尖っていて、それでいて最高という悩ましいテーマ
「今回の新作で求められているものは、単純に美味しいスイーツとはちょっと次元が違うと僕は考えています」。藤田シェフは〝究極のチーズケーキ〟に使う食材を探すため、昨年マイナーチェンジを経て刷新されたGLC 220 d 4MATIC Coupéに乗り込んだ。

「“ハイ、メルセデス! 自宅に案内して”とオーダーすれば、即座に道案内をしてくれる。こんな感じで求めている答えを導いてくれたらカンタンなんですけどね(笑)。自分はフリーランスで働くシェフとして、クライアントからいただいたリクエストには複数のレシピを提案し、その中で最終的にはベストなものを一つ選んでいただいています。今回は『LOUANGE TOKYO』です。『LOUANGE TOKYO』は六本木に店を構える高級パティスリー。個性や上質というキーワードを大切にしている同店では、誰もが選びそうな中庸的なものは出せません」

「『LOUANGE TOKYO』は僕の中では尖った存在です。いわゆる大手製菓メーカーの依頼であれば、あまりに尖ったものだと敬遠されますし、まず選ばれません。でも『LOUANGE TOKYO』で求められるものは……、これ以上越えるとアウトなボーダーラインを、ギリギリのところで越えないように踏みとどまるイメージでしょうか(笑)。そのぐらい尖ったスイーツを提供し続けています。だからと言って、度が過ぎていては意味がありません。尖っていながら、最高のスイーツ。それを叶えるために、誰からも文句が出ないものをベースにして、徐々に個性を積み重ねていき、理想に近づけていくんです」


奥深いチーズの世界。食に向き合う者同士、自然と会話は弾む

──〝究極のチーズケーキ〟の為に、向かった先はチーズ専門店『フェルミエ愛宕店』。
「僕は材料そのものが好きで、ワインであればブドウ畑、米であれば田んぼにも行きます。土地に生える草や水、空気を知ることは自分にとって財産ですし、レシピづくりの肥やしになっていますね。
一般的な洋菓子店の場合、材料は問屋にあるものから調達します。専門店に足を運んで選択することはないです。が、『LOUANGE TOKYO』だと話は別。現地にいって食材を問屋外で調達することが可能なんです。今回は、チーズの熟成庫を持つチーズ専門店を選びました」


「実は、このお店にははじめて来ました。『フェルミエ愛宕店』にはメイン素材候補の一つ〈コンテ・ド・モンターニュ〉があります。ハードタイプのチーズで、適した環境で時間の経過と共に味に変化をもたらします。ここには熟成期間が12か月、18か月、そして24か月のものがあり、同じチーズであっても熟成する時間で大きく味が変わるんです。チーズの世界は奥が深く、本当に面白いですよ」

「食材探しは毎度新たな発見があるので楽しいですね。今回は、『フェルミエ愛宕店』の店長である又平さんをはじめ、お店の方々との出会いが発見でした」

白カビタイプの〈ブリー・ド・モー ドンジェ社〉(写真左奥)。ほど良い酸味があり爽やかなフレッシュタイプの〈ブリア・サヴァラン〉(写真手前)
「当然、問屋から卸せば手間も省けますしコストの面でも有利です。電話やメールで注文するのではなく、食材探しに出かけることには、その手間以上のものがあると僕は思っています。それに、こうして仕事を通して人間関係が広がって行くことは、単純に楽しい。実際に食材を直接自分の目で見る機会をくれた『LOUANGE TOKYO』には感謝しています。このような仕事の仕方は稀なので、それに見合うだけの良いレシピを出さなければならない。ですから、気合も入りますね」

SPOT INFORMATION
トリュフの概念が一変。専門卸商社は発見の連続
──〝究極のチーズケーキ〟に使う食材を探すために藤田シェフが次に目指したのは意外にもトリュフを専門に扱う鯉沼商会だった。
「チーズケーキにトリュフを使うアイディアは、『LOUANGE TOKYO』からです。以前、『LOUANGE TOKYO』の新作スイーツを試作した際に、社長から提案いただき、初めて使用してみました。トリュフは、スイーツのなかに入ると、ドライフルーツのような効果が得られるんです。味に深みも出ますし、面白いものができると思いますよ」


「料理ではポピュラーですが、お菓子でトリュフを使うことはそう多くはありません。聞けばトリュフにも熟成という概念があるそうなんですが、トリュフの場合、1~2月が黒トリュフが完熟する時期だそうです。11~12月に出回ってるものは未熟成のものが多く、香りも色づきも弱いそう。完熟した時期の黒トリュフを冷凍保存して使うのが、最も効果的な使い方なんです」

写真は熟成したフレッシュスペイン産黒トリュフ。卸価格は㎏あたり13万円

「ここは発見の連続です。まだまだ知らないことが多い。例えばトリュフの水分量はなんと90%近くだそうです。この黒い塊が殆ど水分でできているなんてここに来るまでは知りえなかったことです。そして、トリュフオイルと呼ばれる商品には本物のトリュフが殆ど使われていないということ。こうした事実をきちんと伝えてくれる。これは専門知識をお持ちの方に直接お会いしなければ得られない情報ですよね」


鯉沼衆斉(こいぬま・ともなり)。鯉沼商会代表取締役。清澄白河にある同社の若き二代目で、トリュフの知識は業界屈指。フレッシュトリュフをはじめ、キャビア、コニャックなど高級食材を専門に提供。顧客の多くは名だたる一流店ばかり(写真右) http://www.koinuma-japan.com

写真は、スペイン・サリオンにある黒トリュフの養殖場(提供写真)
「また、トリュフは産地によっても変わります。フランスをはじめ、スペイン、イタリア、中国、ハンガリーと、ここでは世界中のトリュフを取り扱っているので、その違いを確認できます。今回はスペイン産の黒トリュフを選択しました。甘いハンガリー産のものも気にはなりましたが、時期的に熟成がベストなものはスペイン産と知り、これに決めました」
理想は、険しい道のりを突き進む、強さのあるクルマ

趣味の釣りで普段からクルマで長時間移動すると言う藤田シェフ。悪路や雪などの天候に左右されないクルマが好みだとか
「趣味が釣りなんです。つい先日も同僚のパティシエと釣りに行きました。ドライブそのものも好きですが、クルマでの移動の良いところは時間や行き先を自由に決められるところですよね。
GLC クーペは自分が求める理想像にとても近いです。僕の場合、長距離を走ったり道なき道に入ったりすることもあるので、険しい道のりでも難なく突き進める強さのあるクルマが理想です」


「それにしても、GLC クーペの上質なつくりには感心させられます。ステアリングは正確ですし、走りが安定している。少し背の高いSUVはどうしても重心が高くなるのでフラ付くイメージがあったのですが、このクルマにはそれがまったく無いんです。これはセッティングの妙なんでしょうか。正直、驚いています」
時に答えは出会いから生まれる。ゴールまであと少し
──藤田シェフの答え探しの小さな旅は終わった。求める答えは見つかったのだろうか。
「答えは、もう目の前まで来ていると思います。こうして実際に食材を確認していくことで、新たな出会いがありました。この出会いがきっと答えに導いてくれると思います。完成したチーズケーキは、北鎌倉でショコラトリーを営むパティシエの友人に食べてもらい、意見をもらおうと思っています。完成まではもう少し。期待していてください」
~究極のチーズケーキを求めて~Vol.2
~究極のチーズケーキを求めて~Vol.3
PROFILE
藤田浩司/Koji Fujita

1991年ヒロコーヒー入社。同社のシェフパティシエを経て、2008年WPTCのチョコレートピエス部門でグランプリを獲得。2012年、WPTCに再度味覚担当として出場した際にはチームを総合優勝に導いている。以降、海外を含め多くの場で講習会を開催、技術指導に従
事。また、各方面で菓子監修やレシピを提供し続けている。
SPOT INFORMATION
ルワンジュ・トウキョウ/LOUANGE TOKYO

“時間と空間を提供する”をコンセプトに、アートを連想させるスイーツを発表し続ける高級パティスリー。パティシエ世界大会2冠に輝く藤田シェフがグランシェフを務め、可愛いらしいテディベアで人気の「ヌヌース」をはじめ、ニーズを超える作品を日々提供し続けている。
ADDRESS 東京都港区六本木7-17-14中湊ビル1F
http://www.louange-tokyo.com
TEL 03-5412-7788
営業時間 11:00~23:00(土~22:00、日・祝〜21:00)
定休日 無休
駐車場 有り