She’s Mercedes meets Japan / Vol.17

静岡県 焼津市(東海道)前編 曽根弓具店 曽根宗次

江戸時代から続く「矢」の産地を訪ねる

女性2人ならではのゆったりとしたロードストーリー、今回は東海道を進み、志太平野の焼津市に向かい「矢」の職人さんを訪ねます。

photo/ 戸松愛 text&edit/石崎由子(uraku) navigator/田沢美亜(uraku)

名だたる武将が求めた豊かな土地

メルセデスで巡る旅、今回は静岡県の焼津市へ向かいます。前回と同じく東京から東海道を進み、豊かな漁港として知られる焼津の街に到着です。
「焼津」という地名は古事記や日本書記に登場するほどで、古くからこの地に人々が生活し、また行き交っていたことが伺えます。
戦国時代には、今川、武田、徳川と名だたる武将に支配され、戦乱に巻き込まれると同時に、豊かな漁港として人々が集まり栄えたようです。またすぐ近くに流れる川幅の広い大井川が氾濫しながらも運ぶ、肥沃な土が豊かな土地を作り志太平野となり、作物の生産も盛んに行われました。焼津から大井川を渡った牧之原台地はお茶の生産地としても有名です。
そんな豊かな海と大地の恵みあふれる街に向かう今回の旅のお供は、smart forfour BRABUS Xclusive。カラーはイエローです。小ぶりなコンパクトカーでありながら、安定した走りと、軽快なフットワークが魅力です。このサイズで高速での加速も不自由はなく、室内も想像以上にゆったりとしていて長距離も楽しく進めます。
最初に向かったのは焼津の「曽根弓具店」です。矢を作り続けて4代目、この地に強者の戦国武将がいたことを現代に伝える職人さんです。

矢師、かけ師を引き継ぐ家柄

焼津港のほど近い海の風を感じる場所に弓の的が目印の「曽根弓具店」はあります。
お店に入ると、物静かなご主人の曽根宗次さんと息子 (娘婿)さんが黙々と作業していらっしゃいました。曽根宗次さんの家は4代続く矢師の家柄で、お爺様のご兄弟もかけ師という、矢、弓意外の手袋などの道具を作っていらっしゃったそうです。
曽根宗次さんはこの道50年の矢師としてはベテランで、弓道も実は5段を持つ有段者、息子さんはこの仕事を初めて10年ほどとのこと、少しずつ技術を受け継いでいるところだそうです。物静かな曽根宗次さんですが、少しはにかみながら優しい声で、弓道に疎い私たちのために丁寧に説明してくださいました。

オーダーメイドで作られている矢

昔ながらの矢は矢竹という国産の細い竹で作られています。すべてオーダーメイドで、お客様の身長や、弓引きの強弱などによって調整されます。
弓道競技では2本ずつ射って成績を競います。そのため4本の矢が一組となって、販売されるようで、オーダーした方に合わせて製作していくのですが、自然の竹を4本ほぼ同じ条件に揃えて仕上げていくのです。
長さ、重さ、羽根の状態、もちろん見た目、まるで機械で作り出したようにそっくりな4本を長い時間をかけて作り出していく技術は本当に細かくてびっくりしました。
最初に竹でできた部分、矢の篦(の)というのですが、この部分の製作から始まります。
2〜3年育った矢竹を収穫し半年ほど天日で乾かし皮を剥ぎます。その後あぶりながら扱いて少しずつまっすぐにしていきます。この時点で大体揃っている4本を一組ずつにまとめ、いただいているオーダーに合わせてそれぞれのサイズや特徴を、職人の技術で4本同じものを作り出していくのです。私たちが見たり触ったりした感覚では全くわからない細かで繊細な部分を見極め判断して、曽根宗次さんは作っていきます。
その工程は、まず4本の重さを揃えるために削っていきます。矢はしなりが大切なので、しなりがなくならないように調整しながら削っていきます。その後、表面を焦がしてハリを強くし、石洗いをして削り、綺麗に整えます。そしてまたあぶり、色を合わせていきます。最後の仕上げに漆をかけるのですが、この仕上げも様々な方法があります。中でも少し変わっていて、仕上がりも渋めで格好が良いのが、醂篦(さわしの)という仕上げで、水をため底に土を引いた入れ物に竹を2か月ぐらいつけておき、その後薄く漆をかけるのだそうです。渋くて綺麗な光沢が強そうな印象を与えて魅力的です。
仕上がった4本はまるで複製したかのように同じように見えるから驚きです。

矢の篦(の)がオーダーメイドなら、つける羽もオーダーで選びます。
わし、ターキー、雁、白鳥、などいろいろあり、好みによって付けられます。
その人の癖や好み、あとは予算で羽は決まるのだそうです。
丈夫で綺麗な部分は尻尾の羽だそうで、1羽の鳥に12枚しかありません。当然高価なものとなります。
鳥の羽は左右あるので2本ずつ左右つけます。それぞれ右は早矢(はや)、左は乙矢(おとや)と呼ばれ、競技で射る順番は早矢からと決まっているそうです。
曽根宗次さんは、器用に小指を使って篦(の)に羽を紐で巻きつけ仮止めする作業を見せてくださいました。とてもリズミカルにスイスイ巻いていきます。よく見ていないと何をしているのか見落としてしまうぐらいです。しっかりと接着し糊が乾いたら、仮止めの紐を外します。その後、羽の端を隠すために絹糸を巻き、止めるためにくち漆を引きます。昔は本当に漆をつけていたのだそうですが、今はカシューで止めつけます。この部分は赤や黒のアクセントになっていてとても綺麗に見えます。最後に、弓を引っ掛ける、水牛でできている筈(はず)の部分をつけてやっと出来上がりというわけです。

しなやかに時代を捉える事

この地域は矢竹が近隣で採れるということからか、昔から矢師、かけ師が多くいらっしゃったそうです。今では少なくなっていますが、それでも全国的に見たら多い地域だとか、弓道という競技が、現在では学生さん中心の競技となってしまった事もあり、先ほどから見せていただいた昔から受け継がれている矢作りではなく、矢の篦(の)の部分がジュラルミンで出来ている矢の方が、需要が多いのだそうです。学生さんに達にとっては扱いやすく値段も手頃なため、気軽に購入できるからだそうです。とは言ってもこちらも羽をつける技術は必要で、技術と手間のかかる仕事ではあります。羽だけは代用できる素材が今の所、存在しないのだそうです。
矢竹を使った矢の需要もどんどん少なくなってきていますが、製作者も少なくなってきているのも現状だそうです。また材料も近年では揃えるのが難しくなってきているようで、羽などはもう手に入らなくなっていまい、ストックを少しずつ使用している種類の羽もあるのだとか、続けていくにも様々な苦労が伺えます。
そんな不安要素がありつつも、矢竹で作られた矢を使用してくださるお客様が、競技会で優勝されたのだと聞くと嬉しいのですと、にこやかに話してくださいました。
何よりも製作して納めた矢が扱いやすく、使用される方にあっていた、ということを聞くのが嬉しいかなと、少し誇らしげな笑顔でした。
遠い昔から、少しずつ考察を重ね、今の姿になった弓と矢を作り上げる技術を、材料や競技人の変化など、時代に合わせながら変化させて、とにかく未来につなげ、続けている姿は、曽根宗次さんが作る矢のようにしなやかにで、まっすぐだなと思いながら、「曽根弓具店」をあとにしました

店舗データ

曽根弓具店

曽根弓具店

〒425-0035 静岡県焼津市東小川6-10-10
tel: 054-628-6051
fax: 054-628-6051
https://www.rakuten.co.jp/sonekyu-/
定休日:不定休
営業時間 : 9:00~18:00 
専用駐車場あり

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)と
TOKYO DRESS などのプレスやアパレルブランドのディレクションを勤める
石崎由子(いしざきゆうこ)2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えて行く事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
BLUEBIRD BOULEVARD:Coat & Tops

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