She’s Mercedes meets Japan / Vol.18

東京都 品川から浅草(東海道)中編 丸屋履物店

品川宿で155年続く老舗の履物店へ

日本各地に伝わる手仕事や、受け継がれてきた技を次世代へ伝えようと、活動をしている「uraku」、彼女達が旅のみちみちで出会う日本の美しい風景や物、事、をメルセデスと共にみつめる旅紀行。女性2人ならではのゆったりとしたロードストーリー。東海道を品川から浅草をめぐる旅中編は、品川宿で155年続く老舗履物店を訪ねます。

photo/ 鬼澤礼門 text&edit/石崎由子(uraku) navigator/田沢美亜(uraku)

風情が残る街並み「品川宿」

前回に引き続き、東海道を品川から浅草方面へ向かっての旅の中編となる今回は、前編で訪れた
藤山さんの錦霞染色工房からほど近く、車で10分ほどの場所にある「丸屋履物店」へ向かいます。
今回の目的地は品川宿のまさに中心部、本陣とも言える場所に位置し、周りは、古い建物や老舗のお店がいくつも軒を連ね、どこか懐かしい風情を漂わせたところです。
今回もそんな粋で華やかな街を、Mercedes-AMG A 35 4MATIC Edition 1 で品川宿を軽快に走ります。日常使いが出来るAMGとして発表された、新しい35シリーズで、カラーはデニムブルー、老舗の暖簾でもよく目にする藍色にも似た、江戸っ子好みのカラーです。
コンパクトながら力強い馬力は商店街のような、小回りが必要な場所でも魅力を発揮します。
音声認識で目的地を指定できるので、街中の運転にはとても快適です。
さて、短いドライブを楽しんでいたら今回の目的地「丸屋履物店」へ到着です。

幕末から155年続く老舗

新馬場と北品川のちょうど真ん中あたり、旧東海道沿いで、最も品川宿の名残を感じ、賑わいを見せているあたりに「丸屋履物店」はあります。
近くには品川っ子の大好きな品川神社が鎮座し、江戸の風情を肌で感じることができる場所です。そんな歴史的な街並みの中でも代表格とも言える「丸屋履物店」は慶応元年(1865年)創業、今年で155年目を迎える江戸時代から続く老舗です。大正初期の建築物という、昔ながらの町屋造りの建物も風情があり、こちらの店構えが品川宿のイメージをより一層、深めているのではと感じるほどです。
お店に入ると5代目の榎本準一さんと6代目の榎本英臣さんが、仲良く並んでお出迎えしてくださいました。
店頭のショウケースの中には様々な型の草履や下駄がたくさん並んでいて目移りしてしまいます。
真ん中の棚にはその草履や下駄に挿げる鼻緒が、ちょっと見たことがないくらいの数の種類がぎっしりと
並んでいて、こちらはその量にクラクラしてしまうほどです。
「丸屋履物店」では、好みの草履や下駄とそれに挿げる鼻緒を選び、お客さんの足に合わせて、その場で挿げてくれます。その履き心地の評判はとても良く、今回私も1足購入していこうかと思い、早速お二人に相談してみることにしました。

履く人の足に合わせて挿げる鼻緒

まずは使用するシーンと好みに合わせて台を選び、その型で自分にあったサイズを探します。
和装が好きで装いのシーンに合わせて草履や下駄を購入する機会が度々ありますが、その度に身長の高い私は草履のサイズには苦労しています。ところが「丸屋履物店」は大きいサイズも取り揃えていて、店頭に在庫がない場合も注文できてしまいます。決まったら鼻緒選びですが、こちらは本当にたくさんの種類があり、絞りきるのが大変です。真ん中の棚だけでなく、シーンや合わせたい着物のイメージを伝えたら、どんどん店の奥から違う種類の鼻緒が出てきて、その豊富さには本当に驚いてしまいました。これはとても決められないと思い、お二人に意見を伺いながら、自分好みでありながら粋な鼻緒の柄をやっとの事で選ぶことができました。

鼻緒が決まったら、まずは台に鼻緒を仮で挿げていきます、仮挿げしたらその場で試し履きをして
さらに微調整をしていき、履く人の足に沿わせていきます。
金槌や錐などを使い、軽妙なリズムでお二人は手際よく仮挿げしていきます。
テンポよくトントントンと進んでいく様子は、小気味の好い、江戸っ子のリズムといった感じです。
仮挿げができたら草履を履き、少し店内を歩かせていただき履き心地を確かめます。
「鼻緒の奥まで指は入れないで、本当に浅く突っかける感じで、そしてかかとはしっかり出して前重心で履くのが粋なんですよ」と語る5代目榎本準一さん。草履の粋でかっこいい本当の履き方もしっかり教えていただけます。教わった履き方でしばらく店内を歩いてみて、違和感のある場所やいたくないかと色々聞かれ、微調整が済んだら本挿げをして完成です。

草履を粋に履く美意識

できあがった草履をもう一度履いてみて少し店内を歩き確かめます。履き心地は本当によく、鼻緒が自然に足に沿っている感じです。ツボの部分にも痛みを感じることなく心地よく足が運びます。
草履や下駄の履き心地はサイズや素材だけでなく、鼻緒の挿げ方が大きく影響してくるのだなと、改めて感じました。
今では名人ともいえる技術を持つ5代目の榎本準一さんですが、若い頃はモダンジャズに傾倒しサックス奏者で、音楽の道に進もうと考えていたそうです。しかし思いがけず19歳の時に先代のお父様が亡くなられてしまい、思いとは裏腹にお店を引き継ぐことになったのだとか、もともと継ぐ気が無かったので、まだまだ未熟なところからのスタートとなってしまったのですが、その当時周りにまだ沢山残っていた花街のお姉さま方や、古くからの顧客の方々が、「お前は親父に比べたら下手だ、だけど待ってやる」と厳しくも優しく見守り育ててくださり、一人前になったのだと語ってくださいました。
今も残る下町の情緒が、その頃はもっともっと溢れていて粋な街だったのだろうなと、お話を伺っていると生き生きと感じられ少しタイムスリップした感覚になります。
草履や下駄を本来の粋な履き方をしっかりすると、前重心になるので、背筋が伸び、腰の上に帯の枕がきちんと乗り後ろ姿が綺麗になるのだと、和装の時代の人々の美意識の高さも改めて教えていただきました。

令和へ引き継がれる粋

19歳の時から丸屋を引き継ぎ54年間続けている5代目の榎本準一さんですが、息子さんの榎本英臣さんが6代目を継ぐということには、嬉しさもありながらも父親としての気持ちは、正直、良かったのかなという思いもあったのだとか、そう話す傍で、6代目の榎本英臣さんは特に違和感なく引き継いだと語ります。鼻緒を挿げる技術は5代目のお墨付きの6代目は、少しずつ時代に合わせて新たな試みを始めています。
近年、職人さんの高齢化は進み、その技術を引き継ぐ人も少ないため、「丸屋履物店」のように
小売を営むお店は仕入れという部分でも厳しくなってきているのだそうです。
そこで、仕入れられないのなら自分で作ろうと発想の転換をして、様々な試みを少しずつはじめているのだそうです。
まずは、職人さんにお願いして、下駄の台や鼻緒のオリジナルを作ることを始め、鼻緒の数などは
他にはないぐらいの種類を揃えています。それだけではなく、次は自ら職人となって作っていくことも考えているようで、実際、鼻緒は自分たちで縫製してオリジナルを作り始めていて、私たちにオリジナル鼻緒を見せてくださいました。
6代目の挑戦はまだまだ始まったばかり、155年続く「丸屋履物店」が品川の粋を引き継ぎながら令和の時代に向けて試みていくオリジナル商品開発はとても楽しみです。
江戸の町へ入る前、足元や身なりを整え正すために、一度立ち寄り一休みする宿場町として栄えていったこの品川宿は、時代を経て花街はなくなっても粋な心意気は消えることなく受け継がれているのだと思います。
「丸屋履物店」の店内奥のガラスのショーケースに江戸時代の花魁の高下駄が飾られていますが、この高下駄は時代を経て、変わってしまったものと変わらないものを静かに見守っているのだなと感じました。

店舗データ

丸屋履物店

丸屋履物店

〒140-0001 東京都品川北品川2-3-7
tel&fax: 03-3471-3964
https://www.getaya.org
定休日:日曜日
営業時間 : 9:00~19:00
専用駐車場はありません

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)と
アパレルブランドのプレスやディレクションを勤める石崎由子(いしざきゆうこ)
2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えて行く事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
ROPE ETERNEL:Pants,Shirt,Knit
ROPE:Coat
Continuer:Sunglass

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