She’s Mercedes meets Japan / Vol.19

東京都 大山道 後編 ONIBUS COFFEE 代表 坂尾 篤史

「街のコーヒー屋」が仕掛ける循環のスタイル

日本各地に伝わる手仕事や、受け継がれてきた技を次世代へ伝えようと、活動をしている「uraku」。彼女達が旅のみちみちで出会う日本の美しい風景や物、事、そしてそこに集う人々のつながりを、メルセデスと共にみつめる旅紀行。女性2人ならではのロードストーリー。再出発した旅Vol.19の最終話となる後編は、世田谷区八雲にあるコーヒーショップを目指します。

Photo / 戸松愛  text&edit / 石崎由子(uraku)  navigator / 田沢美亜(uraku)

日々の生活に溶け込んだコーヒー屋さん

お休みしていたShe’s Mercedes meets Japanの再出発となった今回の旅。その最終話となる後編は、前編に訪れた小倉崇さんたちUFCが行う「都市農」が、今後取り組もうと試み始めている、都市の循環システム作りやグリーンインフラの活動を一緒に行なっていこうとしている、ONIBUS COFFEEの代表、坂尾篤史さんを訪ねて、世田谷区八雲にある「ONIBUS COFFEE八雲店」に向かいます。

相模原のハーブ研究圃場を後にし、引き続き小倉さんの案内で、今度は旧大山道を世田谷区に向かって進みます。江戸の頃、相模国大山にある大山阿夫利神社への参詣者が通った道です。
今回も大山道を進むのはMercedes- Benz GLC 220 d 4MATICカラーはヒヤシンスレッドです。
揺れを感じさせない安定感のある走りで、足場の悪い農道も難なくこなし、今度はそのスタイリッシュな姿が映える街中を走ります。
大容量のトランクにはたっぷり荷物が詰み込め、助手席や後部座席など搭乗者全員に気の利いた機能がいくつもあるので、今回のような遠出には大活躍です。
1時間半ほど車で進むと、目的地の世田谷区八雲のあたりに近づいてきました。自由が丘という繁華街が近くにある閑静な住宅街、ゆったりとした空気が流れている場所です。さて快適なドライブを楽しんでいたら、今回の目的地に到着「ONIBUS COFFEE八雲店」に到着です。

穏やかな店内に漂うコーヒーの香り

駒沢オリンピック公園より学芸大学方面へ進んだところに、目黒区八雲と呼ばれる区域があります。その区域の駒沢通り沿いに「ONIBUS COFFEE八雲店」はあります。
お店の隣には大きなロースターのある焙煎場があり、ガラス張りのため中を覗くことができます。
私たちが到着すると、かっこいい革のエプロンをした好青年といった印象の坂尾篤史さんが、ちょっとはにかみながら迎えてくださいました。
店内は木を基調にした落ち着いた雰囲気で、スタイリッシュでスッとしていながらも温かみが溢れています。
まずはコーヒーをいただこうということになり、坂尾篤史さん自ら、私たち全員のコーヒーを淹れてくださいました。
豆を弾く音と、お客様の会話が重なる店内には、コーヒーの香りが漂い心地よい時間が流れています。私たちが訪れたのが、秋半ばの昼下がりということもあったのか、本当にのんびりとした暖かい雰囲気の中、お話を伺うことになりました。
前編でも少しご紹介しましたが、自らを「街のコーヒー屋さん」と呼ぶ坂尾篤史さんは、小倉さんと共に新たな取り組みを今年から始めています。今回はその話を中心に彼らが繋いでいきたいと考える未来の姿を伺いました。

毎日出る、抽出後のコーヒーの使い道

彼らが新たに取り組み始めたこと、それはコーヒーを淹れた後の残りかすをリユースして、培養土を作り販売をしていくという、都市部での循環システムを作ることです。

現在5店舗を都内で展開しているONIBUS COFFEEですが、(ホーチミンにも1店舗あります)この抽出後のコーヒーは毎日出てしまいます。もともとコーヒー豆を生産している農場でも、豆の赤い皮は発酵させて堆肥としていることを知っていたこともあり、それならばこの使用後のコーヒもリサイクルして土に戻すことができないかと坂尾篤史さんは、考えていたそうです。
機会があるごとに知り合いの農家の方などに相談を持ちかけてはいて、取り組めそうだとのお返事はいただいていたのですが、その方達は東京から離れた場所にいる方ばかり。できたら東京の中での循環を目指したいと思い、ためらっていたところ、都市農に取り組む小倉さんたちの存在を知り、早速連絡をして、昨年会うことになります。そうなると相手は小倉さんです、話はどんどん進み、商品化が実現したのだそうです。

この培養土は、三鷹にある鴨志田農園に製作をお願いしていて、抽出後のコーヒーと、成蹊大学の落ち葉、鶏糞、米糠、籾殻、壁土などを混ぜ合わせ、3ヶ月ほど寝かせて発酵させます。
発酵したものは堆肥となりますが、堆肥販売には免許が必要なので、ここに黒土やピートモスを加え、培養土(CULTURE SOIL)として販売しています。
使用している素材が有機のもので、しっかり発酵させて生きた培養土なので、安全で安心して使用できます。パッケージもコーヒー豆を詰めている袋と同じデザインで、一見培養土とは思えないスタイリッシュな見た目が魅力的でもあります。
このコーヒー培養土の製作をきっかけに、坂尾篤史さんと小倉さんは、未来の都市作りのために、様々な取り組みを考えていらっしゃるそうです。
その取り組みのお話をする前に、まずはONIBUS COFFEEのことを少しご紹介します。

街のコーヒー屋さん

ONIBUS COFFEEの名前の由来は、ポルトガル語のONIBUS、「公共バス」からきています。
バス停からバス停へ、人と人をつなぐ場所でありたいという坂尾篤史さんの考えから始まりました。前述もした「街のコーヒー屋さん」というワードが坂尾篤史さんの言葉にはたびたび登場します。
日常に溶け込んだ一杯を提供したい、人と人をつなぐ場所でありたいという思いが凝縮した言葉なのかもしれません。
そんな坂尾篤史さんは意外なことに、コーヒーのことは特に好きではなかったのだそうです。
もともと実家が大工だったということもあり、建築関係の仕事をされていたのですが、何かしっくりこない気持ちがあり、20代の半ば、広い世界を見てみようと思い立ち、バックパッカーとなって、オーストラリアを訪れます。そこで、コーヒーへの印象が大きく変化したのだそうです。
そのころの日本には、まだコーヒースタンドショップがあまりない時代、ところがオーストラリアでは毎朝カフェに行き挨拶をしてコーヒーを買い、1日が始まっていくということが、日常となっていて、そのスタイルがとてもカッコ良かったのだとか。
その体験から、帰国後2年ほどコーヒーショップで修行したのち、奥沢にONIBUS COFFEEをオープンさせることになります。

お客様と街に届けたいこと

そんな「街のコーヒー屋さん」でありたいという気持ちが、街のために何ができるか、という思いを強くしていったのだと思います。
おいしいコーヒーを届けたい思いから、仕入れているコーヒー豆のほとんどは、現地で視察したコーヒー豆のみを使用しています。エチオピア、グアテマラ、ホンジュラス、ルワンダなどなど、日本から遥か遠くの場所まで、美味しく、安全な原料で、心からほっとできるコーヒーを提供し続けています。
また、アイスドリンクに使用しているストローは「4NATURE 」より仕入れていて、“土にかえる”というさとうきび素材のものを使用しています。強度もプラスティック並みにあり、使用していて違和感がありません。
ONIBUS COFFEEはできる限り、循環していけるような取り組みをすることによって、心安らぐ日常を提供し、より良い街作りに参加し続けているのです。

また、お店の内装にもその思いは現れていて、訪れた八雲店の至る所にリサイクルした木材や、扉などが使われています。なんでも千葉の酒蔵さんの建物を取り壊す時にいただいてきたのだとか。実家が大工さんということで、加工を良い具合に加えて内装にアクセントを与えています。使用されてきた物たちの味が、温かみとなって空間に漂っているようです。
またお店の2階はトレー二ングルームとゲストルームになっていて、バリスタのトレーニングや研修に使用されたり、イベントを行う際の宿泊場所となっていたりします。
ここは、坂尾篤史さんの思いと意志がギュッと詰め込まれている場所なのだなと感じました。

「土」を見直し生活を見直す

坂尾篤史さんと小倉さんの取り組みはコーヒー培養土の商品化から始まり、さらに広がりを見せようとしています。
それは来年オープン予定の「ONIBUS COFFEE自由が丘」の店舗で畑を始めることと、現在培養土製作をお願いしている、鴨志田農園さんから培養土の作り方を教わり、培養土工場を新店舗に隣接させて作っていくということです。街で出された廃棄物は、土にかえり、その目の前の畑で利用されるという循環です。
2人は、まずは試験的に「ONIBUS COFFEE中目黒店」で、少しずつトライして行こうかと相談されていました。

生活から出るゴミや廃棄物のほとんどを(90%以上だったと言われています)リサイクルし循環型の生活をしていたという江戸の街、その精神がここにまた蘇るかのようです。
江戸の長屋のようなつながりを生み出しているUFCの活動と、「街のコーヒー屋さん」は同じ役割をそれぞれの場所で行っていて、今つながり、協力して、さらなる広がりへと発展し始めています。そしてそこには、テクノロジーの力も借りながら、江戸の街から受け継がれた知恵を進化させた、新たな循環型の街の姿が生まれようとしています。

「土」というのは植物を育てることだけでなく、地球の環境保全にとっても大切な物質です。
地球は水と緑と土の星です。環境破壊が進む今、土の衰えもかなり問題視されています。
生きた良い土は炭素を蓄え、植物を育て良い水を作ります。衰えが進むと砂漠化につながるなど、大きな問題となります。
また「土」は人の体では「腸」と同じといわれていて、様々な菌や微生物によってバランスが保たれています。五行雑節でも、土用は腸を整える時で、この節に「土」という文字を用いているのは、私たちの祖先がそのことを解っていたのだと思います。

未来に向かっての取り組みを始めた2人が、私たちの足元ともいえる「土」に注目し、見直し、広め、取り戻そうとしている、ということをとても興味深く感じます。
2020年は様々なことがこの地球に起こりましたが、私たちが改めて「土」を見直すということが、新たなスタートとなるのかもしれません。
坂尾篤史さんと小倉崇さんが2021年にこの東京に仕掛けるグリーンインフラを楽しみにしながら、2020年最後のお話は締めくくります。
今年も読んでいただきありがとうございました。
来年もよろしくお願い致します。

店舗データ

ONIBUS COFFEE

ONIBUS COFFEE

〒152-0023東京都目黒区八雲4-10-20
tel: 03-5701-9349
https://onibuscoffee.com
定休日:不定休
営業時間 : 9:00~18:00
専用駐車場はありません

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とプレスやディレクションを
務める石崎由子(いしざきゆうこ)2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えて行く事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
GARMENT REPRODUCTION OF WORKERS:overall、vest
Continuer:Sunglass

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