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メルセデス・ベンツGクラス再評価<後編>

現代のクルマとは異なる感触の様々

スターターボタンではなく、キーをひねってエンジンを始動する。この時にボディにブルッと振動が伝わるのが、最近のメルセデスとは少し違うところかもしれない。そうしてATのセレクターレバーをDにして走りだす。

アクセルは、踏み込みの最初のところがとても重く感じる。かつてのメルセデスのモデルに共通する、しかしながら今では忘れ去られつつある感触だ。するとG 350 dは少しダルそうに動き出す。アクセルを踏んでからわずかな間をおいて、ゆっくりと走り出す感覚が現代のクルマとは違う。

G 350 d

走り出すと、路面から伝わる感触もまた現代のメルセデスとは少し違うことに気づく。まずボディが極めてガッチリとした、高い剛性を感じさせる。自分はまさにカタい箱に囲まれている、という感覚が強くある。

そして乗り味は、どこかになんとなく硬さが漂う。大径かつ重いタイヤが路面の段差や荒れたところを乗り越える時に、少しボディを揺するような感覚がある。しかし、乗り心地は決して悪いわけではない。というか、基本設計が古いクルマにも関わらず、よくぞ現代のクルマと大差ない乗り心地を実現できたものだと思えるほどだ。

エンジンは今回、3.0Lのクリーンディーゼルを搭載しているだけに、力不足は全く感じない。最高出力244ps、最大トルク600Nmを発生するディーゼルだけに、力強さはむしろ十分以上である。ただし、車両重量は2580kgとヘビー級なので、動き出しは重さを感じる。だが走り出すと豊かなトルクでボディがグイグイと押されていき、滑らかな加速感に変わっていくのである。

Gクラスの基本は昔のままである。が、装備的には常にアップデートがなされていて、実はこの試乗車にもしっかりと、前走車を追従してアクセル/ブレーキ操作をクルマ側で行なってくれるディストロニック・プラスが備わっている。これは意外ともいえる点だが、前編で車内にUSBポートが備わると記したのと同じように、装備に関しては限りなく現代のクルマに近いものがあるのだ。

実に印象的なステアリング・フィール

ズシリとした感触を伴い、豊かなトルクでGクラスは首都高を悠々と進んでいく。そうしてカーブが来て、ハンドルを操作する。するとそこには、現代のクルマとは明らかに異なるステアリング・フィールがあると気づく。それはGクラスのステアリング形式によるものである。

G 350 d

現代のクルマはほとんどが、ラック&ピニオンという形式のステアリング機構を備えているが、Gクラスの場合はリサーキュレーティング・ボール式と呼ばれる機構を備える。ボールナット式とも呼ばれるこの機構は、ハンドルを捻るような感触とある程度の重みがあり、ドライバーにしっとりと、いや、ねっとりとした感触を伝えてくる。まさにハンドルを回している、という感じが強く伝わるもので、それは軽く回る現代のラック&ピニオンとは全く異なるフィーリングだ。もちろんその分、ハンドルのロック・トゥ・ロックも多いため、通常のクルマよりもカーブで多くハンドルを回す必要もある。またハンドルを回したあとは、自分である程度戻す必要もある。といった具合で、現代のクルマとは全く違うわけだが、その分、味わいはこれ以上ない濃さを持っている。

首都高を経て、アクアラインを走る。現代のクルマから比べれば、直進安定性では譲る部分もある。しかしながら、クルマ全体から伝わるズシリとした感触は、何ものにも代え難い安心感を与えてくれるし、このクルマに身を委ねて、のんびりとどこまでも進んでいきたい、と思わせるものがある。

Gクラスを再評価して、改めて気づくもの

そうして改めて感じるのは、ドライブする、という豊かな時間がそこにあること。最近では、ともすれば安全で快適が極まったクルマが多くなったため、ドライブが単に楽な移動という感覚になりがちである。もちろんそれは現代の自動車においては、とても重要なことでもある。だが、Gクラスに乗ると、現代の最新と引き換えとなった、ドライブするという濃密な時間を改めて意識できるのである。

窓の外を流れていく景色や目の前に広がる道路を、まさに自分自身が運転して走っている…そんな当たり前を強く感じる。カッチリとしたボディ、力強いエンジン、じんわりと感触を返すハンドル、重みのあるペダル…そうした感触の様々を確かめつつ走っていると、どこかホッとできるものがある。

Gクラスをいま、改めて再評価してみたら、そこにはかつて多くの自動車がもたらしてくれた豊かさが、ギッシリと詰まっていることに気づいたのだった。

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強力なオフロード性能をもたらす究極の機能。永遠の愛着に応える堅牢なボディ。新たな前進とともに、さらなる孤高の頂へ。

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