She’s Mercedes meets Japan / Vol.1

東京 浅草から茗荷谷へ 前編 江戸つげ櫛 よのや櫛舗 当主斎藤悠

日本各地に今も伝わるぬくもりのある手仕事や、受け継がれてきた確かな技を 次世代へつなげて行こうと活動をしている「uraku」、彼女達が旅のみちみちで 出会う日本の美しい風景や物、事、をメルセデスと共にみつめる旅紀行。 女性2人ならではのゆったりとしたロードストーリーの行き着く先は・・・

photo/濱野 智(glife)
edit&text/石崎由子(uraku) 
navigator/田沢美亜(uraku)

始まりは江戸の町から

メルセデスで巡る旅のスタートは、東京にのこる江戸の古い町並みの面影をゆっくりと巡る旅から始めようかと思います。
およそ400年以上前に、この地に徳川家康が幕府を開いて以来、世界有数な都市へと発展、繁栄を誇った江戸の町には多くの職人や商人が行き交う場所でした。
今回はそんな旧江戸市街を浅草から茗荷谷まで巡って行きます。
旅のお供はメルセデスCLA 180 Sportsのジュピターレッド。華やかながらも落ち着いたカラーが特徴です。
最初に訪ねたのは、現在江戸にはもう2件しか残っていない、つげ櫛屋「よのや」さん
伝統技法を引き継ぎながら、アクセサリーとして“いま”も楽しめるモダンさを併せ持つ美しさがあります。この「よのや」当主斎藤氏に引き継ぐ者の心意気を伺いました。


 

江戸の町で受け継がれた職人の心意気

江戸の昔から、人出で賑わう浅草は伝法院通りに、昔ながらのたたずまいを残した店構えで「よのや」さんは商いを続けています。
この地に店を構えたのは大正初期、創業は享保2年(1717年)というから実に300年続く江戸の老舗です。創業当初は髪結いさんや床山さんへ櫛を卸す商売を営んでいたそうです。
現在の当主の斎藤さんはとても気さくで、気負わないラフな面持ち。
物つくりについての熱い思いをゆっくりお話しして下さいました。
お店の外のウインドウと店内には、櫛はもちろん、かんざしや、髪とめ、飾り櫛など、美しく細工されたつげの商品が並んでいます。「つい先日の三社まつりで商品が品薄なんです。仕上げまでに時間がかかるので一度に売れちゃうとさみしくなっちゃうんです」と少し申し訳なさそうに、一つ一つ商品の説明をして下さいました。


 

ゆっくりと時間をかけて「木である事を忘れさせる」

それもそのはず、一本のつげの櫛が出来上がるまでは想像以上の手間と時間がかかるのです。
つげ櫛は鹿児島指宿の“さつまつげ”という種類の木を使用します。普通のつげより幹が太く育つようです。その木を切って束ねる“板しめ”を行いそのままいぶします。木をゆっくり乾燥させてゆがみが起こらない様にまっすぐにするためです。すくなくとも5年以上は寝かせるようで「木である事を忘れさせる」のだそうです。
このつげの木は適度に固く適度に粘りとしなやかさがあり、静電気などもおこりにくく、櫛にとても適しているのだそうです。実際、他の木を使用した櫛を見せて頂きましたが、特に粘りが圧倒的に違います。人の頭皮に最も良い素材を先人達は見つけ出したのです。
(他の木の櫛はお値段が手頃なのでお面やかつら等につかいます)
お店の一角には最後の仕上げの工程を行う作業場もあり、斎藤さんがつげの櫛の工程を説明しながら最後の櫛の歯を削っていく工程も見せて下さいました。
櫛の歯を一本一本ヤスリで削って行きキレイな丸みを付けていく、リズミカルなあざやかな手つきで作業は続きます。完成すると椿油に付けて仕上げます。
出来上がった櫛ですが、西と東で櫛の形は少し違います。よのやさんの形は“よのや型”といわれ、仕上がりが少しなで肩の形が特徴です。


 

今出来る事をすこしづつでもやりながら未来へ残して行く

工程の話を伺いながら、現代の職人さんの事情もぽつりぽつりと話して下さいました。
南千住にいた漆の職人さんがいなくなって、やっと会津の職人さんを探したことや、飾り櫛の彫りが出来る職人さんも、もう一人しかいないという事、また観光地へと発展した浅草では騒音や、匂いの問題で最後の工程ぐらいしか出来なくなってしまい工場を他の地へ移さなければならなくなった事など、引き継がれた技を続けて行くには現代社会ではあまりにも支障が多すぎます。
それでも、受け継がれてきた大切な思いや、感覚、技術を未来の子供達へ伝え残したいという思いで斎藤さん夫妻は「今出来る事を少しでも続けていきたい」と熱く語って下さいました。
今、先代が残してくれた見本を元に新たな試みとして、川越唐桟の櫛入れを製作しているそうです。この試みにも様々な壁があるのですが斎藤さんと奥様の有都さんは、出来る事はやっていこう、というしっかりとした思いで、復刻を試みています。
観光客でにぎわう浅草伝法院通りの“よのや”さんの、のれんをくぐり一歩踏み込めば、そこには日本人が大切にしてきた美意識である、ひとつひとつ丁寧に、心を込めて、自然に感謝をこめてという思いがしっかりと感じられるはずです。


 

店舗データ

つげ櫛店 よのや櫛舗
東京都台東区浅草1-37-10
http://yonoya.com/
定休日:毎週水曜日(水・木 連休を頂く事もあります)
営業時間:10:30~18:00
専用駐車場はございませんのでお近くの駐車場をお使いください。

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とTOKYO DRESS などのプレスやアパレルブランドのディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)の2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えていく事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
TOKYO DRESS : Vest
ATON:Pants
Continuer:Sunglass

Share on:

Mercedes-Benz LIVE!

メルセデス・ベンツの
ブランドポータルサイト
Mercedes-Benz LIVE!もチェック