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OLD JOE・髙木雄介さんを、昂らせる愛車

Photo:Masato Moriyama
Words:Satoru Yanagisawa

OLD JOEのデザイナーである髙木雄介さんが所有するメルセデスは、1958年製の220 S。「ポントン」の愛称で知られるクラシックカーで向かった先は、公私にわたって親交があるというハンバーガーショップ。

さまざまな年代や国籍のヘリテージデザインからインスピレーションを受け、素材やディテールにこだわった妥協のない服作りに定評のある「OLD JOE」。デザイナーの髙木さんは古きよき時代のプロダクトデザインにも造詣が深く、アトリエには希少なヴィンテージ家具やアーリーセンチュリーのフォークアートが並び、渋谷に構える旗艦店では自身が惚れ込んだ工芸品ともいえる自転車やナイフなども販売している。

ボンネット
ハンドル
ホイール
バンパー

そんな髙木さんが所有するメルセデスは、1958年式の220 S。1951年にデビューした、現在のSクラスの源流となる「タイプ220」シリーズに属する小型乗用車で、その丸みを帯びたボディ形状が特徴。舟橋を連想させることから「Ponton(ポントン)」との愛称で親しまれ、1955年から1961年の間製造された名車だ。今ではあまりお目にかかることのできない“お宝”として、自動車愛好家垂涎のモデルとしても知られている。

「僕らの造る服もそうであるように、クラシックなもの、アナログなんだけど、とびっきりモダンなものに惹かれるんです。クルマも古いものを探していたところ、4年くらい前に知人に勧められ、譲ってもらったのがこの220 S。トム・フォードが監督した映画『シングルマン』の主人公がこのクーペに乗っているのを観て、すごくきれいなフォルムだなと思っていたんです。もともとの外装色は赤だったのですが、僕自身、黒が好きなのでオールペイントでブラックにしました」

ヘッドライト
インパネ
ライト
灰皿

クラシックなものに目がないとはいえ、初めて所有したクルマがこの220 Sだというから堂に入っている。

「この時代のメルセデスはヨーロッパ的な洗練されたシルエットはもちろん、どこかアメリカ的な武骨さも漂わせていて、ミッドセンチュリーの独特な雰囲気と工業製品としての機能美を兼ね備えているなと。そんな部分はOLD JOEの服にも通じるところがあります。僕はドイツ製のプロダクトが好きで、ライカやモンブランなどは道具としてしっかり機能しながら、デザイン性にも優れている。とはいえ、最初は運転に苦戦したのも事実です。当然ミッションはマニュアルですし、パワステはついていませんし、坂道は特に大変。気づいたら、そういう道は避けるようになっていました(笑)。でも、クラッチを踏んで、シフトチェンジする、そんな手間が愛おしいんです」

GOLDEN BROWN

そんな愛すべきクルマを走らせ向かった先は、山手通り沿いにたたずむハンバーガーの名店「GOLDEN BROWN」。クラシックな趣のある店の外観と220 Sが絶妙にマッチし、その光景はあたかも、1950年代のハリウッド映画の世界にタイムトリップしたかのような錯覚さえ起こさせるほどだ。

「このお店の看板やウインドーは、いっしょにブランドをやっているサインペインター、NUTS ART WORKSが手がけていて、TシャツやエプロンもOLD JOEが手がけたものなんです。ここのオーナーとも仲よくさせてもらっていて、ともに今年で10周年ということもあり、近く何かおもしろいことをやろうと計画しているところです」

Spot information

GOLDEN BROWN

GOLDEN BROWN

http://www.goldenbrown.info/
ADDRESS 東京都目黒区東山2-3-1
TEL 03-6661-8560
ACCESS 東急田園都市線「池尻大橋駅」徒歩9分、東急東横線、東京メトロ日比谷線「中目黒駅」徒歩11分
営業時間 11:00~22:00(L.O.21:00)
定休日 無休
駐車場 無し

高木雄介さん

髙木さんのお気に入りは、マッシュルームとスモークチーズが入った人気メニュー「ゴールデンブラウンハンバーガー」(1,417円)。

「このクルマの場合、なかなか遠出するというわけにはいきませんが、とはいえクルマですから“鑑賞用”にというわけにはいかない。洋服も家具も、そしてクルマも、使ってこそ意義がある。週末のちょっとした外出や、気分転換に夜ドライブするなど、あくまで普段使いしています。今度時間があったら、浅草や根津などをドライブしてみたい。そんな下町にすごく似合うと思うんですよね」

OLD JOEの腕時計

OLD JOEの腕時計は、アラビア数字、ローマ数字、バーインデックスで構成されたユニークダイヤルによる文字盤にこだわりあり。最終仕上げでハンドエイジングを施し、ヴィンテージ感を加速させている。アクセサリー感覚でつけられる小ぶりでクラシックな時計が、220 Sにもマッチ。

「アスカリ・バイシクルズ」 コラボキーホルダー

ブルックリンを拠点に活動するビスポークスタイルのバイシクルメーカー「アスカリ・バイシクルズ」。その国内唯一の取り扱い店こそOLD JOE FLAGSHIP STOREだ。そんなパートナーシップから実現したのが、髙木さん自身も愛用する、両者のコラボレーションで生まれたこのキーホルダー。

サンタ・マリア・ノヴェッラのポプリ

古いクルマだけあって、車内では微かにオイルのにおいを感じることも。それを解消するために、サンタ・マリア・ノヴェッラのポプリを常備。

ステアリングを握っている瞬間

柔らかな革製のシートに腰を沈め、ステアリングを握っている瞬間が最高に気持ちいいと言ってはばからない髙木さん。

「年配の方ももちろんサマになりますが、こんなクラシックカーは、僕らのような若い世代が乗ってこそかっこいいと思うんです」

 

PROFILE

髙木雄介/Yusuke Takagi

髙木雄介/Yusuke Takagi

1979年生まれ、香川県出身。盟友でもあるサインペインターのNUTS ART WORKS氏とともに、2008年に「OLD JOE」をスタート。1930年代から50年代のプロダクトへの造詣が深く、パタンナーであった経験を生かし、ブランド設立当初より一貫して自社での生産工程をおこなう。

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