今回、取材に同行させていただいたのは、BEAMSの社長室新規事業部で企業や自治体のプロモーション支援を手掛けるかたわら、「BEAMS釣り部」の主将もつとめる相田高史さん。

インテリア・雑貨が好きでBEAMSの雑貨ショップのアルバイトからキャリアをスタートさせた相田さんは、ギア選びにもひとかたならぬこだわりがある。それは仕事はもちろん、趣味である釣りでも同じこと。

「ギアを選ぶときに大切にしているのは、ブランドが持つ背景やストーリー。特にドイツのブランドが好きで、バウハウス※の精神が受け継がれた、機能的で無駄のないデザインに惹かれますね」
※バウハウス…第一次世界大戦後にドイツ中部の街ワイマール共和国に設立された美術学校。モダンデザインの基礎を作り、世界中の建築やデザインなど、さまざまな分野に多大な影響を及ぼした
そんな彼が相棒に選んだのが、ドイツのモノ作りの哲学を体現するメルセデスのCクラス ステーションワゴンだ。


今回、このクルマに乗りこんで、目指すは若葉萌える渓流。今一番のめりこんでいるという日本古来の毛バリ釣りテンカラに向かった。数ある釣りの中でも最もミニマルな釣りとも言われるテンカラ。彼の遊びのスタイルにどこがマッチしたのだろうか。

子どもの頃から地元の宮城で釣りを楽しんでいたという相田さん。若い時にはとにかく魚を釣りたいという気持ちが強かったが、大人になった今はその気持ちが変わったそうだ。
「今の僕にとって、釣りは自分をリセットする貴重な時間。自然の中で川のせせらぎを聞きながら、魚を釣ることだけに集中していると、仕事のことを一切忘れられるんです。自然豊かなロケーションはもちろんですが、そこに行くまでのドライブも気持ちいいリフレッシュタイムになっています」

Cクラス ステーションワゴンで釣り場までのドライブを楽しんだ相田さん。
「高速での安定感と乗り心地もバッチリだし、なにより山道に入ると走り出しがスムーズでグングン進むところが頼もしいですね」と、1.5ℓ4気筒直噴エンジン+モーターの力強さを感じていたようだ。
シンプルですっきりしたインパネまわりと、ステアリングのインダストリアルな質感もお気に入りだという。彼にとってはクルマも釣り道具のひとつ。Cクラス ステーションワゴンにもギアとしての魅力を感じたようだ。

到着したのは山梨県大月市にある「奈良子釣りセンター」。中央自動車道の大月ICから約20分という好アクセスながら、うっそうと茂る緑の中で渓流釣りが楽しめる管理釣り場だ。相田さんがここを訪れるのは初めて。テレビの釣り番組などで見て一度訪れてみたかった場所だということで、準備をしながらもワクワクする気持ちが伝わってくる。

愛用のpatagoniaのウェーダーに身を包み、手にするのは明治創業の老舗釣り竿メーカー「桜井釣漁具」とセレクトショップ「ネペンテス」のオリジナルブランド「SOUTH2 WEST8」がコラボレーションしたテンカラ竿だ。「非常にコンパクトなテンカラロッドなので、車に入れっぱなしでドライブでいいポイントがあったら手軽に釣りが楽しめるところも気に入ってます」(相田さん)。サングラスはTALEXの偏光レンズに替えたOrkleyのものを愛用、そしてスタイリングをシャープに引き締めているのは、ビームスのオープニングハットだ。

プライヤーはKNIPEX チャーマスモデル。メルセデスと同じドイツのブランドのもので、精巧かつ質実剛健なデザインが気に入っているのだそう。
テンカラは日本伝統の毛バリ釣り。道具はコンパクトかつシンプルで、数ある釣りの中でも最もミニマルな釣りのひとつだ。トレッキング中にバックパックからさっと取り出して楽しむには最適な釣りなので、アメリカなどでも“TENKARA”は人気が急上昇しているという。
相田さんがテンカラを始めたのは、子どもが生まれたことがきっかけ。近場でさっと楽しめて身軽に出かけられるテンカラは、育児と両立するには最高の釣りなのだとか。去年から始めてまだ回数は片手ほどだが、いつかは北海道の広大なフィールドでテンカラをするのが夢だと語ってくれた。

セッティングを終えたらさっそく渓流へ。管理釣り場といっても、奈良子川の渓流がほぼそのままの状態で利用されているので、野趣あふれるフィールドだ。渓谷に緑が覆いかぶさり、緑のトンネルのようになった釣り場は、一歩足を踏み入れると空気が変わったように涼しくなる。

「思ったより冷たいですね」ジャバジャバと川を渡るときに水の冷たさが足に伝わってくる。言葉には出さなかったが、この水温が魚にどういった影響を与えるのか考えているようだ。こうやって感覚を研ぎ澄ませるうちに、日常のことはすっかり忘れられるのだ。

3メートルほどのロッドを慣れた手つきで振り、毛バリを流す。じっと水面を見つめ、反応がなければ、上流へと釣り上っていく。

バシャ。水面を流れる毛バリを魚が口に入れた瞬間を相田さんは逃さなかった。あおったロッドが弧を描く。たった3mほどの釣り糸を通して、魚とのやり取りを楽しむ至福の時間だ。楽しませてくれたのは30センチ弱のニジマスだった。


日が高くなって渓谷にも日が差し込んできたころ、ロッドを置いてコーヒーブレイク。


前回の釣行ではキャストするたびに反応があったそうだが、今日はイージーではないようだ。テンカラは道具がシンプルなだけに釣り人の経験や技術が試される釣りでもある。猿田彦珈琲のオリジナルブレンド「JAPAN BLEND」を飲みながらも考えているのは、後半戦の作戦だ。ちなみにコーヒーブレイクのお供もこだわりのアイテムがズラリ。テーブルはMountain reserchのもので、天板で用いられている木が1本だけGELCHOP制作の樹脂パーツになっているユニークなつくり。SOTOのバーナーは以前BEAMSで販売していた別注のもので、とてもコンパクトになるのでどこにでも持っていくのだそう。写真ではあまり見えていないが、月兎印のホーローポットはスムーズにドリップできて丈夫なので、こちらもアウトドアにうってつけの1品。


後半、数匹のニジマスを追釣して、この日は切り上げた。
「もう少し釣れるかなぁと思ったんですけどね。悔しさが残るくらいがちょうどいいんですよ。また研究して、次に来る楽しみができますから」

Spot information
夏になれば繊細なテンカラロッドを、太いルアーロッドに持ち替えて、相模湾でシイラやマグロを狙うという。
「今度はこのCクラス ステーションワゴンにロッドを積んで、BEAMS釣り部のメンバーでマグロを狙いに行きたいですね」

リアシートが4:2:4分割可倒式なので、中央だけ倒せば4名乗車時にもマグロ用ロッドなど長尺の釣り竿を積み込める点も魅力だと語ってくれた。すっかり新しいギアを手にした少年のような顔になった相田さん。真夏の湘南、国道134号線を走る姿が浮かぶようだった。
PROFILE
相田高史/Takashi Aida

1978年生まれ。宮城県出身、横浜市在住。2001年にビームス入社。インテリアや雑貨が好きだったこともあり、雑貨の販売担当としてキャリアをスタート。二子玉川店と池袋店ではメンズカジュアルの販売も経験した後、2011年より雑貨セクションのVMDを担当。2017年より新規事業部としてBEAMS JAPANプロジェクトに参画し、自治体や企業などをプロデュースする事業に従事し現在に至る。趣味は20年以上ハマり続けている釣りと4〜5年前からは植物にもどっぷりとハマっている。すぐに夢中になる性格と凝り性なこともあり、植物やツールが増えてしまい、寝る場所がどんどん狭まってきているのが最近の悩み。