She’s Mercedes meets Japan / Vol.12

長野県 諏訪市(甲州街道)後編 立石公園、諏訪湖、萃、新鶴

photo/ 濱野智(glife)
text&edit/石崎由子(uraku)
navigator/田沢美亜(uraku)

諏訪湖を一望できる場所へ

美しい水の街、諏訪が生み出す銘酒の酒蔵「真澄」さんでこの街の清らかさを実感した私たちは、この場所の要でもある諏訪湖をもう少ししっかり眺めてみたくなり、宮坂勝彦さんに諏訪湖が一望できる場所を教えていただき、早速向かうことにしました。
前回に引き続き旅のお供は、CLA 220 4MATIC Shooting Brake、カラーはジュピターレットです。急な斜面も安定して加速してくれます。
「真澄」さんから少し高台へ車を走らせると、次の目的地「立石公園」へ到着です。
ここからは諏訪湖が一望できて、その美しさをパノラマで眺めることができます。
ここから見ると、周りは山々に囲まれている地形であることが実感できて、昔の人々が山を抜けてこの地を訪れた時に、ふっと広がるこの幻想的な空気感に感動を覚えたのではないだろうかという気持ちに包まれます。
ここで、美味しい空気をたくさん吸って少し湖を眺めたら、また丘を下って諏訪湖のほとりにある今夜の宿泊先「萃」さんへ向かいます。
「真澄」の宮坂勝彦さんともそこでまた合流して、今夜は美味しいお酒とお食事をいただく予定です。

美しい諏訪湖のほとりに立つ宿

諏訪湖の周りをぐるっと囲む湖岸通り沿いを走っていると、シックで高級感を感じる門構えの宿「萃」を見つけることができます。
2016年にオープンした「萃」さん、客室は8室とこじんまりとした規模ですが、ゆったりと贅沢に過ごせるような空間が魅力的です。
シックで重厚な門を抜けると、隠れ家的な和の空間が広がります。1Fはエントランスと、ロビーになっていて、囲炉裏があり、心地よく過ごせる「囲炉裏茶の間」と酒蔵の多い諏訪ならではの「地酒Bar」があります。日本酒だけでなく、ワインも長野産のものだけを厳選して提供してくださっているとのこと、とても気になるので食事の後に、ゆっくり訪れてみようと密かに思いながら今日のお部屋へ案内していただきました。
お部屋へ入ると、まず目に入ってくるのが、諏訪湖です。全室諏訪湖を望むことができるように作られているそうで、心地よい和の空間から窓の外に広がる雄大な諏訪の姿を眺めて過ごすひとときは、慌ただしい日常を忘れて時がゆっくり感じられます。
全室露天風呂付きで、お風呂に入りながらも諏訪湖が感じられます。また屋上には展望露天風呂があり、ここは諏訪湖だけでなく天空にもつながっているような開放感が味わえて、日常の疲れが吹き飛んでしまいます。さて、日も沈んできたので夕食をいただくために、2Fの料亭へ向かいます。

日常的でありながら特別な気持ちも湧き上がる場所

食事は完全個室の料亭となっていて、くつろいで過ごせます。「寛ぎの膳」が基本コース、長野の食材を中心に、長野の調味料を使って「萃」ならではのお料理です。こちらの料理を監修されているのは、お隣の茅野市で「和食から木」を経営されている唐木正文さん。この日は特別に夕食を一緒にいただくことができましたので、少しお話しを伺うことができました。
先付けから水菓子まで11品、唐木さんが「萃」のオーナー柳澤幸輝さんから依頼を受けて味わい深くてこの地域を感じられるメニューとなっています。お造りはイワナと信州サーモンだったり、蓼科の白樺湖近くにある美味しいお豆腐のお吸い物鍋を楽しめたりと長野ならではの味です。信州牛の陶板焼に使う割り下も長野の調味料で素朴さと洗練さが感じられて、この地を愛している唐木正文さんのセンスが光るメニューとなっています。次回は「和食から木」も是非訪れてみたいなと思いました。

さてそんな話をしていたら、「真澄」の宮坂勝彦さんが美味しいお酒を持参して合流です。早速“真澄”をみんなで美味しくいただくことにしました。いただいてみると宮坂勝彦さんが話していた「毎日を彩るための満足いくお酒」の意味がとてもよくわかりました、飾りすぎず、でも深みがあり満足感を感じ、毎日飽きずにいただけるお酒。
このお酒をいただきながら、ふと、こちらでいただいている食事も、このお宿も同じ満足感ではと感じました。洗練されていながらもどこか素朴な安心感、日常的でありながら特別な気持ちも湧き上がる。これが諏訪に漂う感覚なのかなと思いました。
食事の後は1Fのバーで「萃」のオーナー柳澤幸輝さんともう一杯ということになり、またゆっくりお話しを伺いました。柳澤幸輝さんは蓼科で100年近く続く温泉宿の4代目だそうで、長く続けてきたノウハウを活かしながら、柳澤幸輝さんが“今”提供したいという思いでこの「萃」を作られたそうです。本当の意味で心からくつろげるためにこだわったのは、“お水と空気“とのこと。お水はもちろんこの地に豊かに湧き出る恵みがあります。この地域は空気も美味しいのですが、さらに空気清浄効果のある素材の漆喰を使用したり、お部屋に使用している木材も空気を綺麗にする効果のあるものを使用しています。ここを訪れた時、清らかな気持ちでゆったりできるようにと柳澤幸輝さんの強いこだわりが集まったお宿なのだなと思いました。

中山道と甲州街道のぶつかる場所と塩の道

綺麗な空気とお水(お湯)に浸ったからか、朝はとても清々しく、身体中が浄化されたような気持ちでの目覚めです。パワーチャージして次に訪ねたのは、塩羊羹の老舗「新鶴」の6代目当主見習いの河西正憲さんです。諏訪大社の下社のすぐ脇にお店を構えて145年、こだわりの素材で和菓子を作り続けていらっしゃいます。
中山道と甲州街道が交わるまさに交通の要所と言える場所にあり、趣のある店構えは諏訪大社下社の一部のような威厳を感じます。中山道の次の宿場町に塩尻という場所があるそうですが、ここは日本海側からと太平洋側から続く塩の路とがぶつかる場所なのだそうです。
そんな歴史ある「新鶴」のお店の奥にある工房で早速作業を見せていただきました。
工房では、ちょうどこの道36年のベテラン職人さんが塩羊羹作りの真っ最中で、大きな鍋で寒天をぐつぐつと煮詰めていらっしゃいました。強い火力を必要とするため楢の木の薪を使っています。

ちょうど良い温度と粘りを見極めて小豆を入れて混ぜ合わせます。小豆は皮をむいて使いますが、この時少しだけ皮を残して、やや小豆色になるようないい塩梅にするそうです。とにかく全てが、タイミングと塩梅で、すべての工程において見極められるようになるには、時間がかかるのだそうです。出来上がると、船という型の中に熱々のうちに流し込み、冷やされて固まったら、お店の裏の作業場へ移されます。そこで一つ一つ手作業で切り分けていきます。
さらに、卓越した職人技をいっそう光らせるのは、こだわりの素材たちです。
寒天は今では少なくなってしまった隣町の茅野市産の天然角寒天を使用しています。
小豆は十勝産の物を、そして下諏訪の水、と塩、全て欠かすことができない大切な要素が混ざり合って絶品の塩羊羹が出来上がるというわけです。

諏訪の美しい水に守られ、145年続く老舗

作業の工程を見せていただいた後はお土産を購入しようとお店の方へ移動です。
名物の塩羊羮だけでなくいろいろな和菓子があり、どれもこれもとても美味しいので迷ってしまいます。河西正憲さん自ら一つ一つ説明してくださりながら、お店の話や、想いを話してくださいました。
こちらのお菓子たちはこの下諏訪の「新鶴」でしか手に入れることができません。
これだけの絶品なので、今までもいろいろなところからお話はいただけるのだそうですが、腕のある職人の数と、手に入れられる素材や、燃料となる薪の数量を考えても、販売数を増やすことが難しのだそうです。大切なことはこの味を守り、お客様に提供し続ける事だからだそうです。ただでさえ、現在のこだわった素材もいつまで手に入れる事ができるのか危うい日本の現状で、維持するだけでも頭を悩ませているのだそうです。
特に最近頭を悩ませたのは、燃料の薪の確保で、「新鶴」で使用している楢の木の薪は、他の木より火力が強くなるのだそうです。その楢の薪を供給してくださっている方が数年前に廃業されてしまったそうですが、なんとか他の方を探して繋げることができたとのこと。とはいえ、いつどうなるかと心配は絶えないそうです。
その他にも代々使用している漆の番重も定期的に塗り直しを行っているのですが、漆の業者も少なくなっていて、こちらも心配だったり、茅野市の寒天もいつまで使えるのかなどなど、長い間大切にしてきた信頼を守り続けるというだけでも絶えず努力と進化を続けなければいけない状況なのだそうです。
河西正憲さんはこの時代に引き継いでいくということで、一層「新鶴」の物作りの姿勢を大切にしなければと語ってくださいました。
この清らかな水を湛える諏訪の旅で感じた、洗練されていながらもどこか素朴な安心感や、日常的でありながら特別な気持ちも湧き上がる気持ちは、やはりここにも漂っているのだなと感じながら諏訪を後にしました。

 

立寄りデータ

立石公園

no image

長野県諏訪市大字上諏訪 10399番地他
http://www.city.suwa.lg.jp/kanko/city_info/detail.jsp?id=9193

 

店舗データ

寛ぎの諏訪の湯宿 萃 sui-諏訪湖

寛ぎの諏訪の湯宿 萃 sui-諏訪湖

〒392-0027長野県諏訪市湖岸通り 2-5-27
tel: 0266-58-3434
fax: 0266-58-2828
https://www.sui-suwako.jp
電話受付時間:10:00~19:00
専用駐車場はございます

 

店舗データ

新鶴本店

新鶴本店

長野県諏訪郡下諏訪町木の下
tel: 0266-27-8620
fax: 0266-27-0825
http://www.shinturu.com
定休日:毎週水曜日
営業時間:平日:8:30~18:00
専用駐車場はございます(7台)

 
<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とTOKYO DRESS などのプレスやアパレルブランドのディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)の2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えていく事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
Continuer:Sunglass

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