モダンであること、ラグジュアリーであること
「我々のデザイン哲学の根幹は“Sensual Purity=官能的な純粋さ”というキーワード」と語る、メルセデス・ベンツ チーフデザイナーのゴードン・ワグナー。彼は感情と理性の融合、すなわち“Hot and cool”な意匠をもって自動車デザインに革命をもたらし、モダン・ラグジュアリーという価値観を定義した。長い間、自動車デザインの分野を超えた未来像の具現化を目指してきた彼と彼のチームは、 メルセデス・ベンツ ブランドのもとで、自動車のみならず様々なライフスタイル・プロダクトをデザインしてきた。
ワグナーはボートやヘリコプターから航空機のキャビン、豪華なアパートメントの内装に至るまで、彼らはテクノロジーに対する先鋭的な知見と情熱を融合した統合的な設計アプローチを適用し、全く新しいクリエイティブを創造する。 そして、ロンドンのコンデナスト・インターナショナル・パブリッシングから刊行された『Sensual Purity – Gorden Wagener on Design』という本の中で、未来のビジョンとしてMercedes-Benz Future Worldという世界像を示している。
過剰な要素はいらない。問われるのは本質
豊かで余裕があるということは、ときに表層的で薄っぺらく、裕福さや特権を鼻にかけるかのような表現に陥りがちだ。しかし、現代におけるラグジュアリーの定義は、過剰な要素より、本質の豊かさに重きがおかれている。人々はより多くのものを手にするより、より良きものを手にしたいと願う。現代のラグジュアリーを言い表すなら、自由、宇宙、空気、プライバシー、沈黙といったキーワードに紐づくイメージだ。削ぎ落とし、ピュアにすること。プラスの要素が過多であるよりは、ネガティブな要素がより少ないことに価値がある。そして、来るべき時代の新しいデザインは、自動車に乗る全ての人を解放し、より想像的な領域へと導いていくのだ。モードの世界では、贅沢とは貧困の対義語ではなく俗悪の対義語であることをココ・シャネルが表明した。そして自動車の世界では、“俗悪であること”は運転の歓びや楽しさを半減し、煩雑にするだけなのだ。
常に新しくあるために、前進し続ける
車のデザイナーは、本質的にクリエイティブである。彼らにとっての重要なインスピレーションはアートと哲学だ。ピカソは「私はいつも自分ができないことをしている。そうすれば、できないことがなくなって、できることが多くなるからだ」という名言を残している。想像力に崇高な価値を見出していた彼は「想像できることは、すべて現実なのだ」とも語っている。一方、20世紀を代表するオーストリアの哲学者、ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、 「人々がときに”ばかげた”ことをしでかさなければ、賢明なこともまったくなされないことになる」と説いた。メルセデス・ベンツ デザインチームは、これら先人の思想を強く受け継ぎながら、不可能を可能にし、困難に立ち向かう。理想的な未来を思い描き、常に新しさを追い求めながら、自動車に乗る全ての人の情熱とロマンを刺激するために。
新しいデザイン言語はテクノロジーから生まれる
ゴードン・ワグナーと彼のチームが手がけるデザインは、より良く、より美しく、よりインテリジェントな未来を創造するために、さらにシンプルに、さらに複雑なものへと進化している。未来へのビジョンを具現化していくなかで、メルセデス・ベンツが目指すクールで緻密なデータ集約型のテクノロジーは、デザインの向かうべき方向を強く決定づける。それゆえに、ワグナーたちは、1955年型300 SLに匹敵するほどエキサイティングなデザインを生み出さなければいけないのだ。冒頭で紹介したMercedes-Benz Future Worldは、この命題に対する彼らの独創的な回答なのだ。
デザイナーが夢見る未来のビジョン
Mercedes-Benz Future Worldは、デザイナーが夢見る未来の世界がいかに魅力的で大胆、かつ現実的なビジョンとして形をなしているかを示している。道路、橋、ヴィラ、高層ビル、車、ボート、航空機など、そこに描かれているのは未来の、さらに未来の環境だ。Mercedes-Benz Future Worldは、感情と理性、“Hot and cool”の融合を意味する“Sensual Purity”の哲学に基づいている。
デザイナーは己の心の中を旅し、自身が創造する世界を探検する。建物、オフィス、車、通り、橋。インフラストラクチャーが進化した未来において、Mercedes-Benz Future Worldはどのように具現化されるのだろうか。メルセデス・ベンツのプロダクトは、このビジョンの重要な要素として、美しく、インテリジェントであることを目指し、進化する。