She’s Mercedes meets Japan / Vol.18

東京都 品川から浅草(東海道) 後編 幇間 櫻川米七、櫻川七太郎

江戸時代から続く「幇間」という粋な職業

日本各地に伝わる手仕事や、受け継がれてきた技を次世代へ伝えようと、活動をしている「uraku」、彼女達が旅のみちみちで出会う日本の美しい風景や物、事、をメルセデスと共にみつめる旅紀行。女性2人ならではのゆったりとしたロードストーリー。東海道を品川から浅草をめぐる旅後編は、浅草へ到着です。今も残る浅草のお座敷芸人さんを訪ねます。

photo/ 鬼澤礼門 text&edit/石崎由子(uraku) navigator/田沢美亜(uraku)

東京の一大観光地「浅草」

品川で美しい染織物を見て、品川宿で老舗の草履屋さんで職人技に感動した後、私たちは東海道を進み日本橋を経由して浅草は浅草寺の裏手にある浅草見番へ向かいます。
旅の最後を締めくくる、お座敷芸人さんに会うためです。
近年増えた海外からの観光客のおかげで、平日でも浅草は、たいそう賑わいを見せています。
そんな国際色豊かに賑わう町並みを眺めながら、走る旅のお供は前回に引き続き、Mercedes-AMG A 35 4MATIC Edition 1 。日常使いが出来るAMGとして発表された、新しい35シリーズで、モダンとクラッシクさの残る町並みの中でも馴染むスタイリッシュなボディと、デニムブルーというカラーが魅力的です。私たち日本人が昔から馴染み深い藍色にも似た、粋なカラーです。
品川宿と同じようなお店が立ち並ぶ浅草の街中でも問題なくスムーズに小回りがきき、コンパクトながら力強い馬力で走ります。街中の運転にはとても助かる音声認識で目的地やパーキングなど戸惑うことなく探せるのでとても快適です。
さて、浅草の街を抜け裏手に入ったら今回の目的地「浅草見番」へ到着です。

風情残る浅草寺の裏手

浅草寺の裏手、観光客もまばらになり、料亭など点在し落ち着いた風情のある街並みが残る場所に「浅草見番」はあります。江戸時代の位置的には浅草から吉原方面へ少し進んだ辺りです。
提灯がずらりと並んだ特徴的な建物はここが特別な場所だなという雰囲気を漂わせています。
こちらの場所で、今回お会いする予定の芸人さんと待ち合わせです。
「浅草見番」というと、ほとんどの方がピンとこないかもですが、ご存知の方でも芸妓さんを、界隈にある料亭の座敷や料理屋へ采配して送り出すところ、との認識かと思います。
その役割は確かに間違いではないのですが、実はこちらでは着物やお化粧で着飾った美しい女性の芸妓さんだけではなく、「幇間」と呼ばれるお座敷の芸人さんも、かつてはたくさん抱え、お座敷などへと送り出していたのだそうです。今回お会いするのはその「幇間」を生業とする、櫻川米七さんとお弟子さんの櫻川七太郎さんです。今では日本に6名、しかもこの江戸にしかいないという、とても貴重な職業です。
中に入ると、こちらに登録されている芸妓さんのお名前の提灯が、またまたずらりと並び、ぐっと雰囲気が増してきます。この建物の2階は、登録されている芸妓さんや芸人さんが、普段お稽古をしたり、踊りの会をしたり、たまには落語会を行ったりするお座敷があります。
今日はそこで稽古されているお二人に少しお時間をいただいての訪問です。2階へ上がると素敵な和装のお二人が待っていてくださいました。

滑稽さと優美を併せ持つ動き

よく通る声と笑顔が印象的な櫻川米七さんと、日本で初めての女性幇間となった弟子の櫻川七太郎さんは、「幇間」というお座敷をホームグラウンドとする芸人さんです。
今回お話をお伺いする櫻川米七さんの師匠である悠玄亭玉介さんが活躍していた昭和初期の頃までは全国に480人ほどいたそうですが、お座敷を持つ料亭の減少や、会食のスタイル変化に伴い、今ではたったの6名のみ、しかもこの東京(江戸)の「浅草見番」にしかいないそうです。
本来は男性のみだったそうですがそのような激減ぶりを見ていた櫻川米七さんは、幇間芸を残すためということもあり、女性の希望者を受け入れることにしたのだそうです。
詳しいお話を伺う前に、まずはその幇間芸の一部を披露していただくことになりました。
最初はやはり師匠の櫻川米七さんから、「幇間」といえばの屏風芸「たいこ屏風(びょうぶ)」です。

こちらの演目は落語の「幇間腹(たいこばら)」をベースにしていて落語家さながら、語りながら屏風を使って行う一人芸です。まるでもう一人いるかのような絶妙な動きに驚きながらも、とにかく動きがコミカルで滑稽で、それでいて洒落ていて、想像以上に大笑いをしてしまいました。落語のお話は知っていたのですが、こんな感じで見せていただくと、お話が立体的に楽しめて違った魅力を感じました。何よりもコミカルな動きなのに所作がとても美しく流れるようで、粋な動きとはこういうことかなと感じながら大笑いをしていました。
次は弟子の櫻川七太郎さんとともに、組踊を見せていただきました。櫻川七太郎さんが可愛らしい坊主になりキュートさを残したコミカルさは何とも言えず独特で、また櫻川米七さんの踊りの滑稽ぶりが面白くてまたまた大笑い。それでいて2人とも、どの形も綺麗に決まっているので驚きます。
実は結構な運動量なのではと思いますが、さらりときれいに見せるところは、普段見えないところでの努力をたくさんしていらっしゃるのだなと感じずには入られませんでした。

お客様を楽しませる裏方の心意気

肩の力が抜けて、意識などせずにさらりと芸をこなしているように見える櫻川米七さんですが、芸人としてのスタートは落語家からとのこと、五代目柳家小さん師匠へ入門し、4年ほど務めてから悠玄亭玉介さんの元へ入門、「幇間」としては45年、芸人としては49年のキャリアを持つベテランです。落語家になる前は「幇間」という職業すら知らなかったそうですが、落語家時代に幇間芸を目にすることがあり、粋でかっこいい姿を見て、自分はこちらの方がやりたいことだと感じ、転身したのだそうです。とはいえ、その頃は既に花柳界の衰退は始まっていて、45年前の時点で幇間は13人しかいらっしゃらなかったそうです。
あまり馴染みのないこの職業、普通の生活をしていると知ることがない職業ですが、「幇間」さんとは大雑把に言うと、お座敷や、宴会場専門の男性芸人さんです。お座敷には歌や踊りを披露したり、お酌をする綺麗な芸妓さんがいらっしゃいますが、その美しい芸とは違い、お客様を楽しませる、芸妓さんの芸の間をつなぐ、お話を盛り上げるという役目を担っています。またご贔屓の旦那衆の遊びのコーディネートなども昔は行っていたらしく、信頼している「幇間」へお財布を預け、お客様の連れてきた方々と、お客様を楽しませることを完全に任せられていたりもしたのだそうです。
始まりは元禄の頃だそうで、吉原などで活躍されていたそうです。
そういえば、落語の中でも若旦那をひょうひょうとエスコートする「幇間」さんがよく登場します。
芸だけでなく、総合的な統括力が必要でありながら、表に出過ぎない職業なのだなと感じ、お座敷という世界の絶妙で、美しいシステムに感心してしまいました。

未来へ引き継がれる幇間芸

お弟子さんである、櫻川七太郎さんが入門したのは12年前、10年前にお披露目をして今では立派な女性初の「幇間」を務めています。櫻川七太郎さんは学生の時「かっぽれ」という踊りの大道芸を行っていたそうです。その時にこの職業を知り、大好きな「かっぽれ」を踊りながらお酒も飲める職業があるなんて、自分にぴったりと感じ櫻川米七さんの元へ入門したのだそうです。
彼女の師匠である櫻川米七さんも、女性であるからといって特に問題はないと語ります。
今ではお座敷も少なくなり、幇間芸を継承していくことも大切な仕事となってしまったことも、より昔より性別のボーダーを感じさせなくなったのだそうです。
とはいえ、櫻川米七さんたち男性の出す、じわっとくる滑稽さは女性幇間に表現するのは難しいのだそうです。それでも彼女の得意な幇間芸を伸ばしていけばいいのではと、優しく微笑みながら語ってくださいました。きっと芸だけでなく、櫻川米七さんの時代に合わせた柔軟な感覚が、櫻川七太郎さんへ受け継がれ、幇間芸を守っていくのかもしれないなと感じました。
また、最近ではスクールのような形で幇間芸の踊りなどを、一般の方に教えたりもされているそうで、幇間芸継承の試みとして様々な活動を始めているそうです。

江戸文化が生んだ「洒脱」な存在

最後に、着替えをしたり、道具をしまっていたりする控え室も少し見せていただくことになり1階へ移動します。
そこには幇間の半纏や、着物、手ぬぐい、小道具、お三味線などがたくさん置かれていました。
ここは、華やかな舞台とも言えるお座敷の裏方、楽屋みたいな場所だなと感じると同時に、お客様を楽しませるという晴れの舞台の裏で、お稽古などを含めて様々な努力をし、またその事を全く感じさせずに滑稽な姿を見せ笑顔で振舞っている、その背中の粋なかっこよさを感じました。
粋ですね、という私たちの言葉に、我々は粋ではなく「洒脱」でないといけないのです、粋だとカッコよすぎちゃうのでね、と語ってくださいました。
「洒脱」その言葉はまさに幇間にぴったりな表現だなと感じました。しっかりした芸を持ちながらも、わざと崩し品格を残しながら滑稽に演じて見せ、気遣いや目配りには抜け目なく、それらの動きをさらりと無理なくこなしてしまう。
存在そのものが、江戸文化の生んだ、粋な職業なのだなと感じました。
時代が移り、女性が加わっても、場を見て相手を見て心の機微を読み取り、柔軟にさらりとこなしていく「洒脱」な振る舞いを、未来へ残していけたらなと強く感じながら、2人の笑顔に見送られながら浅草を後にしました。

店舗データ

浅草見番

浅草見番

〒111-0032東京都台東区浅草3丁目33−5
tel: 03-3874-3131
fax: 03-5603-2400
http://asakusakenban.com/index.html
定休日:日曜日、祭日
営業時間 : 10:00~22:00
専用駐車場はありません

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)と
アパレルブランドのプレスやディレクションを勤める石崎由子(いしざきゆうこ)
2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えて行く事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
ROPE ETERNEL:Pants,Shirt,Knit
ROPE:Coat
Continuer:Sunglass

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