She’s Mercedes meets Japan / Vol.25

甲州街道 前編  NPO富士山ネイチャークラブ ネイチャーナビゲーター 舟津川由利

都会育ちから自然の中へ、生きる原点を伝えるネイチャーナビゲーター

日本各地に伝わる手仕事や、受け継がれてきた技を次世代へ伝えようと、活動をしている「uraku」。彼女たちが旅のみちみちで出会う日本の美しい風景や物、事、そしてそこに集う人々のつながりを、メルセデスと共にみつめる旅紀行。女性2人ならではのロードストーリー。今回のメルセデスの旅は、立冬を間近に控えた寒露の頃、すっきりとした秋晴れが続き、そろそろ木々も色づき始めた山梨県への旅です。富士山の初冠雪も発表され、肌寒さを感じ始めた富士の裾野で、原点を見つめ継承しつつ、新しい発信を試みる魅力的な人たちを訪ねます。

photo/鬼澤礼門
text&edit/石崎由子(uraku)
navigator/田沢美亜(uraku)

甲州街道を走り富士の麓へ

立冬を間近に控え木々も色づき始めた頃、私たちは山梨県の富士の裾野にある5つの湖で有名な場所へ向かいました。朝晩は肌寒さを感じ始めた頃ですが、昼間は秋のすっきりとした青空が綺麗でドライブも心地よい季節です。
そんな心地よい季節に甲州街道を西へ進み、向かう先は山梨県。富士山をはじめ南アルプス、八ヶ岳、秩父山脈にぐるりと囲まれた自然豊かな場所です。東京からのアクセスも良くこの湖が点在する区域へは一番遠い本栖湖でさえ、2時間ほどで到着します。
そのアクセスの良さからか、近年ではキャンプやアウトドアスポーツの人気の高まりも後押しして、今まで以上に注目を浴び、週末や休日などは都会から遊びに来る人たちで賑わいを見せるとともに、都市部からの移住先としても注目を集めています。
また、県内には古くから人が集い生活した痕跡となる遺跡も多く点在し、一番古いものは石器時代から、縄文、弥生の遺跡も多く見られます。なんと言っても日本の象徴といわれる富士山があり、その美しい姿を、遠い昔からさまざまな時代の人々によって、信仰のための神聖な場所とされてきたことは多くの人に知られています。

今回も旅を一緒にするのは、もちろん、メルセデスEQ。その中でも今年夏に発売されたSUVモデル「EQB 250」、カラーはデジタルホワイトです。
メルセデスが近年提案しているEQシリーズはCO2を排出しない100%電気自動車で、地球環境を考えた未来の自動車の姿としてだけでなく、私たちの未来に向けた新しい生活までも含めた提案を行っています。
EQB 250の乗り心地はこれまでのEQシリーズと同様、まるで滑るような静かな走りで、全くと言っても良いほど振動を感じさせず、長時間の運転でも疲労感なく快適にドライブが楽しめます。
特に高速道路など長距離で加速する時の滑らかな反応は、燃料エンジンでは感じたことのないスムーズさで、空を飛んでいきそうな感覚を覚えるほどです。
なんと言ってもEQシリーズ初の7人乗り可能車種なので、家族や、友人たちとの楽しいドライブも一緒に楽しめます。通常車のように4人乗車で3列目のシートを使用しないときには、大容量のラゲッジスペースとして利用できるところも魅力的です。

秋特有の鱗雲が見られる秋晴れの中、甲州街道から、ふじみちに分岐して、国道139号線を心地よく走っていくと、今回お会いするネイチャーナビゲーターの舟津川由利さんとの待ち合わせ場所、「道の駅なるさわ」に到着です。

富士の裾野「青木ヶ原樹海」へ

待ち合わせの場所に一足早く到着されていた舟津川由利さん、私たちを見つけると優しい笑顔で手を振りながら近づいてきてくださいました。
この「道の駅なるさわ」は富士山の姿が綺麗に見える場所としても有名な場所です。今日はあいにく晴れてはいるものの富士山には雲がかかり、その存在しか感じられなかったのですが、この場所にはEV充電ステーションもあるので、帰りに充電していこうと相談しながら車を停めて舟津川由利さんとご対面です。
今日はとっておきの青木ヶ原樹海ツアーが体験できるとのことで、まずはここで舟津川由利さんも私たちのEQB 250に乗り、ツアーロード入り口まで車でいくことになりました。
ツアーロード入り口までの道は、今までの道とは少し雰囲気が変わり緑の中を進む感じです。富士山の姿は見えないけれども、少しひんやりとした空気が心地よくドライブが楽しい道です。

富士山には何度も繰り返してきた噴火の影響でできた堰止湖(せきとめこ)の本栖湖(もとすこ)、精進湖(しょうじこ)、西湖(さいこ)、河口湖(かわぐちこ)、山中湖(やまなかこ)という5つの湖があります。その湖を含む広い裾野の一帯は富士箱根伊豆国立公園に指定されていて、2013年には日本人の自然観や文化に大きな影響を与えたとしてユネスコ世界遺産委員会によって、世界文化遺産として登録されました。
今回ツアーする青木ヶ原樹海もその裾野に広がる広大な自然地域で、富士山噴火の溶岩質の土壌でできた深い森として知られています。15分ほど車を走らせたらツアーロード入り口に到着です。

深い緑と黒い地表で覆われた原生林

冬でも青々とした木がしげる場所という謂れから “青木ヶ原”という名前がついたというだけあって、紅葉がはじまり始めたにもかかわらず、深い緑に包まれた森がそこには広がっていました。1200年前ごろの噴火によって大量に流れ出した溶岩がこの場所を覆い、稀に見るほどの長く広い裾野を作り出したため、足元にはところどころ黒い溶岩石が顔を出していて、黒い地面という印象の場所です。
100mほどの深さまで溶岩によって地表を覆われているため、木々は深く根を張ることができず、根は横へ広がり独特の形状を見せています。根を深く張らず水分量が少ない地表でも強く生育できる樹木種がここには育っているため、多くは針葉樹で構成されていて、この森のほとんどは原生に近い森と考えられています。またその平安時代の噴火によって元々あった大きな湖に溶岩が流れ込み、西湖、精進湖の2つの湖が誕生したとされています。樹海の入り口に木々の間のスペースに作られた駐車場に車を停めて、ここから1時間ほどのツアーの始まりです。

ダイナミックで繊細な地球の営みが感じられる場所

標高が1000m以上あるというだけあってか、空気は今までよりさらにひんやりとし、これから富士の樹海の中へ入るんだという心構えからか背筋がスッと伸びるような気が引き締まる感覚と、未知の世界に足を踏み入れるときのあのワクワクした高揚感が入り混じった不思議な感覚が身を包みます。
細い林道の周りはどこを見ても深い青い森、鬱蒼としげる木々と地表にさまざまな有機的な形で広がる木の根、その合間には足元から樹木まで、まるで緑のビロードの衣服を纏ったかのような苔が少し水気を含んでキラキラと輝いています。ツガやヒノキ、フジゴヨウなどの足元には青木ヶ原の名前の由来になったとされ、冬でも青い葉をつける黒冬青(クロソヨゴ)という低木がしげり、今まで見てきた森とは明らかに違う姿には圧倒されます。舟津川由利さんは私たちを導きながら驚くほど豊富な知識で丁寧に説明してくださいます。
「苔は全ての陸上植物の祖先なのよ」苔の美しさと形状に感嘆していた私たちに舟津川由利さんは語りかけます。苔は4億年前に海から陸上に上がってきた藻類と同じ構造の植物なのだそうです。ひとつひとつ苔の名称を説明しながら、今度はシダ植物の話へ、維管束を持つことによってバラエティー豊かな植物が地上に溢れることになったと説明してくださいました。このようにさまざまな知識でこの森の懐の深さに思いを巡らせることができる語りのせいか、何か懐かしいところへ戻ってきたような感覚を湧き立たせてくれます。

しばらく歩くとポッカリと大きく口を開けた洞窟があるところへ到着しました。
ここは「富士風穴」といい、青木ヶ原樹海に100以上も発見されている溶岩洞穴の中でも最長の風穴だそうです。中からさらにひんやりとした空気がほんのりと噴き上げてきていて、トレッキングで少し暖かくなった体を心地よく冷やしてくれます。全長1000mあるといいうこの洞窟はあまり観光化されていないこともあり、事前に申請し、装備をしての洞窟ツアーも行われていてマニアには人気のスポットだそうです。
およそ1200年前の、864年に起こった富士山の噴火は、ハワイ式噴火とされていて、この場所の溶岩と、キラウェアの溶岩は同じ性質でできています。ただキラウェアの噴火とは規模が圧倒的に違い、富士山噴火から1年半足らずで流れた溶岩は、キラウェアが30年間流し続けた溶岩の量と同じぐらいなのだそうです。
流れた溶岩が地表から固まり始め、中は固まらず流れ続ける現象が起きたため冷えて固まった時に空洞ができ風穴となります。そのため風穴は富士山の地下のマグマ溜まりと繋がっているのだそうです。
舟津川由利さんは、このような地質的、歴史的な詳しいお話に加え、このほかに氷穴と呼ばれる洞窟もいくつかあり、その一つには江ノ島と繋がっているという伝承もあるという神話的なお話まで、幅広い知識でトレッキング中の私たちを楽しませてくださいました。

表情が変わる森

風穴の場所を過ぎてしばらく歩くと、ガラリと森の表情が変わります。
大室山と言われるその場所は、それまでの深い緑の雰囲気とは変わり、黄色く色づいた葉が一面地表を覆い空が開けた場所で、富士山が子供を抱いたように見えることから「子抱き富士」と言われる山です。地表一面に落ちているのは黄色く色づいた桂の葉で、甘い焦がし飴のような香りを漂わせています。
ここは今までの地質とは全く違い、溶岩で覆われることなく、樹木もブナやミズナラ、桂の原生林が広がり、苔の姿もほとんど見ることがありません。この大室山は3000年ほど前に、爆発噴火という様式で噴火したので地表には軽石のような細かな噴石がつもり、地下に根を張ることができる、この地方の気候で通常多く見られる広葉樹林帯が広がっている場所です。
この大室山を取り囲むように、1200年前の噴火の際の溶岩が流れたため、くっきりと溶岩の流れた境界線から、見た目も香りも空気感すら変わってしまう、とても不思議な場所でもあります。
この場所にはシンボルツリーと言われる大きなブナの木がありました。気が遠くなるような長い年月を生きた大きな木に触れると、心がゆったりしていく感覚が身体中に湧き上がってくるようです。

世界中どこへでも興味を持った場所へ

大室山をめぐり、もときた林道を引き返しながら、舟津川由利さんにどのようにして、ネイチャーナビゲーターになったのか伺うことにしました。
舟津川由利さんは新宿生まれ、20年前に移住するまではアパレルメーカーで活躍されていました。
筋金入りの都会育ちだった彼女がどうしてネイチャーナビゲーターへと導かれたのか、そのお話もとても興味津々です。
舟津川由利さんは80年代日本のアパレルブランドが元気だった頃から、東京のアパレルブランドで活躍されていました。その頃は、ファッション、カルチャーへの興味が広がって、民族、歴史、人の営みに興味があり自然への興味はさほどなかったのだそうです。伺うと行動力はその頃からのようで、まだあまり日本人が訪れていないキューバに行き、偶然故カストロ首相に遭遇したり、インドに行ってここでも縁あってダライラマに出逢ったり、首刈り族の集落へ訪れたりと世界中のさまざまな民族のもとへと出かけていったそうです。そんな舟津川由利さんが30年ほど前、ちょうど屋久島が世界自然遺産に登録された頃に、後輩からプレゼントされた屋久島の森の写真集を見た時に自然の美しさに心が動き始めたのだそうです。その後、アイヌへの興味から北海道を訪れ、大雪山の麓で旅の途中で買い集めたアイヌの本を読みながら、アイヌにも仏教が持つ自然観と同じものがあるのだと強く感じると同時に、改めて圧倒的な自然に囲まれている時に自分自身が充実した幸福感を感じていることに気づいたのだそうです。その後屋久島へ旅をし、決定的に自然の中で生活したいという気持ちが深まっていきます。

原点に立ち戻りシンプルに暮らす喜び

自然の中で暮らしたいという気持ちが大きくなった舟津川由利さんは、それから日本中旅をして今の場所を見つけることになります。
しかし移住したものの自然の中でできる仕事、しかも自分ができる職種ということでしばらく思い悩む日々を過ごすことになります。そんな頃ハローワークを訪れた時に偶然、あるNPO団体が自然観察インストラクターを募集していることを知ります。それは養成してもらいながら働けるプログラムで、これなら、と早速応募し採用されることになります。その最初に所属した団体には各ジャンルのスペシャリストが揃っていて、舟津川由利さんは半年間みっちり、かなりハードなトレーニングを受けることになります。
今振り返ってもあの時のトレーニングは今の自分への財産になっているのだと彼女は語ります。
その後、また今度はパソコンのスキルと車の免許も、巡り合わせのように学習の機会を経て取得することができ、今ではすっかり他のナビゲーターに頼られる存在へとなっていったのだそうです。

こちらに移り住んでから20年、華やかなファッション業界から大自然の中にフィールドを移した舟津川由利さんは、生き生きと楽しそうに森を歩き語りかけます。
あれほどいった海外も、毎日食べ歩いた美味しい食事も今特に恋しいとは思わず、自分の畑で育てた野菜で作る食事が美味しく、充実しているのだとか、「世界中いったけど、日本の森が一番綺麗で神秘的よ」と目を輝かしながら森の木々たちを見つめて、「でも色々なところに行ったことがきっと私の肥やしになったのよ」とも語ってくださいました。
日本人の心の底に深く刻まれたシンボルのような山、富士山の麓で、人が生きていく、その最も原点へと立ち戻り、都会から訪れる私たちの案内人となってくださっているのかもしれません。

車が置いてある入り口へと近づいた頃、鳥の囀りの中キツツキが木を突く音が聞こえ、耳をすましていたらアカゲラという名前だということを教えてくださいました。周りの鳥たちの囀りも、これは鷹などが来ている時の警戒鳴きであるのだと。私たちには同じに聞こえる鳥の囀りや、かすかな木を突く音なども舟津川由利さんは森の中で聴き分けることができるのだなと感心しながら、人間は本来こうやって自然と共存していたのだろうし、これからも、いつでもその姿に立ち戻ることができるのだなと感じました。
舟津川由利さんのようにぐるりと一周して。

山梨の充電スポット

道の駅なるさわ

道の駅なるさわ

https://www.ja-narusawamura.or.jp/michinoeki/
〒401-0320 山梨県南都留郡鳴沢村 8532-63
電話:0555-85-3366
定休日:なし
利用時間:24時間
利用料:無料
*他にも充電スポットは多数あります。メルセデスEQBには充電スポットの検索機能がついています。

施設データ

NPO法人富士山ネイチャークラブ

NPO法人富士山クラブ

https://fujisan-nature.com/

<urakuプロフィール>
http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とアパレルブランドのプレスやディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)の2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えていく事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。また梅仕事など日本の食文化を伝えるため栽培から生産まで行い、その際に出る剪定枝を使用した草木染め事業もスタートするなど、手仕事と循環をテーマにしたライフスタイル提案も行っています。

<Special Thanks>
PLANET PLAN & CO. (https://www.planetplan-co.com):Tops、Pants

ABOUT CAR

EQB 250

メルセデスの電気自動車ブランド「Mercedes-EQ」初の7人乗りSUVモデル。最大限のスペース効率を追求して生まれたスクエアなボディが特徴。電気自動車ならではの静粛性とトルクフルな走り、高度な操縦安定性を高いレベルで実現している。

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