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新世代のトップ女優、エマ・ストーンが語る「心の痛みとの向き合い方」

ゴールデングローブ賞、アカデミー主演女優賞と、映画界で最高峰の評価を次々と手にしてきたエマ・ストーン。ドイツで発刊されている『She’s Mercedes magazine』のインタビューに答えてくれた。

translation: Masanori Yamada

ニューヨークのホテルに到着した彼女は、風邪のせいで少しばかり体調が優れないと言いながら、それでも明るい表情を崩さない。キャリアの転機となった2010年公開の映画『Easy A(邦題:小悪魔はなぜモテる?!)』に主演して以来約10年、30歳になったエマ・ストーンは、自身を客観的に見ている。

エマ・ストーン

「30歳になる直前は少し悲観的になっていたけれど、年齢を重ねなければ経験できない人生の様々な出来事を今は楽しんでいるし、30代の自分に何が起こるのかを楽しみにしています。誰もがそうであるように、多くのことを学び、多くの経験をしてきたことで、選択を迫られたときの態度は慎重になりました。それでも、『Easy A』の頃の自分と今の自分は、本質的な部分は大きく変わっていないように思います。“天然”の若い女性が、少しマトモな“天然”になった程度で(笑)」

10代の頃から演じることに対して傾けてきた、並々ならぬ情熱と創造性。そして、「彼女たちの存在なしでは、今の自分はなかった」と語る、心の底からリスペクトする友人たちのサポートを受け、ハリウッドを代表する女優となったエマ・ストーン。アニー・ランズバーグ役を演じたNetflixのドラマ『マニアック』で、自身が抱えるセンシティブな問題とも向き合うことになった。

「映画であろうがテレビであろうが劇場であろうが、いつも“最高の舞台”で演じたいと願っている私にとって、5人の役を演じたこのドラマは、とてもエキサイティングな経験でした。とくに印象に残っているのは、うつ病を含む深いテーマを掘り下げたドラマの終盤、アニーが「何が普通なのか?」と尋ねるシーンです。人生は痛み、不安、憂鬱などに、状況を問わず直面するものですが、何かを失ったり、苦悩を抱えていたり、誰もが苦しんでいることを認識し、そのことについて話し合いながら、普通じゃないと感じることが“普通”なんだと思います。そうした議論は美しくて重要なことですし、孤立を遠ざける人とのつながりは、お互いにとって良薬になるはずです。言葉にできない苦しみをともなう精神疾患に対しては、向精神薬の服用が有効な手立てになるでしょう」

7歳で不安障害を患い、セラピーに通った経験のある彼女は、病気と共生する手段を自ら見つけ、日々を送っている。

エマ・ストーン

「人それぞれの問題と言える向精神薬の服用は、みんなで話し合い、深く考えて判断するべきことだと思いますが、その恩恵を多くの人が受けていますし、大きな助けになっているのも事実です。私自身は、気分が沈んだときは気持ちを正直に、誰かに話すようにしていて、建ったそれだけのことなのに本当に大きな助けになっています」

「精神疾患を抱える人たちに私がアドバイスをするとしたら、それは『痛みは消えることなく、ずっとあなたと共にいる。痛みと共に、あなたは生きていく』という、アニーの言葉を借りたものになるでしょう。過去の自分には戻れないことを考えれば、それは本当だと思います。でも、そうした痛みや喪失感は、人生の望まないネガティブな出来事への抵抗力や対応力を与えてもくれます。これもまた、私の経験を通して言える本当のことだと思います」

いくつもの不運や摩訶不思議な巡り合わせを経ながら女優になる夢を叶えたエマ・ストーンは、現在の自分の置かれた立場を、「信じられないほど素晴らしい!」と喜ぶ。

「もっと早く知ることができていたら良かったと思うことはいくつもあります。でも、人間は行動したり経験したりして学ぶ生き物ですから、今、自分がしたいことに夢中になっている若い人に、年上の教訓を伝えるのはとても難しいこと。不安障害のことも含め、今の私が昔の自分に同じアドバイスをしたとしても、彼女はきっと、素直に聞くことはしないでしょうね(笑)」

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