広告からアーティストまで、ジャンルの垣根を越えたあらゆる題材を“演出”する千原徹也さん。組織的な肩書きは自らのデザインオフィス、株式会社れもんらいふのCEOであり、個人的な肩書きはアートディレクターである。「アートディレクターって具体的にどんな職業なのかわかりづらいですよね? だから形に囚われず何でもやれるし、むしろ、意識的にそうしていこうと」

氏の作品に見られる他のクリエイターとのコラボレート、時代の空気を取り入れたポジティブな違和感──。「プロですから、基本を押さえるのは当然ですが、それだけでは僕は物足りない。他者が絡むことで生まれる思いもよらぬケミストリーだったり、目や耳や気持ちにひっかかる何かがあって初めて、見聞きしてくれた人たちに伝わると思うんです」
そんな千原さんは2016年、「れもんらいふ塾」なる取り組みをスタートさせた。塾生は業界人から学生まで様々だが、カリキュラムはありきたりなセミナーではなく、最終的には実際の広告戦略や商品につながる実践の場となっているのが大きな特徴だ。ゲスト講師にお笑い芸人を起用するのも、“新しい何かが生まれる”ことを狙ってのことである。「1期につき半年のスパンでやっていますが、みんな仲良くなって、本当の学校みたいにものすごく楽しいです。塾を経験してクリエイティブ業界に進む若い人もいれば、異業界の勤め先で塾の経験をフィードバックしている方も。最後は卒業作品みたいなものを作るんですが、どちらかといえばプロセス、気づきやきっかけを大事に考えています」
この卒業制作では、京都の伝統工芸や企業とコラボレートし、塾生たちは実社会やビジネスに役立つアイデアをブラッシュアップしていくのだという。3回目となる今年のテーマは“京都の街を走るモビリティをデザインする”。その会場となるのが、この6月でオープン1周年を迎える「smart center 京都, the garden」なのだ。

smart center 京都, the gardenは、カフェ .S(ドットエス)を併設する日本初のsmart専売店。京都らしい伝統的な和のしつらえとsmartのユニークネスが調和した空間に、最新・稀少モデルなどを幅広くラインアップしている。もちろん試乗も可能だ。オープンして1年の間で、平安神宮や京都市動物園などのある岡崎エリアにすっかり定着。週末や休日ともなると、多くの人たちが立ち寄る憩いの場となっている。千原さんは、小学生時代に当時まだ走っていた路面電車に乗って岡崎エリアによく来ていたという。

「初めて訪れて、京都らしさとsmartのイメージが調和した、とても魅力的な空間だと感じました。自然光がたっぷり入って居心地も良くて。カフェもフレンドリーな雰囲気で、つい長居してしまいますね(笑)」


この日、千原さんは抹茶ラテをオーダー。コーヒーはもちろん、京都らしい「和」を感じさせるドリンクメニューも魅力だ。

れもんらいふ塾を京都で始めた理由は、「東京ではこの手のセミナーはいくらでもあるけど、これが関西になるとほとんどないから、その拠点にしたい」というのに加え、千原さんの出身地だったこともある。今でも晩ごはんを食べにふらりと訪れることもあるというほど、千原さんにとっては身近な場所だ。「京都に来ると20代の頃にタイムスリップした気分になるんです。東京って建物ごと、街ごと変化するけど、京都は建物はそのままで中身が変わることがほとんど。初心に帰るっていうのは大げさかもしれないけど、感覚や気持ちがリセットされるんです。ある意味、原点ですね」
そして、smartは、自身の“クルマの原点”につながると千原さんは言う。

「格好いいもの、本格的なものがデザインの王道だとしたら、僕はそれとは距離を置きたくて、かならず“かわいい”のエッセンスやニュアンスを入れるようにしています。良い意味での隙があると、親しみがもてると考えるから。smartはその点で僕の仕事のスタイルにフィットするし、『どうして選んだの?』と聞かれても、『かわいいから』と答えられる秀逸なデザインだと思います」

「他にはない個性をもったデザインが何よりの魅力だと思いますが、加えて、ボディカラーもとてもユニーク。例えばsmart forfourのミッドナイトブルー×ホワイト、イエロー×ホワイトといったポップなカラーが選べるのはsmartならではの楽しさ」
smart center 京都, the gardenには自由に内外装色を組み合わせたsmartをオーダーできるBRABUS tailor madeのコーナーもある。「エクステリアのペイントカラーだけで36色、インテリアもステアリング、シート、インテリアトリムまで好きなカラーでカスタマイズできるなんて楽しいですね」と、千原さんは目を輝かせた。
「子どもの頃、実家にあったのがsmartのような小さくてかわいいクルマだったという原体験もあって。自分がもしいつかクルマを所有し、乗るとしたら、smartは最有力候補ですね」
smart
Spot information
smart center 京都, the garden
https://www.smartcenter-kyoto.jp
ADDRESS 京都市左京区岡崎南御所町20-1
TEL 075-754-5100
営業時間 ショールーム10:00~18:00/カフェ8:00~18:00
定休日 水曜(祝祭日除く)
駐車場 有り。満車時・混雑時は近隣の有料駐車場をご案内。
PROFILE
千原徹也/TETSUYA CHIHARA

1975年京都府生まれ。アートディレクター/グラフィックデザイナー/株式会社れもんらいふ代表。広告、装丁、ファッションブランディング、WEBなど幅広いフィールドでアートディレクションを行う。