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Mercedes-AMGのパフォーマンスをサーキットで体感。“AMG Driving Academy”レポート 前編

photo: Etsuko Murakami
words: Masanori Yamada

サーキットを舞台に、Mercedes-AMGの“究極のハイパフォーマンス”を体感。現役レーシングドライバーでもあるプロのインストラクター指導のもと、ドライビングスキルを磨く2日間から、初日の様子をレポートする。

ドイツ本社で認可された国しか行えない、特別な実践的オフィシャルプログラム

パドックにずらりと並んだMercedes-AMGが、朝の光に照らされ輝く富士スピードウェイ。待ちきれないといった表情の参加者たちが、受付開始とともに続々と集まってきた。国際格式のサーキットで思う存分、AMGのパフォーマンスを堪能できるのだから、それも当然だろう。

AMG Driving Academy

一流のインストラクターの指導のもと、安全にドライビングスキルを習得できるAMG Driving Academyは、世界各地のサーキットを舞台に各国でカスタマイズされてはいるもののドイツ本社の承認を得たカリキュラムで構成される、ドイツ本社のオフィシャルプログラムとして2007年に始まった。日本ではBASICとADVANCEDが実施されており、内容は実践的にして本格的だ。

なお、BASIC-TRAININGは、基礎的なドライビングスキルを1日かけて習得する入門コース。BASIC-TRAININGの修了が参加前提となるADVANCED-TRAININGは、一層高いレベルのカリキュラムを1泊2日で集中的にこなすコースとして位置づけられている。

“教習車”に様々なAMGモデルが用意され、乗り比べられるようになっているのも魅力のAMG Driving Academy。今回は43、45、53、63、GTといった最新のAMGを用い、広大な駐車場、ドリフトコース、ショートコース、そして本コースと、富士スピードウェイをフルに使って行われた。

<開会式>

AMG Driving Academy開会式
中谷明彦
ライノルド・レンガー

AMGの歴史やフィロソフィーが紹介された開会式では、日本でのチーフインストラクターを努める中谷明彦氏が本アカデミーの趣旨について説明。ドイツから来日した本社のインストラクター、ライノルド・レンガー氏は、「安全に楽しく、ハイパフォーマンスを堪能してください!」と呼びかけた。

体で学ぶ、走る・止まる・曲がる

<ドラッグレース/ストップボックス>

アクセル全開で加速し、フルブレーキで止まる──。それだけを聞くと簡単に思える<ドラッグレース/ストップボックス>だが、加速はともかく、じつは止まるのがとても難しい。“ボックス”とあるとおり、決められた枠内にクルマを止めなければいけないからだ。

高木虎之介

「最初は失敗してもかまいません。思った以上にスピードが出るので、ブレーキを踏むタイミングと効き具合を把握するようにしてください」。ADVANCED-TRAININGを担当した高木虎之介インストラクターの説明を聞き、いざショートコースへ。

AMG 53シリーズ

使用モデルはISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)搭載の53シリーズ。トルクが鋭く立ち上がる電動スーパーチャージャーの後押しを受け 、豪快で爽快なスタートダッシュが決まる。

AMG 53シリーズ

ブレーキを踏む頃には100㎞/hに到達。ABSのおかげで止まるには止まるが、車速を勘案したブレーキングでなければボックス内には収まらない。ハイパフォーマンスカーの高い制動力、そしてブレーキングの重要性に気づかされる。

<カーコントロール>

AMG E 63 S 4MATIC+

<カーコントロール>は、平たく言えばドリフト体験である。もちろん、タイヤスモークを派手に上げて横滑りするのではなく、コーナリングにおけるアンダーステア/オーバーステアの体験が主目的。このトレーニングには、ドリフトモードを備えるE 63 S 4MATIC+が使用された。

AMG E 63 S 4MATIC+

40Rのコーナーに進入し、インストラクターの合図とともにアクセルを深く踏み込む。ESP ONやSport+ではおおむね何事も起きないが、四輪駆動が解除され完全なFRとなるドリフトモードでは、いとも簡単にスピンしてしまう。また、舵角やアクセルの踏み加減によっては、低速でもアンダーステアが発生してクルマが素直に曲がらないことも。電子デバイスの高度な制御とともに、ステアリング/アクセル操作の連動性が大切なことを理解する。

<ABSブレーキング/レーンチェンジ>

AMG E 63 S 4MATIC+

<ドラッグレース/ストップボックス>と<カーコントロール>で学んだクルマの動かし方、動き方を応用して臨むのが、一般的にダブルレーンチェンジと呼ばれる<ABSブレーキング/レーンチェンジ>だ。フル加速でスタート、パイロンを目印に減速しながら隣のレーンに移動するためステアリング操作を行い、最後はフルブレーキで止まる──。文字にすると簡単だが、およそ100㎞/hで走りながら流れるように行うのはなかなか難しい。

瀬在仁志

コース脇で指示をする瀬在仁志インストラクターはBASICーTRAININGを担当。車両にはトランシーバーが積まれており、リアルタイムで指示やアドバイスが送られる。「ブレーキを踏むのが少し早いですね。次はもっと攻めていきましょう!」

ABSブレーキング/レーンチェンジ

減速によってフロントに荷重をかければ当然、クルマは向きを変えやすくなる。ひいては、タイヤの状況・状態を把握するということにつながる。<ABSブレーキング/レーンチェンジ>は、基礎的なドライビングスキルを総合的に学べるトレーニングといえるだろう。

■ランチタイム

ランチタイム
ランチタイム

午後のカリキュラムに向けてちょうどよい切り替えにもなったランチタイムでは、2階クリスタルルームにてビュッフェ形式の豊富なメニューが提供された。ホスピタリティは万全だ。

<Auto-X>

ジムカーナ

お腹を満たした午後のカリキュラム1本目は、いわゆるジムカーナの<Auto-X>から始まった。練習走行の後はタイム計測ありの走行となり、トップタイムは表彰もされるとあって、参加者たちの顔つきも真剣に。

ジムカーナ

パイロンで規制されたコースは、リズム感を要する左右の切り返し、オーバースピード厳禁のくるりと回り込む小さなコーナーなどで構成され、最後はストップボックスで停止するというもの。43、45シリーズの振り回せる感覚が好評だった。

片岡龍也

「いいタイムが出ましたね!」BASIC-TRAINING担当の片岡龍也インストラクターに限らず、参加者とインストラクターの距離が近いのも本アカデミーの魅力である。

アクセル全開で1.5㎞のストレート疾走

<隊列走行>

一枠50分のカリキュラムも残すところ2つ。これまで学んできたスキルを応用しながら、本イベントのハイライトである本コース走行に移る。“リード&フォロー”とも呼ばれる<隊列走行>では、インストラクターが運転する先導車の後を走りながら、ライン取りやブレーキングポイントを学んでいく。

富士スピードウェイ

後ろを走ると言っても、先導車のペースはかなりのもの。グンと上がる速度域に比例して難易度も上がり、富士スピードウェイの1.5㎞もあるホームストレートでは、最高速は250㎞/hから280㎞/hにも達する。

富士スピードウェイ
富士スピードウェイ

最後はAMG専用開発のスーパースポーツカー、GTシリーズに乗り換え再びコースイン。富士スピードウェイの本コースを独占しながら、GTの圧倒的なパワーと素晴らしいフットワークを体感したのだった。

GT

ピットに戻ってきた参加者は一様に興奮冷めやらずといった様子。BASIC、ADVANCED共通のカリキュラムを無事に終え、インストラクターにアドバイスを求めたり、参加者同士で感想を語り合ったりする表情に、心地よい疲労感と大きな充足感が浮かんでいたのが印象深い。

サーキットでこそ得られる貴重な経験

AMG Driving Academy

サーキット走行初心者から熟練者まで、幅広い層が参加するAMG Driving Academy。傍目にも手に取るように伝わってくる速さと上手さの上達ぶりは、自身の手でクルマを走らせ、体でドライビングスキルを覚えることが、どれだけ効果的かを教えてくれるものだった。

もっとも、習得したドライビングスキルがいちばん活きるのは、インストラクター陣いわく「普段の運転」である。限界走行のなかでどう操作したら、クルマはどう反応するか──。それを体験しているか否かの違いは、想像以上に大きな差となって表れるものだからだ。

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■ドライバーズディナー

ドライバーズディナー
ドライバーズディナー

朝から夕方までみっちり組まれた濃密なスケジュールも、閉会式をもって終了。BASIC-TRANING参加者は濃厚だった一日を振り返りながら帰路へ。一方、宿泊先のホテルに移動した1泊2日のADVANCED-TRAININGの一行を待っていたのは、インストラクター陣同席のドライバーズディナーだった。初日の感想、ドライビングテクニックやクルマのこと、ざっくばらんな世間話まで、ADVANCEDだけの贅沢なひとときは、尽きることのない話題で大いに盛り上がった。

後編につづく

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