
「Project MAYBACH」とは
「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™(Off-White c/o Virgil Abloh)」の創設者にして、「ルイ・ヴィトン」のメンズ アーティスティック・ディレクターを務めたヴァージル・アブロー氏。2021年11月28日、41歳という若さで惜しまれつつも逝去した希代のアーティストは生前、メルセデス・ベンツとも深い関わりをもっていた。
両者が初めてタッグを組んだのは、Gクラスを題材にアート作品を創造した「プロジェクト・ゲレンデヴァーゲン」。2020年秋に本国ドイツで発表された、Gクラス特有のネイキッドなたたずまいに無駄を削ぎ落としたレーシングマシンのような内装を組み合わせた3分の1スケールのアート作品だ。その作品はサザビーズのオークションで160,000ドル(1ドル=105円換算で約1680万円)で落札され、その全額がファッションを学ぶアフリカ系アメリカ人や黒人を支援するためにヴァージル氏が立ち上げた「”ポストモダン”スカラーシップ基金」に寄付された。

そして、コラボレーションの2作目となるのが、「Project MAYBACH」だ。ヴァージル氏とメルセデスのデザイン統括ゴードン・ワグナーがこのプロジェクトを立ち上げ、コンセプトモデルを発表。2シーターのオフロード2ドアクーペEVの全長は約6メートルにも達し、印象的な大径オフロードホイール、ルーフアタッチメントなどからは、“アウトドア”にインスパイアされたことがうかがえる。
また、「Project MAYBACH」にはベース車両は存在せず、ゼロから開発されたという。透明なフロントフードの下には太陽電池が搭載されていて、EVによる移動の未来がどのような機能、スタイルのもと形になるのか、ラグジュアリーデザインの可能性を具現化したコンセプトカーといえる。
そんなヴァージル・アブロー氏の創造性、そして情熱を継承するがごとく発表されたのが、メルセデス・マイバッハ特別仕様車「Limited Edition Maybach by Virgil Abloh」。最新の「Mercedes-Maybach S 680 4MATIC」をベースに、コンセプトモデルと同じく内外装に砂漠をイメージしたコロラドベージュとオブシディアンブラックを組み合わせた、世界限定150台(日本限定13台)というスペシャルな一台だ。

2023年1月26日、翌日からはじまる車両展示イベントの前夜祭として、「メルセデス ミー 東京(六本木)」で一夜限りのパーティがおこなわれた。


多くの来場客でにぎわう、華やかなパーティに
エントランスに堂々と鎮座した「Mercedes-Maybach GLS 600 4MATIC」を横目に会場へ足を踏み入れると、イベント開始時刻の18:00を少しまわったばかりだというのに、すでに多くの来場客でにぎわっていた。
生前、日本との関わりがとても深かったヴァージル・アブロー氏。完全クローズドなパーティとはいえ、ファッションやアート、音楽関係など、招待客は多岐にわたり、彼を慕う多くのインフルエンサーが日本の樹海を思わせるフォトコールで、コンセプトカーといっしょに写真撮影に興じていた。

今回のパーティをキュレーションした野村訓市
今回のパーティをキュレーションしたのは、生前、ヴァージル・アブロー氏と親交が深く、シカゴ美術館で開催された個展のレセプションパーティなどもプロデュースした野村訓市氏。マイバッハ、そして「Project MAYBACH」の世界観のなかで、日本なりの解釈で故ヴァージル・アブロー氏のクリエイションに対するリスペクトをDJパフォーマンス、VJ演出によって表現してくれた。

DJブースのバックに流れるVJ演出を手がけたのは、国内外を問わず活動するグラフィックアーティスト、YOSHIROTTEN

生前ヴァージル・アブローと親交があったグラフィックデザイナー/アーティストのVERDY率いるVERDY SOUNDSはDJとして参加
VJ制作、そしてインビテーション制作は、ジャンルを超えたさまざまな表現方法で作品制作をおこなうグラフィックアーティストのYOSHIROTTEN氏が担当。DJとして、「Girl’s Don’t Cry」「WASTED YOUTH」などのプロジェクトを手がけ、国内外で注目を集めるグラフィックデザイナー/アーティストVERDY氏も参加。
また、オフ-ホワイト™とパイオニア DJがコラボレーションしたDJコントローラー「Pioneer DJ c/o Virgil Abloh™」、ヴァージル・アブロー氏がファッションショーでも好んで使用していたOJASのスピーカーなど、彼とゆかりのあるサウンドシステムもこのパーティのために特別に用意された。
DJはVERDY SOUNDSからはじまり、コンセプトウエアブランド「TILT」のディレクションも務めるEZ氏、そして日本のレゲエサウンド、ヒップホップクラブシーンのキーパーソンであるDJ MAGARA氏という豪華リレー。
序盤はヒップホップ、R&Bが場を盛り上げ、そこから心地よいハウス・ミュージックへ。会場ではヴーヴ・クリコのシャンパンをはじめとしたドリンク、そして「ベーコンレタスミニバーガー」「牛肉と茄子のタルト」など、まさしくアウトドアを意識した片手で気軽に食べられるフードも振る舞われた。
パーティも中盤になるとセレブリティの来場も見られ、昨年末、Mercedes-Benz LIVE! に出演してくれた元K-1王者の魔裟斗氏の姿も。
イベント終盤にはダンス・クラシックなどもかかり、最後はダフト・パンクの『One More Time』で一夜限りの宴は幕を閉じた。

元K-1王者の魔裟斗も来場。自らのファイトマネーで24歳の時に購入してから、ずっとメルセデスを乗り続けるメルセデス愛好家

46度もの世界タイトルを獲得した若干20歳のShigekix(写真右)と、今年世界3連覇を狙うFLY DIGGERZのKEISUKE、TAKAO、AYUKA(写真左より)

残念ながら、ヴァージル・アブロー氏本人の口から、「Project MAYBACH」について語ってもらいたくとも、もはやかなわない。だが、この一夜のために集った多くの人たちがそうであったように、作品を間近で目にし、触れることで、彼のパッションを感じ取ることはできるはずだ。現在「Project MAYBACH」のコンセプトカーとメルセデス・マイバッハ特別仕様車の展示を以下の通り開催中。ぜひ足を運んで、その“想い”を確かめてほしい。
ABOUT CAR
Limited Edition Maybach by Virgil Abloh
「Mercedes-Maybach S 680 4MATIC」をベースに、故ヴァージル・アブロー氏とのコラボレーションモデル「Project MAYBACH」をモチーフにデザイン。外装色には、砂漠をイメージしたコロラドベージュとオブシディアンブラックを組み合わせた、特別仕様車専用のツートーンペイント。足元には専用のコロラドベージュペイント20インチディッシュホイールを採用。世界限定150台(日本限定13台)。