She’s Mercedes meets Japan / Vol.12 /

長野県 諏訪市(甲州街道)前編 真澄 宮坂醸造 宮坂勝彦

日本各地に今も伝わるぬくもりのある手仕事や、受け継がれてきた確かな技を次世代へつなげて行こうと活動をしている「uraku」、彼女達が旅のみちみちで出会う日本の美しい風景や物、事、をメルセデスと共にみつめる旅紀行。女性2人ならではのゆったりとしたロードストーリーの行き着く先は…

photo/ 浜野智(glife)
text&edit/石崎由子(uraku)
navigator/田沢美亜(uraku)

美しい「水の街」諏訪

メルセデスで巡る旅、今回は甲州街道を辿る旅に出かけます。日本橋から新宿を抜けて西にどんどん進むと甲州街道の終点の諏訪に辿り着きます。
この諏訪という地域はその名の通り諏訪湖を有する、豊かな水に恵まれ、古くから人々の営みが行われていた地域で、縄文や弥生時代の遺跡も多く出土しています。
また、中世は諏訪大社の大祝家、諏訪氏が国人領主として、戦国時代には武田氏と婚姻関係を結び武田領となったりと、何かと歴史の舞台に名前を登場する地域でもあります。関ヶ原の戦いの後、諏訪氏が高島藩としてこの地を治めたためか、この地特有の少し幻想的な歴史ある文化が色濃く残る地域です。
そんな幻想的な街を走る今回の旅のお供は、CLA 220 4MATIC Shooting Brake。カラーはジュピターレットです。今回も少し遠出となるので、そんな時には快適な乗り心地と、俊敏で安定したハンドリングが助かります。
美しい水の街と思わせるだけあり、諏訪市内甲州街道沿いわずか500mの間に酒蔵が5軒も並んでいます。今回訪ねたのは、その中でも最も長い歴史を持つ銘酒「真澄」を醸造している「宮坂醸造」次期当主見習いの宮坂勝彦さんです。
宮坂勝彦さんに歴史を紡いで未来を見つめる思いを伺いました。

協会七号酵母誕生の地

創業は1662年、諏訪大社のご宝物「真澄の鏡」から酒名をいただき、「真澄」の名でこの地で長く酒を醸してきた「宮坂醸造」さん、現在は歴史ある諏訪蔵と、富士見蔵でお酒作りを行っています。私たちが訪れたのはショップも併設した諏訪蔵。日本酒に詳しい方ならご存知の「協会七号酵母誕生の地」でもあります。
実際のお酒作りは酒米を稲刈りしていて、精米する秋からまだ寒さの残る早春の時期までに行われます。今は時期ではないので、働いている蔵人さんは見られませんでしたが、ゆっくり蔵の中を宮坂勝彦さんに案内してもらいました。本格的な造りの時期は、まさに緊張の瞬間の連続で気を抜けない時期ですから、こんなにゆっくり見学しながら、宮坂勝彦さんの思いも伺えないかもと考えての訪問でした。
お店から蔵の方へ進む途中に、小さなお社があります。そこに「七号酵母誕生の酒蔵」の碑が建っているのが目に入ります。実際見つかった蔵の奥にも「七号酵母誕生の地」という石碑があり、本当にここなんだなと、改めて実感するのと共に、何か特別な空気がこの辺りを包み込んでいるような気分に浸りながら奥へと進みます。

お酒作りに大切なものはいくつもありますが、その中でも大きな要因はやはり原料となるお米とお水は見逃せません。「真澄」さんでは産地と品質が確かな新米を玄米から、とこだわったお米を買い付けています。まずはそのお米を見せていただきました。
お酒造りで使われる言葉で「米を磨く」という言葉があります。米の表面を包んでいるタンパク質や脂質を削り取る目的ですが、まさに「磨く」という言葉がぴったりなように綺麗な楕円形になってまるで淡水パールのように美しい姿です。この時点での原料選びから処理の仕方だけでも、様々なこだわりと丁寧な仕事ぶりを説明していただき、気が遠くなるような神経の細かさを感じました。
この後ゆっくり、洗米と浸漬での工夫、蒸米での丁寧な仕事、麹造り、仕込、発酵、上槽、きりがないほどの徹底したこだわりを伺い、改めて良い品質を保つお酒の秘密が解ったような気がしました。細かな造り工程や、7号酵母にまつわるお話などは「真澄」さんのホームページで詳しく伺えますので、ぜひ一度ゆっくりご覧いただけたらと思います。

曾祖父が行った「真澄」の再出発

350年以上の歴史を誇る「真澄 宮坂醸造」さんですが、大きな改革を行い、現在の姿に変えたのは宮坂勝彦さんの曾祖父、宮坂勝氏でした。貧乏酒蔵だった「真澄」のそれまでの考えをシフトチェンジして「日本一の美酒を醸す他なし」と当時20代の若者だった窪田千里氏を杜氏に抜擢し、徹底的な品質にこだわる酒造りを始めます。その結果、全国品評会で賞を何度も獲得するようになります。なぜ「真澄」は美味しい酒を作れるのかということで、醸造試験場が調査に来られ、その時「七号酵母」が発見されるというわけです。
「祖父、父も尊敬していますが曾祖父の影響は強いと思います」と語る宮坂勝彦さん。曾祖父、宮坂勝さんなくしては「真澄」は語れないと強く話してくださいました。「真澄」さんの持つ心意気は、宮坂勝さんが色濃く残した、品質にはこだわり、時代を読み解き、高みを目指してチャレンジする眼差しなのかもしれません。
実際、お祖父様は輸送手段の改革、東京への進出、お父様は海外への販路拡大と、時代を読み解き前へ前へと進んで、今の「真澄」を形作っているようです。
酒蔵の一角にはコンピューターで数値化され、データーをきちんと残して管理するシステムもあり、伝統、手仕事、感覚を大切にしながら、機械に頼ることなく上手に道具として活用する姿勢も感じられました。これも時代を読み解き美味しいお酒を生み出す姿勢の一つだと思いました。

「諏訪の真澄 」へ、ボーダーを飛び越えて

蔵を見学した後は、お店へ移動してお土産の購入です。
お店の奥で試飲もできますが、車ですので、この後宿泊する場所へ贅沢にも宮坂勝彦さんが、選び、持ってきてくださることになりました。この場では甘酒ならいただけるということで早速試飲しました。こちらの甘酒はさらっとしていて飲みやすいのですが、コクもあり、とても味わい深いのが特長です。甘酒は夏の季語、暑い夏の滋養供給にとても良いのですが、こちらの甘酒は飲みやすいのでとてもお勧めです。
ところで、次世代の「真澄」を背負う宮坂勝彦さん、彼も少し変わった経歴があります。実は某百貨店の婦人服フロアーで販売をしていらっしゃったとのこと、そんな経験を持つ彼ならではの視点で新たな商品開発を行っています。前職で培った、物つくりを見極める力やマーケティングとブランディング能力が次の時代の「真澄」を少しずつ新たなステージへと押し上げているようです。いろいろと構想があるようですが、それはまだここではご紹介できないのが残念です。
彼が目指す「高いクオリティー」のイメージは、決してきらびやかな特別な日のためではなく、毎日を彩るために満足いくお酒、決して飽きることなく女性でも男性でも愛される上質感。ボーダーラインのない未来のお酒は国境も時代も文化も超えて、食卓で人々をつなげてくれそうな気がします。
諏訪という地域を大切にして、環境も経済も考えて、「諏訪の真澄」になりたいと語る宮坂勝彦さん。古くから栄えるこの幻想的な水の都は、その水の力で素晴らしい商品を生み出し、そのことに感謝する人々に守られています。
日本各地に点々と残るこんな素晴らしい地域を守らなければという思いと、これからの私たちが見習わなければいけない営みがたくさんあるのではないだろうかと思いながら「真澄」を後にしました。

 

店舗データ

蔵元ショップ セラ真澄

蔵元ショップ セラ真澄

〒392-0006 長野県諏訪市元町1−16
tel:0266-57-0303
https://www.masumi.co.jp
定休日 : なし
営業時間:9:00~18:00 (試飲申し込み 17:00まで)
専用駐車場ございます

 
<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とTOKYO DRESS などのプレスやアパレルブランドのディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)の2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えていく事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
Continuer:Sunglass

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