはいられませんでした。リビセンに漂う、心が温かくなる空気感に浸りながら、ちょっと自分のお買い物をするために、また上の階へ上がることにします。


 

店舗データ

ReBuilding Center JAPAN

ReBuilding Center JAPAN

〒 392-0024長野県諏訪市小和田3-8
TEL : 0266-78-8967
http://rebuildingcenter.jp
定休日 : 水曜日・木曜日
営業時間 : 11:00〜18:00

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とプレスやディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えて行く事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
MARGARET HOWELL:Tops、Pants

ABOUT CAR

EQC 400 4MATIC

ダイナミックな走りとスポーティなデザインが特長のメルセデス・ベンツの電気自動車、EQC。最新のリチウムイオンバッテリーを搭載し、フル充電で約400kmの航続距離を誇ります。静粛性も高く、室内空間はフューチャリスティック&ラグジュアリー。新しいクルマの楽しみ方を教えてくれる一台です。

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