
人々の生活と町の発展を支えた、川、水路、運河
篠原風鈴本舗で涼やかな江戸風鈴の音色に魅了されたあとは、荒川を渡り、次の目的地へと向かいます。東京は江戸の時代より、鉄道や車の輸送が発展する戦前までは、縦横に水路がめぐらされていて、人々の生活を支えていました。このあたりはその痕跡が残っていて「東洋の水の都」と称された様子が今もかいま見れる地域でもあります。
そんな場所を感じながら、まずは美味しい物をいただこうと、メルセデスGLA180のカルサイトホワイトで、亀戸升本へ向かいます。
亀戸升本と「亀戸大根」という江戸野菜
亀戸升本は、亀戸駅や亀戸天神のほどちかく、亀戸梅屋敷のとなりでお店を構える老舗料亭です。飯田橋にあった造り酒屋の、のれん分けとして、亀戸に開業したのが明治38年、造り酒屋をしながらお弁当や、料理やなども少しずつ始めていったそうです。2000年を前にした頃、リニューアルする事になったのをきっかけに、この地の名物だった「亀戸大根」を使ったお料理を提供していこうと思い、現在の亀戸升本のスタイルへと変化して行ったそうです。
「亀戸大根」とは、江戸時代にこの地に自生していた日本一小さな大根で、文久年間の頃からは栽培も盛んに行われていたようです。しかし江東区周辺の宅地化に伴い、今ではすっかり見られなくなってしまったそうです。
亀戸升本さんはまず、この伝統野菜の復活を試みます。そして現在は安定してお店が使用出来る様に、全国の契約農家さんにお願いしているそうです。「亀戸大根」を使ったお料理のメニューは実にバリエーション豊かで、ランチ、ディナー共に楽しめます。
なんといってもおすすめは「亀戸大根とあさりのお鍋」。あさりのうまみがしみた出汁と、亀戸大根のかぶのような“ほっくり”とした歯ごたえが絶妙なバランスです。
別皿でついてくる、薄くスライスした「亀戸大根」を一緒にいただくと、“しゃきっ”としたさわやかな食感も楽しめます。「亀戸大根」は、普段食卓に上がる大根に比べると、どこか少しだけフルーツを食べている様な感覚が感じられるのが魅力です、“かぶ”のような“梨”のような、でも味は大根というとても魅力的な食材です。
調理の仕方で様々な食感や、味の幅が楽しめるという事がいただいてみるとよくわかります。この他にも、亀戸大根ステーキ、亀戸大根すし、をいただきましたがそれぞれ違った食感とうまみが楽しめます。お野菜中心なのでさっぱりとしていて沢山いただいても身体があまり重く感じない所も安心です。
「水」とともに生きた江戸の人々
おなかを満たしたあとは、少しお散歩してみようと、仙台堀川公園へ。
ここは昔、水路だったところを暗渠化してその上を、区民の憩いの場所の公園へと整備させた場所です。
仙台堀川公園は南北3.7キロメートルあります。南端のあたりには、東西に今も残る水路に公園を整備した横十間親水公園が交差しています。
この辺りを少し散策するだけで、こんなふうに水路や運河の痕跡に出会う事が出来て、江戸時代の人々の生活と知恵がかいま見れる様です。縦横に張り巡らされた水路と、3本の大川、これだけ水路があれば、生活、運輸だけでなく、つりや船遊び、花火などが盛んになったのもうなずけます。
そんなすこしだけタイムスリップを感じさせてくれる公園です。
江戸情緒が残る水辺、柳橋のたもとで
さて、旅の最後にさしかかり、やはりお土産を見つけなければと次に向かったのは、佃煮の老舗、柳橋小松屋さん。神田川が隅田川に注ぐ場所、神田川の最終地点の川沿い、柳橋のたもとにお店を構えて70年余の佃煮屋さんです。
川向こうに船宿小松屋さんという親戚が営んでいる船宿があったり、この神田川沿いは、江戸の風情が残った情緒溢れる界隈です。
柳橋小松屋さんも元々は船宿から始まり、当時柳橋界隈にたくさんあった料亭のお土産用へと佃煮を作っていたそうですが、そのうち柳橋小松屋さんの方が佃煮専門店へと役割分担し始めて、現在のように専門に商いを行うようになったそうです。
そんな柳橋小松屋さんの当主は4代目の秋元さん、笑顔が優しく気さくな方で、佃煮の説明と共に、秋元さんが記憶している昔の柳橋の様子をいろいろ語ってくださいました。
お店の横には佃煮を作る小さな厨房があり、少しこうばしいお醤油の香りが立ちこめています。訪れた日はちょうど大アサリの佃煮を仕込んでいらっしゃいました。
元々は江戸前(東京湾)で取れた新鮮な素材を佃煮にして、柳橋の料亭へ提供していたそうですが、近年では江戸前の素材はすっかり少なくなっている様です。それでも安定して美味しい素材をと、努力され揃えているのは、小松屋さんの佃煮をいただくと、はっきりわかります。味付けは醤油で煮込んだ昔ながらの江戸の味。甘過ぎず、ご飯に合う絶妙な味付けです。穴子だけは江戸前なのだそうですが、穴子一切れでご飯がいただけでしまう美味しさです。パッケージも美しくお土産に是非使いたくなる逸品です。
そんなおいしい佃煮の話と共に、当主の秋元さんが柳橋への思いも語って下さいました。秋元さんが幼い頃までは、まだ柳橋界隈は花街として賑わっていて、料亭やお茶屋が沢山あり、芸者さんなどが行き交っていたとのこと、船遊びも盛んでとても華やかだったようです。しかし今ではすっかりビルが多くなり、町はだいぶ様変わりしてしまったようですが、少しでも江戸の情緒を残そうと、秋元さん達柳橋の老舗の皆さんは様々な活動をしているとの事です。そんな思いがこの佃煮に一緒に込められているのかなと
飴色の艶やかな姿を見ながら暖かい気持ちになりました。
水路と川に育まれた江戸の街を象徴する柳橋の文化は、船宿や、料理屋さん達と共にいつまでも残していきたい江戸風情を肌で感じられる場所なのです。

店舗データ
亀戸升本
東京都江東区亀戸4-18-9
tel:03-3637-1533
http://masumoto.co.jp
定休日:毎月第3月曜日(1月、8月、12月を除く)
月曜日祝日の時は翌日火曜日 定休日
営業時間:平日昼席11:30~14:30(LO14:00) 夜席17:00~21:00(LO19:30)
土日祝日昼席11:00~14:30(LO14:00) 夜席17:00~21:00(LO19:30)
専用駐車場はございませんのでお近くの駐車場をお使いください。

立寄りデータ
仙台堀川公園
東京都江東区北砂6-19-21号先から東京都東陽6-6-6号先
http://www.city.koto.lg.jp/spot/sendaibori.html
専用駐車場はございませんのでお近くの駐車場をお使いください。

店舗データ
季節の佃煮 柳橋小松屋
東京都台東区柳橋1-2-1
tel:03-3851-2783
http://www.tsukudani.net/
定休日:日曜、祝日
営業時間:平日9:30~18:00 土曜9:30~17:00
専用駐車場はございませんのでお近くの駐車場をお使いください。
<urakuプロフィール> http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とTOKYO DRESS などのプレスやアパレルブランドのディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)の2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えていく事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。
<Special Thanks>
BLUEBIRD BOULEVARD : Dress
OLIVER GOLDSMITH(Continuer):Sunglass