1950年代以降、全世界の都市におけるライフスタイルの多様化、技術並びにモータリゼーションの進歩に伴って、大衆車のあり方も変わっていった。とりわけデザインには、その変遷が端的に表れている。それまでは箱型のボディの両側に車輪がジョイントされている、馬車を思わせるものが主流だったが、段々とボディとフェンダーが一体となっていき、現代のカーデザインの基礎ができあがった。この変化によって、デザインや空間構成の自由度が高まっていったと考えられる。
そういった背景を象徴する存在といえるのが、1954年にリリースされた300 SL。レーシングカー由来の流麗なデザインや走行性能が後押しし、大ヒットを記録したモデルである。そしてもうひとつ同車を特徴づけたのは、銀色のボディに採用された赤一色の眩いインテリアだった。以後、メルセデスのスポーツモデルの内外装には赤がたびたび用いられるようになり、スポーティネスをアピールする格好の要素となった。

それから約半世紀後、2016年に誕生した300 SLをルーツにもつSLCは、現在、メルセデスが展開する2シーターの中心的なモデルとなっている。その名の通り、Cクラスセグメントのコンパクトなボディながら、プロポーションはロングノーズ&ショートデッキのダイナミックなもの。フロントに14.9km/ℓ(JC08モード)という低燃費と1520kgの車体を運ぶのに十分な最大出力156PS、最大トルク250N・mというパワーを両立させた1.6ℓ直列4気筒BlueDIRECTターボエンジン(SLC 180 Sports RedArt Edition)、もしくは最大出力367PS、最大トルク520N・mを発する3.0ℓAMG V型6気筒直噴ツインターボエンジン(Mercedes-AMG SLC 43 RedArt Edition)を積み、ルーフフレームにマグネシウム合金を用いた軽量かつ頑丈な電動格納式ハードトップ、バリオルーフを装備。SLCはロードスター然としながら扱いやすいサイズ感をもち、走行/燃費性能のバランスも取れている、非常に都会的なライトウェイトスポーツなのだ。
現在、期間限定で導入されているRedArt Editionは、赤のアクセントを内外装の随所に散りばめ、SLCがもつスポーティネスを際立たせたモデルだ。今回の記事で紹介している、1.6ℓ直列4気筒エンジンを搭載するSLC 180 Sports RedArt Editionは、 エクステリアについてはフロントスポイラーリップ、サイドエアアウトレットフィン、リアディフューザートリム、フロントのブレーキキャリパー。インテリアについてはシートの縁やドア裏などに赤のラインが与えられ、さらにはナッパレザーシート、ホイールが専用デザインとなり、ギヤセレクトレバーとセンターコンソールの全面にはカーボンパターンが貼られている。また、3.0ℓAMG V型6気筒を積むMercedes-AMG SLC 43 RedArt Editionは、さらに赤のアクセントが増え、運転状況に応じて自動的に減衰力を最適化するAMG RIDE CONTROL サスペンションが追加される。主な変更点は、いずれもエッジパーツではあるのだが、これらによってタイトさが増した。そして何よりも、赤はメルセデスにとってスポーツモデルであることの証なのだ。 SLC 180 Sports RedArt Editionは616万円、Mercedes-AMG SLC 43 RedArt Editionは984万円。
ABOUT CAR
SLC RedArt Edition
都市を鋭く駆ける、赤い刺激に満ちたロードスター。
上質なオープンドライブを愉しめるSLCに、スポーティネスあふれる限定モデルが登場。