She’s Mercedes meets Japan / Vol.14

静岡県 熱海市(東海道)前編 釜鶴ひもの店 二見一輝瑠

温泉の名所・熱海ドライブで見つけた絶品干物

日本各地に伝わる手仕事や受け継がれてきた技を次世代へ伝えようと、活動をしている「uraku」の旅紀行。今回は東海道を進み、温泉地として有名な静岡県熱海市へ向かい美味しい干物屋さんを訪れます。

photo/ 濱野智(glife)
text&edit/石崎由子(uraku)
navigator/田沢美亜(uraku)

古くから温泉地として栄えた町

メルセデスで巡る旅、今回は静岡県の熱海市へ向かいます。今回も東京から東海道をどんどん進み箱根も超えて古くから温泉地として栄えた熱海に到着です。
その名の通り、熱い湯が出たので熱海という地名になったとのこと、奈良時代に開湯したという伝説が残っているほど、古い温泉地です。鎌倉幕府の将軍や徳川幕府の将軍に愛された、将軍御用達の湯として重宝されたこともあり、全国的に知名度が高く特別な格付けを持っていたそうです。気候も良く海産物も農作物豊かな地域ということで、リゾート地として、別荘地としても近年は栄えています。
そんな癒しの街に向かう今回の旅のお供は、E 200 Cabriolet Sport、カラーはダイヤモンドホワイトです。軽やかなオープンカーでありながら、ゆったりとした乗り心地がリゾート地へと向かうドライブにピッタリです。
まず最初に向かったのは熱海で5代続くひもの屋さん、「釜鶴ひもの店」さんです。
海の幸の恵みを受けながら、代々引き継いできた思いを伺いました。

熱海の地で続く老舗

「釜鶴ひもの店」本店は熱海の商店街の中ほどでお店を営まれています。この場所の他にも熱海市内に支店が2店舗、飲食店も2店舗営業されています。
「釜鶴ひもの店」の歴史は古く、もともとは熱海漁港の網元だったそうです。重税に苦しむ漁民のために尽くしたご先祖様、釜鳴屋平七の像が熱海の海岸に立てられるほど、熱海のために尽力された方だったようです。
江戸末期に商いを始めた、釜鳴屋平七の三男がこちらのお店の初代に当たるそうで、5代目に当たる現在の当主、二見一輝瑠さんまで、およそ150年ほど続く老舗です。
本店に到着すると、さわやかな笑顔で二見さんが出迎えてくださいました。
五代目当主という重々しい肩書きとはちょっと違う、若々しく優しい笑顔が印象的なかたです。ご挨拶などした後、早速干物加工場へ向かい、まずは干物の加工工程や、素材のことなど詳しく説明してくださることになりました。

熱海産のひもの屋を目指して

加工場は柔らかな日の光がたっぷり注ぎ、ゆったりとした空気感が漂います。
その中で、魚を開く職人さんたちは、手際よく驚くような速さで魚を開いていきます。ゆったりとした光の感じと、手元の緊張感が相反していて、ちょっと不思議な空間です。
この道20年以上のベテランを含む4名の職人さんが、訪れた日に開いていたのは、「大和かます」と「サバ」と言うお魚、市場から買い付けた新鮮なお魚を開き、干物にします。
世の中に流通している干物の9割近くが冷凍原魚を使用しているにもかかわらず、ここ「釜鶴ひもの店」では、ほんの一部を除いてほとんどが地元の市場で仕入れた鮮魚を干物へと加工していること、またその干物加工の工程では、添加物や保存料は使用せず、塩だけで行っているということが、なんと言っても、「釜鶴ひもの店」の美味しさの理由と大きな魅力となっています。
新鮮なお魚を干物にすると、油の酸化が進まず、臭みが出始める前に加工できることが
美味しさを保つ秘訣なのだそうです。
開く量は季節によって違うようで、夏は少なめ、10月から寒い時期は、開く量も増え、多い時は1日1500枚もの魚を開くこともあるそうで、開く魚の種類も年間通して50近くの魚それぞれの魚の特徴に合わせて、開き分けているのだそうです。
地元の市場を周り、毎日新鮮で状態の良い魚を仕入れます。まさに本当の意味での
「熱海のひもの屋」を目指して商品を提供し続けているのです。

開いた後の魚は塩水に浸します。この時の塩分濃度や、つける時間、環境が大切なのだとか、塩の種類よりも塩の使い方で差が出てくるのだそうです。
つけておいた魚を干す前に流水で洗い、表面についた不要な塩分を洗い流します。その後、干し加工のできるお部屋へ入れて干物へと仕上げていきます。
加工室に入れた後も途中で出して状態を見ながら、湿度、温度を調整して美味しい干物へと作り上げていきます。
干物が出来上がると、昔ながらの木箱に入れ梱包作業をするお部屋へ移動します。
同じ建物の中にあるこのお部屋で、一つ一つ丁寧に袋詰めして完成というわけです。

変わり始めた「熱海」に沿ったひもの店へ

現在の当主、二見一輝瑠さんは男ばかりの3人兄弟の末っ子でしたが、上の兄2人は別の仕事に就くことになり、高校の頃から店を継ぐのは自分なのだな、と思い始めたのだそうです。
築地への修行と高級アパレルでの販売経験を身につけて、家業を継ぎ、「今」の熱海にあった店つくりと展開を開拓していらっしゃいます。
熱海は戦後高級リゾート地として大いに賑わった場所です。その頃のひもの屋さんは
小売よりも、旅館、料亭、小料理屋などに卸すことがメインで、自社販売を主流にしているお店はなかったのだそうです。そのため地元市場での魚ではなく、冷凍保存されて
他の地方から仕入れた魚を干物に加工してることも普通のことだったようです。
まず、新たな展開を始めたのは4代目のお父様、卸業ももちろんですが、自社の製品に力を入れていくことを開拓し始めたのだそうです。店舗展開を始めたり、直営の飲食店を開いたりと、変わり始めた新しい「熱海」に沿った展開を試行錯誤してきました。そんな4代目の背中を見て育った二見一輝瑠さんは、さらに時流を読み、「今」と「未来」の熱海への展開を考え実行し始めました。

自社製品に力を入れながら釜鶴ひもの店としての独自性を展開していき、販路を広げた4代目の改革の後、二見一輝瑠さんが行ったことは、冷凍の魚でなく新鮮な魚を干物に加工することと、熱海もしくは熱海近くで水揚げされたこの地域の魚にこだわるということでした。
遠くからわざわざ熱海まで来てくださったお客様に、やはり熱海の魚を食べていただきたい、そうすることで特別感が生まれ独自性も生まれます。またそれが今日、市場で取れた新鮮なお魚となればなおさら特別です。防腐剤なども使用せず塩のみでの加工を行っていますが、その塩の濃度やタイミングや手法などにも徹底的にこだわり、より美味しくいただける加工を追求することにこだわりました。ひものに重要なのは「塩蔵」と「乾燥」とのこと、新鮮で地域の魚をより美味しく、熱海の干物の専門店という特色を色濃くしていきました。その結果、お店には今日は何が旬なの?何がお勧め?というお客様とのやりとりがなされるようになっていったそうです。
また、地域に重きを置き、干物のプロとして商売をされている二見一輝瑠さんは、お魚離れが目立つ現代の子供達に向けて、お魚の開き方教室を定期的に行っています。
その他にも、通り向かいのゲストハウスと連携して朝食のひものを選び、自分で焼くというスタイルを提供したりと、魚を身近に感じてもらおうと取り組んでいらっしゃいます。
今も新しいアイデアがあるそうでまだ内緒とのこと、これからの展開が楽しみです。
こんなところはご先祖様の釜鳴屋平七さんから、変わらず受け継がれた気質なのかもしれないと思いながら、美味しそうなお魚が並ぶお店を後にしました。

 

店舗データ

釜鶴ひもの店 本店

釜鶴ひもの店 本店

〒413-0013
熱海市銀座町10-18
フリーダイヤル: 0120-49-2172
tel : 0557-81-2172
https://www.kamaturu.co.jp/index.htm
定休日:無休
営業時間 : 8:00~18:30
直営飲食店「海幸楽膳釜つる」の駐車場2台分をご利用ください

 
<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とTOKYO DRESS などのプレスやアパレルブランドのディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)の2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えていく事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
ne Quittez pas:Dress
Continuer:Sunglass

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