She’s Mercedes meets Japan / Vol.19

東京都 大山道 中編 Japan Herb Science主宰 石井智子

環境を整え、見守り土地に根付かせるハーブ作り

日本各地に伝わる手仕事や、受け継がれてきた技を次世代へ伝えようと、活動をしている「uraku」。彼女達が旅のみちみちで出会う日本の美しい風景や物、事、そしてそこに集う人々のつながりを、メルセデスと共にみつめる旅紀行。女性2人ならではのロードストーリー。前編に引き続き、中編は神奈川県相模原にあるハーブ研究圃場を目指します。

Photo / 戸松愛  text&edit / 石崎由子(uraku)  navigator / 田沢美亜(uraku)

都心部から1時間半の場所に広がる田園風景

再出発した前編に引き続き、中編は恵比寿から大山道を進み、相模原へ向かいます。
前編に訪ねた、小倉崇さんが「都市農」を実践するにあたって、色々と影響を与えてくださったというJapan Herb Science(以下、JHS)主宰の石井智子さんにお会いするため、相模原のJHS 研究圃場を訪ねます。
小倉さんの案内で江戸の頃、相模国大山にある神社への街道として栄えた、旧大山道を進むのは、Mercedes-Benz GLC 220 d 4MATIC、カラーはヒヤシンスレッド。スタイリッシュな姿とは裏腹にオフロードでも活躍する頼もしい車です。今回向かう農道などの舗装されていない場所でも、サスペンションが効いているので、ダイレクトに揺れを感じず快適なドライブが楽しめます。
トランクも大容量でたっぷり荷物が詰め込めたり、助手席にもシートヒーターとシートベンチレーターが付いていたりと、搭乗者全員に嬉しい機能がいくつもあるので、趣味やレジャーなどで家族や仲間たちと一緒に遠出するときなどにもぴったりです。
恵比寿から1時間半ほど車で進むと、周りの様子はすっかり変わってきます。この辺りは相模湖など周りにいくつもの湖が点在し、のんびりとした田園風景が広がっています。快適なドライブを楽しんでいたら、今回の目的地JHS ハーブ研究圃場に到着です。

尊重し、見守り、導く、ハーブの母のような姿

小倉さんの案内で研究圃場に到着すると、石井智子さんはちょうど作業をされていました。
そこは、一般的にハーブ園と言われて想像するようなところとは明らかに違い、心地よい風が通り抜け、うっすらと優しい香りが漂う気持ちの良い場所で、「ここに来ると立っているだけでも癒されるんだよね」という小倉さんの言葉とおり、なんとも言えない良い気に満ち溢れていました。
見た目も整備された可愛らしいハーブ園とは違い、草原といった様子の場所ですが、お話を伺う前からここにあるハーブの持つエネルギーの違いを感じられました。
私たちの姿を見つけ、笑顔で出迎えてくださる石井智子さんは、スレンダーな体にショートカット、飾らない笑顔と優しい眼差しが魅力的な、凛とした印象がある女性です。
お会いした瞬間から、その魅力とハーブ園の雰囲気に私たちはすっかり心を奪われてしまいました。

前編でも少しご紹介したように、小倉さんの都内のハーブ農園も、JHSから指導していただいたり、株を分けていただいたりしているそうです。またUFCの相模原農園も近いということもあり、小倉さんは定期的に体調に合わせたハーブティーを処方していただいているとのこと。
作業の手を一旦止めてくださった石井智子さんは、研究圃場のことや、それぞれのハーブの紹介をゆっくり丁寧にお話ししてくださいました。

一般的にハーブが育つのに適している土壌はアルカリ性と言われています。酸性の土壌が多い日本での栽培はもともと難しいとされていることが通念です。
しかし石井智子さんは10年かけて土壌や環境を改良して、この場所にハーブが自生するように整えてきたそうです。
ハーブを育てているのではなく、彼ら(ハーブ)が自分たちで生きて、この地に根付くように、環境を整えて見守り、手助けをしているのだと、私たちに語ってくださいました。
そのためここでは、ハーブと言われる有用植物の中で、多年植物や樹木の種類にあたるものは他で見たことないくらいの大きさに育ったものが目立ちます。
一年植物にあたる種類は自然に種を落としハーブが動きたいように自由にさせて自生させています。
ハーブの生きる力を尊重し、時折調整し、良いエネルギーが発揮できるように、それぞれのハーブのための環境を見極め、見守る石井智子さんは、まるでハーブの母のような存在なのではと感じながら、お話に耳を傾けていました。

100種類ほどのハーブたち

ハーブと日常的に私たちは呼んでいますが、その定義は一般的に料理の香り付けや保存料、薬、香料、防虫などに香りに鎮静・興奮などの作用がある有用植物のことを指します。
この場所にはトータルで100種類ほどのハーブが季節によって入れ替わりながら存在しています。
よく聞いたことのあるローズマリーは8種類、ミントは13種類と、それぞれ香りも葉の様子も少しずつ違い、その数だけでも驚きます。
私たちがこの研究圃場を訪れたのは秋半ば、その時にこの場で見ることができたのは、バイテックス、バーベイン、ベチバー、レモングラス、リコリス、エルダーベリー、メドウスウィート、セントジョンズワード、エキナセア、ホウズキ、ティーツリーなどなど・・・。
私たちにわかるようにと丁寧に一つずつ、説明してくださいましたが、次々と出てくるたくさんのハーブのお話は聞き取るのがやっとで、この環境作りも驚きでしたが、膨大な知識の量には、もはや圧巻といった感じでした。

年に4回、新しい季節が来る少し前にお花が咲くローズマリーは、「季節を呼ぶハーブ」と言われている。女性のホルモンを整えるバイテックス。ベチバーは地下茎が70cmほどあり、地上部分も2m超えている大きさはここでしか見られない。ホウズキはシューフライと言われて蝿取り草だ。メドウスウィートは鎮痛坐作用がある。精神安定に効くセントジョンズワード。などなど詳細についてはここでは書ききれないぐらいの情報でした。
詳しくはぜひ直接JHSのワークショップに参加して、体感していただきたいと思います。

何もない場所にも命が存在している

お話の途中で、何も生えていない場所を指差し、「ここにはカモミールの種がたくさん落ちていて、姿は見えないけれど、カモミールがいるの」と話されたことはとても印象的でした。
ハーブの生きたいように自生させ、自然淘汰もできるだけ任せているので、この場所には至る所で目に見えないハーブの待機している場所があるのだなと感じました。
また、風通しが命のハーブは、私たち人間には風通しが良いと感じても、違う場合もあるため、土から20cmぐらいの部分に顔を置き、ハーブの目線になって風を確認したりするのだそうです。

もう一つ印象的だったことがあります。それは風通しや土壌の状態確認には、その場所に生える雑草の様子も大切だという話をしていた時に、雑草をエキストラグラスと呼ばれていたことです。
雑草という言葉は人間の都合によってつけられた名前で、それぞれ草花は生きていて、その一つ一つに名前があり、存在価値があるのと、北里大学の先生から言われたそうです。そのネーミングには、一同納得で、その瞬間にはハーブだけでなくこの研究圃場に対する、石井智子さんの母性を感じました。

音楽に酔い、ハーブに酔う

ハーブの母のような石井智子さんですが、最初からハーブ栽培、処方を行うハーバリストではありませんでした。
もともとは音楽の世界にどっぷりと浸り、音楽で生きていく、というつもりで青春時代を過ごしたのだそうです。2歳から始めたオルガンを極め、音大で教鞭を執るにまで至りますが、夢を叶えたのも束の間、残酷な運命が石井智子さんを襲いました。
極めて突き進む性格だったからか、弾きすぎがたたり、頸椎を痛めてしまい、両手両足に痛みと痺れが出るようになり、オルガンが思うように弾けなくなってしまったのです。
プロ意識が高い石井智子さんはこれではいけないと思い、音楽の道を諦めることになります。
なかなか病状も良くならず、気持ちはどん底の中でハーブに出会い、生活に取り入れてみると、少しずつ成果が現れはじめました。そんな経験もあり、どんどんその魅力に取り憑かれていきます。
もともと、アート的な意味合いで、フラワーアレンジなどは興味があり、少しだけハーブを育てたり、作品を作成したりしていたのだそうですが、科学的な観点でハーブを見始めてみると、また新しい世界を見つけたようで、すっかりハマってしまったそうです。
その後、北里大学の薬学部研究所との縁がつながり、そこで様々な勉強と実験を行い、知識をどんどん深めていきます。ここまで来れば、行動も早い石井智子さんが、ハーバリストとして門戸を開くには時間がかかりませんでした。
必要な資格なども取り活動を始めた頃、原料となるハーブに農薬が使われていたり、精油に工業用の精油が使われていたりする流通を知ってしまいます。
また様々な団体に阻まれることなく、ボーダーのないフィトセラピー(植物療法)全体を含む研究の場でありたいと考えたこともあり、耕作放棄地を借り受けて土作り、環境作りから行い、ハーブを一から育て始めることになります。
農業は全く経験がなく試行錯誤をしながらの10年。今では訪れた瞬間に魅了されるような、素晴らしいハーブ生態系の“場”となっています。

植物に国境はない!ワンダーランドのような実験室

研究圃場での作業が終わり、次は場所を移動して、ラボへ向かいます。ここではハーブを乾燥させたり、精油やハーブウォーターを作ったりしています。
研究圃場がアウトドアで、ラボはインドアの実験の場所といった感じで、採取した様々なハーブと、蒸留器や、ビーカーなどを見せていただくと本当に実験室のようです。

石井智子さんは現在どの団体にも属していません。世界中に同時多発的にあり、太古から伝わる伝承医学そのものに興味があるので、自由な発想でそれぞれの植物療法の研究をしていきたい、植物には国境はなく、JHSでは様々な伝承を検証し、それが誇張してしまった御伽話なのか、正しい実話なのかを検証し、後世に残していきたいと語ります。
また、現代科学もこの植物療法や、伝承医学の延長線上にあるのにもかかわらず、自然を大切にせず、無視した感覚で暴走していることや、その感覚が欠如しているからこそ、ハーブの抽出物が有機由来の化学薬品であることの認識が薄く、ハーブの世界で頻繁に見られる誤った原料の使用方法などなど、問題がたくさんあるとおっしゃいます。
植物療法という知識がきちんと伝えられるように活動していきたいのだそうです。

ラボではハーブや精油の話から、土の中の菌の話までにおよび、話が尽きるどころかより深く掘り下げられていきました。いろいろ語ってくださるその眼差しは本当にワクワクしていて、ハーブを育てるときの母性とは違う可愛らしさが溢れていました。インドア、アウトドアの2箇所の実験室をワンダーランドと呼びながら、嬉しそうに笑う顔は少女というか少年のようでした。
何事にも自分で行動し、その時感性が動くことで、また先へとどんどん進んでいく、と語る石井智子さん。オルガンの鍵盤の上を、自由自在に動き回っていた時と、その姿勢や眼差しは同じなのかもしれません。
音楽にも国境はなく、草木にも国境はありません。石井智子さんが語り実践し伝えている、ボーダーをもたない感覚や、自然から私たちが受け取り続けている大切なことが、小倉さんへそのまま引き継がれ、違った形を生み出しているのかもしれないと思いながら、別れを惜しみつつラボを後にしました。
帰り間際に石井さんが私たちに作ってくださったハーブのブーケが車の中で良い香りを漂わせていました。

店舗データ

Japan Herb Science

Japan Herb Science

〒252-0158 神奈川県相模原市緑区又野1-6
Mobil 090-5302-5599
Email jhs_since2007@japan-herb-science.com
http://japan-herb-science.com/herb/

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)と
アパレルブランドのプレスやディレクションを勤める石崎由子(いしざきゆうこ)
2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えて行く事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
GARMENT REPRODUCTION OF WORKERS:overall、vest
Continuer:Sunglass

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