She’s Mercedes meets Japan / Vol.17

静岡県 焼津市(東海道)中編 油屋 大西美那子

漁師のおやつとして愛された味噌饅頭

日本各地に伝わる手仕事や、受け継がれてきた技を次世代へ伝えようと、活動をしている「uraku」のロードストーリー、今回は東海道を進み、志太平野の焼津市にある老舗和菓子屋「油屋」を訪ねます。

photo/ 戸松愛 text&edit/石崎由子(uraku) navigator/田沢美亜(uraku)

豊かな漁港、焼津の郷土おやつ

焼津市の「曽根弓具店」のすぐ近く、歩いて3分ほどの場所に「油屋」はあります。
焼津港が近いこの場所で明治18年から和菓子屋を営む老舗で、この辺りの漁師のおやつとして愛されている“みそまん”(味噌饅頭)が自慢のお店です。
前回に引き続き旅のお供は、smart forfour BRABUS Xclusive、カラーはイエローです。小ぶりなコンパクトカーなので、街中の小さな路地をスムーズに動きます。駐車スペースなどでのストレスも感じないところは、女性ドライバーには安心かもしれません。
全国有数の水揚高を誇る焼津漁港は焼津港、小川港があり、江戸時代はカツオ漁で
栄えてきましたが、現在ではマグロ漁も盛んで、日本のマグロの水揚高の3分の1をしめ、日本一を誇ります。
長い間海で過ごすことが求められる、漁師の多いこの街では、海で漁をする時のおやつにと、皮に味噌や醤油を練り込み塩分を多くした“みそまん”が愛されてきたようです。
今回はその“みそまん”を作り続けている老舗「油屋」の6代目を引き継いだばかりの若女将を訪ねて、老舗の看板を引き継ぐ思いを伺います。

134年間、地元に愛されたお饅頭

「油屋」を訪れた日はお彼岸が開ける日とあって、お店にはあんころ餅を求めていらっしゃるお客様がひっきりなしに訪れていました。そんな忙しいところ、私たちの訪問を快く迎えてくださった6代目を引き継いだばかりの若女将、大西美那子さんは優しい笑顔で少女らしさも感じる魅力的な女性です。
想像よりも若々しい女将にお会いして、私たちはより「油屋」を引き継いだ経緯が気になっていました。
お店も午後に入り少し落ち着いたということで、まずは自慢の“みそまん”を試食させていただきました。
“みそまん”はこの辺りの郷土おやつなのですが、「油屋」のそれは他のお店のものとは違う膨らまさない皮と、中の白餡が特徴なのだそうです。
小さめのサイズは女性には優しく、また男性には一口サイズで食べやすく、確かに船の上で気軽に食べることができるのだなと思います。皮には醤油などで塩味を効かせてある味付けで、中の白餡もさっぱりとした甘さなので、甘いものが得意ではないという方にも好まれるそうです。またこの皮が他とは違い、膨らまさず硬めながらも、ややしっとりもっちりしていて、癖になりそうな食感です。中の餡と皮とのバランスも絶妙で、一つ、二つと食べ進められてしまいます。加えてお値段も一つ70円とお手頃なところも魅力的です。

職人の技を引き継ぐという難しさ

“みそまん”を美味しくいただいた後は、その工程を見せていただくことになり、裏の作業場へ向かいます。
綺麗に整頓された作業場は、大西美那子さんの心が反映されているかのように、清潔感と可愛らしさが見え隠れする空間です。
作業途中、蒸す前の“みそまん”が番重の中に並んでいました。先代の頃からお手伝いしているスタッフの方が、小麦とザラメ、醤油などで作られた皮で、白餡を包んでいきます。大西美那子さんにとっては大先輩となる方なので、本当に助かっているのだそうです。子供の頃から手伝ってきたお店とはいえ、実際中に入ってみると、わからないことだらけ、こんなことならもっと色々、聞いておけばよかったと、日々思っていらっしゃるのだとか。皮をつくる時の小麦に入れる水の量だけでも、その日の温度、湿度、気候によって違っていたり、また自分の体温ですら、こんなにも伝わり影響するのかと、毎日発見と勉強の繰り返しなのだそうです。
自分たちとあまり変わらない世代の女性の若女将の奮闘記をうかがっていると、もっともっと応援したくなってしまいました。

自分にしかできない事

現在、元気いっぱいに「油屋」を切り盛りしている若女将、大西美那子さんは、先々代の姪にあたり、先代は従姉妹になります。子供の頃から訪れて手伝いを重ねてきたこともあり、先々代がご存命の頃から、跡継ぎのお話をなんとなくされていたのだそうですが、その頃はまだ若く、真剣に考えてはいなかったようです。その後時が経ち、跡を継いだ先代の体調の関係で、いよいよ本格的に跡継ぎのお話をされるようになった頃、大西美那子さんは保育士としてキャリアも積み、施設長まで勤め、海外で働くというお話も出ていた頃だったそうです。自身の夢だったことやキャリアの事もあり、随分悩み、考えたそうですが、最終的には「油屋」を引き継ぐことを決心されました。
当時、横浜に住まいを構えていたので、引き継ぐということは、生活環境も変えるということになります。そんな大きな決断をした決め手とは、何だったのでしょうか、
と尋ねると、明治から続くこの「油屋」を引き継げるのは自分しかいない、という思いなのだ、とおっしゃっていました。自分で希望していたとはいえ、海外での保育の仕事は私がいなければ、代わりがきっといるのではないかという考えに至ったとのことでした。ここは閉めてしまったら、もう本当におしまいです。この場所を継ぐことが出来るのは私だけなのでは、と強く思ったのだと、覚悟を感じる口調で話してくださいました。

ほっとさせる味

覚悟を決めて焼津に移り住んだ大西美那子さんでしたが、やはり難しいことだらけで日々、勉強中なのだとか、今は先代の頃からお手伝いしてくださるスタッフの方と2人で、先代からの味を守りながら、未来へ向けて新たな試みを考えていらっしゃるのだそうです。幼い頃から通っていた場所とはいえ、生活していた場所ではないので、友人や知人はほとんどいらっしゃらないというのが現状で、まずは地域に馴染まないといけないな、ともおっしゃっていました。
明治18年創業の油屋さんですが、それ以前はランプのオイルを販売していたようで、かなり長くこの地域で商売をされていたようです。その頃から引き継がれてきている思いをしっかり受け継ぎながら、これからは生菓子や、他のお菓子にも挑戦してみたいそうです。また、保育士だった経験も生かして子供達に郷土のおやつを伝えていけたらとも語ってくださいました。
大西美那子さんの前職の経験からなのか、彼女と話しているとほっと落ち着ける印象があります。子供達を安心させるほっとさせる空気をお持ちなのだなと思います。それを感じた時にふと、暗闇でランプの灯を見た時や、遠く焼津を離れた遠洋の地で“みそまん”を口にした時に、ほっとさせる灯のような感覚と同じなのかなと思いました。
もしかしたら、それこそが大西美那子さんが「油屋」から受け継いだものなのかもしれないと思いながらお土産をたくさん抱えてお店を後にしました。

店舗データ

御菓子處 油屋

御菓子處 油屋

〒425-0035 静岡県焼津市東小川6丁目9−6
tel: 054-628-2264
http://www.at-s.com/gourmet/article/takeout/wagashi/126906.html
定休日:不定休
営業時間 : 7:30~16:00 
専用駐車場あり

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)と
TOKYO DRESS などのプレスやアパレルブランドのディレクションを勤める
石崎由子(いしざきゆうこ)2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えて行く事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
BLUEBIRD BOULEVARD:Coat & Tops

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