その登場以前は、コンサバティブなボディスタイルであった4ドアノッチバックスタイル。だが、2004年、初代CLSの登場によって新たなジャンル、4ドアクーペが世界中で高く評価され、そして大きなムーヴメントとなった。あれから14年。新しいCLSはまた私たちをどのように驚かせてくれるのだろうか?
まず、デザイン面では今回から新たなコンセプトが採用され、より動的なスタイリングとなった。フロントマスクはダイヤモンドグリルとシングルバーおよび、車両後方に向かってダイナミックに切れ上がったヘッドライトから構成されるデザインとしたことで、スポーティな印象となった。サイドはエッジやラインを削ぎ落とし、曲面による凹凸で陰影を表現した、滑らかな面構成が妖艶だ。そして、リアはテールライトやエグゾーストパイプが水平方向に展開されることで、低く安定感のあるアピアランスを実現している。スポーティでありながら、エレガンスを兼ね備えた大人のための4ドアクーペ、それがこのCLSだと言えるだろう。
新しいCLSのもう一つの注目がパワートレインだ。
CLS 450 4MATICには新開発の3リッター直列6気筒ツインスクロールターボエンジンを搭載。先に登場したS 450にも搭載されるこのエンジンはメルセデスとしては1997年以来約20年ぶりとなる直6モデル。エアコンディショナーやウォーターポンプなどを電動化することにより、ベルトレス化を実現したコンパクトなエンジンだ。そこにISGや48V電装システムを組み合わせる。ISGとはIntegrated Starter Generatorのことで、エンジンとトランスミッションの間に配置された電気モーターで、オルタネーターとスターターの機能も兼ねている。このIGSに48V電装システムを組み合わせることで、回生ブレーキによる発電を行うなど、いわゆるマイルドハイブリッド車のような働きをする。また、スターターが従来より高出力な電気モーターであるためエンジン始動時の振動を抑え、エンジンスタートおよびアイドリングストップの際の再スタートの快適性を向上したという。これらのシステムにより、CLS 450 4MATICは367PS/500Nmという出力を誇る最新の直列4気筒ディーゼルエンジンを搭載するCLS 220 dを含むすべてが9速A/Tと組み合わされる。
メルセデスならではの安全性能はもちろん、最新のテクノロジーが惜しみなく注がれている。Sクラスにも搭載されている最新のレーダーセーフティパッケージ(RSP)に加え、PRE-SAFE®インパルスサイドも搭載。
アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックは、これまでディストロニック・プラスの名称であったもので、操作レバーからステアリング上のスイッチへとスタイルが変更され、手元で簡単に操作できるようになった。
PRE-SAFE®インパルスサイドは、前後だけでなく、横方向からの衝突安全性を高めたメルセデス初の安全機能で、レーダーセンサーが速報衝突を検知。衝突の約0.2秒前にシートバックショルダー部分に内蔵されたエアチャンバーを膨張させ、ドライバーまたは助手席乗員を車両中央方向に押し出す。同時に、前席乗員と衝突してくる車両との距離を確保することで、衝撃の緩和を図る。すなわち新型CLSは横方向からの衝撃も緩和する機能を搭載したことで、全方位的な安全性を持つモデルとなった。
ほかに、Mercedes me connectやメルセデス・ベンツ24時間コンシェルジュサービスも標準装備。スマートフォンを使って遠隔駐車を可能とするリモートパーキングアシストも標準で搭載する。
インテリアに目を移すと、最新の12.3インチのコックピットディスプレイが存在感を放つ。さらに、64色のアンビエントライトと連動してエアコンの吹き出し口が光る、イルミネーテッドエアアウトレットをメルセデスとしては初採用。車内温度を上げると赤く、下げると青く光り、視覚的にも温度調整を確認することができるという、デザインコンシャスなCLSならではの上質感が演出されている。また、旧型モデルを上回る通常時CLS 450 4MATICで490L、CLS220 dでは520Lのトランクスぺース(VDA方式)や、乗車定員を従来の4人から5人に変更し、40:20:40の分割可倒式シートを採用するなど、より実用性も高められている。
なお、車両本体価格はCLS 220 dスポーツが799万円、CLS 450 4MATIC スポーツが1,038万円、となっている(金額はすべて税込み)。
今回、この新しいCLSのヴィジュアルディレクションを担当した写真家・若木信吾氏は、都市ではなく、あえて森の中を駆け抜けるシーンを象徴的なものとして撮影。その理由について「森には木があって、直接日が当たらない。それは、都会でビルの中を走るのとなにか似ているように思います。森の中に佇むCLSは、その丸みを帯びた流れるようなフォルムに木々の直線的な映り込みが美しく折り重なり、よりその流麗な美しさを際立たせています。それは、直線的なビルが映り込む都市での姿を想起させ、深くイマジネーションを喚起すると思ったのです」という。
「かっこいいクルマを運転しているとき、外から見たクルマの姿、例えば俯瞰の映像を想像しながら乗ることがあると思うのです。車内にいて運転しているけれど、車外の様子を想像しながら乗る。CLSはこれをとてもイメージしやすいクルマですね」
「クルマを撮影するときに意識するのは、ディテールに寄ることと、全体のフォルムを引いて見せること。正反対の距離感を通じて、クルマ全体の美しさを表現できるのだと考えます。ディテールに寄れば寄るほど“アラ”を感じるクルマもあるけれど、このCLSにはそれが見られない。逆に引いて見せても存在感がある。どんな距離感、どんな視点で見ても美しいクルマですね」
「もともと、メルセデスに対する信頼感は強い」という若木氏。グレードアップした上質感やデザインに、メルセデスの新しい魅力と進化を発見していたようだ。