走り出した瞬間に感じた良さ
「これはベストAクラスかも!」
試乗会場を出て、一般道を走り出してすぐにそう直感した。今年の頭に登場した新型Aクラスに新たに加わったディーゼル・エンジン搭載モデルであるA 200 dは、そんな第一印象を与えてくれたのだ。

なぜそんな風に感じたのかを…記す前に、まずはこのA 200 dのプロフィールを記しておこう。
A 200 d最大のトピックは、先に記した通り新たにディーゼル・エンジンを搭載したこと。このディーゼル・エンジンは2.0Lの排気量を持つ新世代の直列4気筒直噴ディーゼルターボで最高出力150ps、最大トルク320Nmを発生する。
このエンジンは既に、CクラスやEクラスにも搭載されているOM654型と呼ばれるタイプ。ただしCクラスやEクラスのそれはエンジンルーム内に縦置きされるのに対して、Aクラスの場合は横置きされる。また組み合わせられるトランスミッションもCクラスやEクラスは9速ATとなるが、Aクラスの場合は新たな8速ATと組み合わされる。AクラスでもA 180は7速ATだから、このA 200 dのトランスミッションはまた新たなものである。
さらにAクラスに搭載されるこのエンジンは、型式もOM654qというCクラスやEクラスとは少し違ったものとなる。理由はこのエンジンが、最新の排ガス処理システムを搭載しているから。
最新の排ガス処理システムを搭載したクリーンディーゼル
もともとCクラスやEクラスに搭載されるOM654は、低圧と高圧の2つのEGRによってNOx低減を行なっており、さらにDPFにSCRコーティングを行なってPMだけでなくNOxも処理するパティキュレートフィルターを採用している。そしてAクラスも同様のシステムを採用するのだが、それに加えてさらに2つのSCRとアンモニアの排出を防止するASCを装備するという、他に例を見ない排ガス処理システムとなっている。そしてこの結果、現時点では欧州の排ガス規制であるユーロ6dのNORMをクリアする唯一のエンジンなのだ。

なかなかに難しい話になったが、要は現時点で欧州の最も厳しい規制をクリアしたディーゼル・エンジンということである。
では、実際にこのエンジンを搭載したA 200 dがどんな走りを見せてくれたのかを記していこう。
まず320Nmという、ひと昔前ならば3.0Lクラスのエンジンと同じくらいの最大トルクを持っているだけに、走り出しはかなり力強い。しかもこの最大トルクは実に1400回転から発生されるので、普段深いで最も力強い領域を使って走ることになる。もちろん力強いのでアクセルを少し多めに踏み込めば圧倒的なダッシュ力を誇るし、一方で普段使いでは少しアクセルを開けるだけで余裕を感じながら走ることができる。
さらにいえば、このエンジンが持っている力が大きいので、走り出しはわずかにアクセルを開けるだけで滑らかに加速していくのも良いところ。だからガソリンエンジンのA 180と比べると、もっと大人っぽい感覚が増したように感じるのだ。
8速ATは街中を走っている段階から、矢継ぎ早にシフトアップを行なってくれてなるべく高いギアで走るため、例えば時速60キロでも6速に達する。なので軽快な走りを実現すると同時に燃費にも貢献してくれる。

また高速道路に乗ると、100キロでは8速でエンジン回転も1500回転を下回るほどなので、やはり燃費の良さに貢献すると同時に、エンジン回転が低いので静粛性も極めて高い状態が維持されて快適だ。
ディーゼルを搭載して、さらに成長を果たした
また、ディーゼル・エンジンの搭載によって車両重量はカタログ値で、A 180よりも120kg重くなるのだが、この重量増が実は走りにかなり効いていることもわかった。
というのも車両重量が増したことで、乗り心地がさらに良くなったのだ。だから例えばA 180のAMGライン装着車だと、その乗り味はスポーティでやや硬めの踏ん張りを見せる感じだが、これが今回の試乗車であるA 200 dのAMGラインだと重量増によってサスペンションがよりしなやかに感じられるのだ。
だから一般道から高速に至る全域で、その乗り味は重厚かつ心地よさが生まれるものとなっており、実に良いバランスとして感じられるのである。

つまりA 200 dはディーゼル・エンジンを搭載したことによって、あらゆるシーンでまず静かで滑らかで力強いが体感できて、その上で乗り心地にも優れた走りを感じることができるモデルに仕上がっていたのだ。
もちろんA 180のコンパクトカーらしい軽快な乗り味走り味もとても魅力的だが、A 200 dはさらに成長を果たして、大人っぽさという新たな魅力を持つモデルだといえる。それゆえに乗ってみて、ベストAクラスと感じたのだった。