軸にあるのはリアリティ。
「何を着て、何に乗るか」ということ
「ひと口に“ファッション”と言っても、いろいろな提案の仕方があると思います。僕自身、かっこいいビジュアルやスタイリングで見せるような、いわゆるファンタジックな視点でファッションの楽しさを伝えたいという思いもあるし、それこそアーティストをスタイリングするときには、普段着る、着ない、という部分を度外視した、ステージ映えする服を選ぶこともあります。
そんななか、この企画のお話をいただいたとき、まず自分のなかで絶対的な軸としたのが“リアリティ”です。先にお話したような、さまざまなクリエイションを目で見て、感じることがファッションである一方、『あのレストランに行くから、これを着る』『あの人に会うから、これを着る』というように、目的に応じて服を選ぶことも“ファッションを楽しむ”という意味では同じです。
そのストーリーを“説明的”と否定するのではなく、より日常に寄り添った提案としてポジティブに、魅力的に表現する。それこそ、『知りたい』という欲求にあふれた今の時代に求められているんじゃないかと思います。
では、メルセデスのなかでもっともラグジュアリーなセダン、そして時代の先端を行く電気自動車である『EQS』に乗るのはどんな人で、その人なら何を着るか。そう考えたとき、ある程度いろんなものにトライし、さまざまな経験をして、本当に上質なものを知るに至った大人の男性であろうと想像しました。また、EQSがもつアンダーステイトメントな部分も意識して、パッと見の華やかさではなく、控えめながらもしっかりと質の高さが伝わる、そんな服を選びました。
加えて、キーワードとしたのが“サイレンス”。電気自動車であるEQSならではの静粛性に、装飾性を抑えた、まさしく“静”な服をリンクさせ、ロケーションもそんな大人がEQSで訪れるにふさわしい京都の寺院を選びました。
EQSに乗る大人にはこんな服を着てほしいという男性像を表現したのはもちろん、日常における僕自身のスタイルの要素も盛り込んだ、リアルクローズによるファッション提案に共感してもらえるとうれしいです」

【Style 1】
軽やかなコートをさらりと羽織り、
裾をはためかせながら歩く
「ひとつめのルックに選んだブランドは『ザ・ロウ』。ビスポークテーラーが軒を連ねるロンドンのサヴィル・ロウにちなんで名づけられたことからもわかるように、最高級のファブリックや精緻を極めたテーラーリング技術を駆使して、現代にふさわしい“クラシック”をつくり続けています。
そんなタイムレスな視点や、控えめでありながら妥協のない品質をベースにした服が、メルセデス・ベンツ、そしてこのEQSの価値観にもつながるんじゃないかと思いセレクトしました。
シルクにリネンを混紡した素材感も落ち感もパーフェクトなコートに、スーピマコットンによる肌触りのいい白Tシャツ、そしてグレーのコットンパンツ。アイテムの合わせとして決して奇抜なことをしているわけではなく、ごくシンプル。そんなファッションに静粛なクルマと空間が三位一体となり、まさに“サイレンス”な雰囲気に仕上がっていると思います」


コート¥438,900、Tシャツ¥66,000、パンツ¥174,900、サンダル¥181,500/すべてザ・ロウ(ザ・ロウ・ジャパン TEL:03-4400-2656)
「コートという服は、それを着るだけでその人のステージを上げてくれるアイテム。しかも、こんなふうにTシャツにバサっと羽織るだけでコーディネートが完結するので、スタイリングが簡単なんです。
実際、クルマを運転するときには裾がまとわりつくなど難点もありますが、こんなシルクリネンによる裏地のないコートなら、ちょっとぐらいのシワも味になってくれるし、気兼ねすることなく、リアシートに無造作に置いておけるほど軽やか。こんなコートを一着もっていると便利です。
足元もくつろいだ雰囲気がありながら、品のよさも備えるスエードのグルカサンダルを。かかとをしっかりと包み、ホールドしてくれるグルカサンダルなら運転もスムーズにこなせます。
“リラックス”であり、“リュクス”でもある肩肘張らない装いは、もっともリアリティのある大人の普段着なのではないかと思います」

【Style 2】
濃紺シアサッカーのセットアップで
軽快な着心地と気品を両得
「たとえば仕事関係の人に会ったり、レストランでのディナーだったり、旅であってもきちんとした服装を求められるシーンはあると思います。そんな場面に対応する服としておすすめしたいのが、このブリオーニのセットアップです。
まず特筆すべきは、シアサッカー生地によるアンコン仕立てであるということ。軽やかな着心地はもちろん、先ほどのコート同様、シワになるのを気にしなくていい。また、特有の凹凸により肌との接地面が少ないので、汗ばむ夏場も着心地は爽快です。そんな機能面もさることながら、上質なシルクによるしっとりとしたツヤが、コットンのそれにはないエレガントな雰囲気を漂わせます。リゾートホテルなんかで着てもいいし、まさしくオールラウンダーですよね。
もちろん、礼節をわきまえた装いとしてもっとも効果的なのはタイドアップです。とはいえEQSを選ぶ方、時代の変化に軽やかに対応する大人の男性であれば、共地のミリタリーシャツ、そして共地のベルトが付属したトラウザーズによるこんなセットアップスタイルのほうが、柔軟な人柄が滲み出ると思います。そして、すべてを同素材でまとめるワントーンコーディネートは、いま一番ファッショナブルな着こなしだと思います。
また、僕自身の定番カラーが『ネイビー』で、普段はネイビーの服しか着ないほど。特に、ブリオーニを象徴するカラーであるこのミッドナイトブルー、ダークネイビーが、品があって好きなんです。今回、ネイビーカラーのEQSをリクエストしたのも、そんな理由があるんです」



ジャケット¥426,800 ※実際の商品はノッチドラペルのシングルブレストになります、シャツ¥195,800、パンツ¥247,500、靴参考商品/すべてブリオーニ(ブリオーニ クライアントサービス TEL:0120-200-185) 時計¥1,663,200[クオーツ、YGケース、ケースサイズ縦33.7×横25.5mm、日常生活防水]、リング¥170,000/2点共カルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター TEL:0120-301-757)
「時計はカルティエの『タンク ルイ カルティエ』。ドレスウォッチとして普遍的な魅力をもつ“タンク”コレクションの原点であるこのモデルこそ、EQSにふさわしいと思い選びました。イエローゴールドのケースには黒ストラップが王道ですが、このソフトなセットアップスーツのテンションには堅すぎる。こんなダークグレーのアリゲーターストラップならシルバーの文字盤とも相まって、モダンな軽やかさを演出してくれると思います。
そして、小指にした『トリニティ』リングもポイント。これは個人的なこだわりでもあるんですが、リングはワンポイントで、しかもピンキー使いでさりげなくあしらうのが好きなんです。時計とピンキーリングというバランスが、僕のなかではしっくりきますね」

【Style 3】
初夏のショートパンツは
セットアップで大人の落ち着きを
「行き先がどこであれ、初夏の旅にショートパンツはマストアイテムだと思います。その解放感を最大限に味わうなら、シルエットは適度にゆとりがあり、素材も丈夫かつ気軽なものであってほしい。でも決して子どもっぽい印象にはなりたくない。そう考えたとき魅力的に見えたのが、タップウォーターのデニムショーツに、同素材のカバーオールを合わせたセットアップスタイルです。
たとえウォッシュの利いたデニム素材であっても、セットアップなら装いに統一感が生まれて、大人の落ち着きみたいなものが担保できる。また、『どこにでもある日常着に、現代的なエッセンスを加えた服』というタップウォーターのブランドコンセプトが、今回の企画で僕が表現したかったこととリンクした、という部分も大きいです。しかも、この上下はいずれもヴィンテージアイテムをベースに現代風にアレンジした、『ラングラー』とのコラボレーションモデル。そんなところも、“本物”を知るEQSオーナーにふさわしいと思っています。
そんなセットアップに合わせたのが、USアーミーのシェルパーカに着想を得たハイクのコート。前にもお話したとおり、こんなコートを軽く羽織り、風を受け、空気をはらみながら歩く姿は、それだけで絵になるし、かっこいい。耐水性、防水性、通気性に優れたパーテックスを使用していて、そんな機能性も旅にもってこいです」


コート¥105,600/ハイク(ボウルズ TEL:03-3719-1239) ジャケット¥46,200、ショートパンツ¥35,200/2点共タップウォーター(フレッシュサービス ヘッドクォーターズ TEL:03-5775-4755) Tシャツ¥14,300/アンユーズド(アルファPR TEL:03-5413-3546) ソックス¥2,530/ソフトハイフン(ソフトハイフン TEL:03-6418-1460) 靴¥61,600(10月発売予定)/N.ハリウッド コンパイル × ダナー(ミスターハリウッド TEL:03-5414-5071)
「ショートパンツに合わせた白ソックスにもポイントがあって、これは僕も愛用しているソフトハイフンのもの。オーガニックコットンを使用した、やや硬めの素材感が、こんなデニムショーツに合わせるソックスとしてはベストバランスだと思っています。
そんなワーク、ミリタリーといったテイストに合わせてチョイスした靴が、N.ハリウッド コンパイルとダナーのコラボモデル。機能面や細部のアレンジはもちろんですが、何よりいいのが『ダナー ライト』をローカットにしたモデルであること。軽快さ、履きやすさを考えると旅には最適です」

【Style 4】
上質なニットシャツが
ゆとりのある大人を演出する
「旅先のコーヒーショップでくつろぐ時間。そんなシチュエーションをイメージした提案です。『ポロシャツ』は大人のカジュアルアイテムの定番ですが、ともすればスポーティな印象になりすぎてしまう。その点、こんなニット素材によるシャツならリラックスできる着心地ながら、上品さを保つことができる。大人の男性にこそもっていてほしい一枚です。
でも、ニットシャツならなんでもいいというわけではありません。品のいいベージュの発色だったり、上質なスーピマコットンだからこそ表現できる、ゆとりのあるアームの落ち感だったり、この一着には細部が計算され尽くされているからこそ醸し出される気品がある。それが『ザ・ロウ』の美点なんです。全体をワントーンでまとめるのがおすすめです」


シャツ¥207,900、パンツ¥273,900、サンダル¥181,500/すべてザ・ロウ(ザ・ロウ・ジャパン TEL:03-4400-2656) 時計¥1,029,600[自動巻き、SSケース、ケース幅35.1mm、10気圧防水]、リング¥1,095,600/2点共カルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター TEL:0120-301-757)
「時計はカルティエの『サントス ドゥ カルティエ』を選びました。リラックスしいた装いに合わせて、スチールケース、かつパイロットウォッチを起源にもつこの時計で、エレガントさのなかにスポーティな要素も加味しました。カーフスキンのストラップを付けていますが、スチール製のブレスレットも付属していて、オケージョンや着こなしに応じてワンタッチで簡単に付け替えられるのも旅向きです。
『パンテール ドゥ カルティエ』リングを先ほどと同じく、ピンキーリングとして組み合わせているのもポイントです」
ファッションもクルマ選びも、
自分の“軸”を定めることが重要
最後は、渡辺さんが普段愛用しているもののなかから、クルマでの旅に最適なアイテムをピックアップして紹介。
「これまでいろんな経験をして、いろんなものにトライして、僕くらいの年齢になるとある程度、自分のスタイルというか、“軸”みたいなものが定まってくる。もちろん時代が移り変わるなかでサイズ感であったり、こなし方であったり、細部でそのときの気分を表現するわけですが、自分にとっての大きな柱をつくって、そこから自分なりの遊び方を見つけていくというのは、ファッションにおいてすごく重要だと思うんです。
そう考えると、服を選ぶ感覚、そしてクルマを選ぶ感覚はある意味、方程式は同じだと思います」
ABOUT CAR
メルセデス・ベンツ初のラグジュアリー電気自動車。日本で販売されている電気自動車最長の航続距離700㎞を実現。メルセデス・ベンツ初となる電気自動車専用プラットフォームを採用し、ダッシュボード全面に広がるディスプレイ「MBUXハイパースクリーン」を搭載。量産自動車として世界でもっとも優れたCd値0.20を誇り、外部給電器としても利用可能。