ハイブリッドを再定義する
ディーゼルハイブリッド S 300 hの誕生
Sクラスから新しく登場するS 300 hは、メルセデス初の「ディーゼルハイブリッド」。
カナダで試乗しましたが、これは、ハイブリッドであることの意味がすごく強いですね。ディーゼルエンジンとモーターが出会ったことで、これでようやくハイブリッドが完成したかのような感じです。

これまでのハイブリッドシステムは、ガソリンエンジンとモーターの組み合わせ。ガソリンエンジンの特性としては、トルクが後から出てくる。モーターの特性としては、電流を流したら最大トルクが最初に出てしまう。こうした組み合わせでは、ガソリンエンジンのトルクの立ち上がりの弱いところをモーターで補完しているわけで、強さにはなっていない。しかし、ディーゼルエンジンは、最初から低速トルクがガソリンのターボよりも大きいですから、それがモーターのトルクと重なるわけです。
だから、S 300 hの誕生により、ハイブリッドがディーゼルンジンを得て、初めてハイブリッドの本懐を遂げたという気がしました。これは美辞麗句ではありません。

何を求めるかで選びたい、3つの個性のSクラス。
Sクラスでいえば、S 300 hとS 400 h、S 550 long、それにS 550 e long。つまりディーゼルハイブリッドと、ガソリンハイブリッド、V8のツインターボエンジン、V6のプラグインハイブリッド。それぞれパワートレインに個性がありますから、その個性をしっかりと把握したい。やはりガソリンエンジンは、エンジン回転もあるのでアドレナリンが一番出る。だからカーンと回した気持ちよさを求めるなら、S 550 longがいい。また、街中を電気で走りたいんだったら、プラグインハイブリッドのS 550 e longを選べばいい。実利で取るんだったら、S 300 hかなという気はします。

なぜディーゼルにプラグインがないのか、という質問が出るかもしれませんが、おそらくガソリンエンジンは燃費が悪いので、やはりプラグインで走行距離を伸ばす方がCO2削減にはなる。ディーゼルはもともと燃費もよくCO2の削減にも貢献できるから、プラグインまでいらないという考え方だと思います。
大きなクルマで大きなエンジンを回して、小さなクルマでエコドライブをやるのはむしろ逆。小さなクルマはもともと環境負荷が小さいから、思い切り走ってもたいしたことはありませんが、大きいクルマが思い切り走ると、ぐっと燃費が悪くなる。
ですからもう発想を、旧態依然とした考え方から変えていくべきですね。むしろこれからは「ノブレス・オブリージュ」ではないですが、やはり富裕層や社会的な地位の高い人たちが率先して、サスティナブルなことをやるべきだと思います。
モータージャーナリスト 清水和夫

1954年生まれ東京出身。1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースで活躍する一方、モータージャーナリストとして、多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとしても多数出演。国際産業論に精通する一方、スポーツカー等のインストラクター業もこなす異色な活動を行っている。
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Sクラス セダンは、安全性かデザインか、パワーか効率化か、快適さか運動性能か、といった選択ではなく、あらゆる面で『最高であること』を目指し、きたるべき未来の自動車に通じる先進テクノロジーの数々が搭載されています。