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冒険家マイク・ホーンと行く、Gクラスの砂漠旅 in オーストラリア part1

旅の様子を日々発信する夫婦ユニット「旅する鈴木」が、世界的な冒険家マイク・ホーンと共に、猛暑のオーストラリアにある砂漠へ。その貴重な旅の記録を、前後編の2回にわたり、映像と写真・文章でレポートする。

プロローグ

今回、僕らがご招待いただいたのは、メルセデス・ベンツ Gクラスに乗ってオーストラリア中央部のシンプソン砂漠を横断する、大冒険。夏のあいだは暑すぎて危険というこの砂漠、冬でも一歩間違えば生死に関わる。何せ数百キロ、砂の大地しかない場所を走り続けるのだ。参加するのは、各国から集まったメディアやジャーナリストたち。それぞれGクラスのハンドルを握り、砂漠を駆け抜ける3日間。そしてそれを率いるのは世界的な冒険家、マイク・ホーン。そんな、なかなか出来ない冒険の旅の様子を、みなさまにお届けしたいと思う。

旅立ち

出発前。送られてきた旅程表を見て、僕たちは笑った。そこには、ほとんど“朝食”と“夕食”と“砂漠を走る”しか書かれていないのだ。どれだけストイックな3日間なのだろうかと思った。はたして昼食はどうなるのか。しかも、冒険家のマイク・ホーンなる人物と旅をするという。調べてみると、人間の極限に挑むような、過酷な冒険をいくつも達成している人だった。フランスでは、サバイバルの教官として、いくつもテレビ番組を持っている。そんな彼と共に進む今回の旅は、一体どんなことになってしまうんだろうか。不安を胸に、僕らはオーストラリアへと向かった。

ブリスベン空港のホテルで合流した今回の旅仲間は、国籍に富んでいた。パリから来た、アメリカ訛りの英語をしきりに気にするイタリア人、ロレンゾ。ドイツの超人気Youtuberのピーターとフェリックス。ミーティングを全てキャンセルして来たという、メルセデス・ベンツ オーストラリア/パシフィックのCEO、ホースト。マイク・ホーンと、その娘さんでマイクのマネージャーの、ジェシカ。今回の企画の責任者で、後半マイクをなだめるのが主な仕事になってしまった、笑顔の素敵なジェリー。そして、Mr.Gクラスと呼ばれるメカニックの方々と、シェフ。加えて、僕たち夫婦だ。

砂漠までの道のり

シンプソン砂漠までは、ブリスベンから1590km。陸路で行けば何日かかるか分からない距離を、今回僕らはチャーター機で一気に飛び越えた。と言っても途中で給油を挟み、3時間半かかる。オーストラリアは広大だ。その広大さが故におおらかなのか、どこまでも自由な機内に驚いた。youtuber二人は隣の座席に足を伸ばして映像を編集し、一番後ろに用意されたお菓子やフルーツを貪り食う。ロレンゾは、すべての窓から写真を撮って歩き回っていた。搭乗パイロットはひとりきり。だが、操縦席は二つある。彼は、僕ら参加者を順番に副操縦席へと招き、ハンドルを握らせてくれる。変なボタンを押して墜落しないかとヒヤヒヤする。シートベルトなんて誰も確認しないし、自由に動き回ることができる。なんだかバスに乗っているような気軽さの空の旅。窓の下はずっと、荒野のような大地が続いていた。

砂漠に並んだ7台のGクラス

到着したのは”Birdsville”という、荒野に滑走路と家が数軒あるだけの、砂漠の街だった。そして滑走路の金網の向こうには、ずらりと7台のGクラスが並んでいた!2台はG300プロフェッショナルのトラックで、食材や調理器具に予備燃料、ビールやワインがぎっしり。2台のG500はマイクにスポンサードされているものだそうで、ヨーロッパから輸送されて来たそうな。ユーロナンバーが付いている。そして、4台のG300プロフェッショナルに、僕ら参加者がそれぞれ乗り込む。いざ、出発。緊張しながらハンドル握るのは、四駆を初めて運転するヨメ。7台のGクラスが、砂埃をあげ、走りだした。

砂丘を前にして

Birdsvilleから少し走ると、本格的な砂漠が始まった。土の道から砂の道になり、両脇は枯れかけた低い木々が点々と生えている。前方に大きな砂丘が見えたところで一行は並んで停まり、作業が始まった。これからの悪路に向けタイヤの空気圧を減らすようだ。メカニックの方々が何やら器具を使って空気を抜き始める。あちこちでプシューッと音が出る。冒険家マイク・ホーンはというと、その辺りで拾ってきた枝をタイヤの口に差し込み、あれよという間に空気を抜きながら、「こいつは古くからある自然の遺産で、万能なんだ。こうやって空気も抜けるし、歯も磨ける。」と枝で歯磨きしながらニコニコしている。全部の車の空気を調整し終わったらいよいよ、砂漠旅の始まりだ。ジェリーが目の前の丘を指差した。

砂漠には、砂紋がある。風が作った美しい砂の波の連なりで、広大な砂漠となるとその規模は大きくなる。砂紋の一つ一つが巨大な丘になり、それが延々と数百キロも続く。僕らは、これからそこを走り抜けるのだ。丘を越えてはまた越え、の繰り返し。「さぁ練習時間だ!」とジェリーが叫んだ。

砂漠の練習時間

砂丘を越えるには、コツがあるそうだ。まず砂の深さを読み、走るラインを見極める。そしてスピードが大事。丘の手前から加速し、一気に登る。砂の深すぎるところでは、デフロックを駆使することが絶対条件になる。フロント、センター、リアのロック。砂の具合を見ながら、必要に応じてそれぞれを使い分け、燃料節約のためにすぐにオフにする。なかなかに忙しいドライブだ。

僕ら初心者のために、まずは最初の砂丘で練習時間が設けられた。マイクが後ろに乗り込み、激しい激が飛ぶ。ヨメは緊張しながらハンドルを握っている。Youtuber達が先にチャレンジするも、頂上手前で止まってしまった。どうやら難しそうだ。「スピードが足りないからだ」とマイクは言う。次はいよいよヨメの番。強張った顔で一気に加速し、丘へと走り出す。車は信じられないほど揺れる。後ろに積んだスーツケースが天井に当たるほどのダンピングだ。それでもマイクは「go! go!」と叫ぶ。ヨメはハンドルをぐわんぐわんしながらアクセルをふかし続け、頂上の砂に減速させられながらも、登りきった。

砂漠の横断、開始

頂上まで登りきったヨメはマイクに何度も褒められ、自信をつけたようだった。皆ひと通り練習を済ませ、いよいよ砂漠の旅が始まった。前の車に近づきすぎると視界が無くなるほど砂が舞うので、7台のGクラスは一定の間隔をとって走る。丘を越えては走り、また丘を越え、そしてまた走る。もちろん、車内の僕らは揺れっぱなしだ。だが、Gクラスはものともせずに走り続ける。

丘を登りきった時、一気に開ける視界が素晴らしかった。砂の向こうは全て地平線。一本のわだち以外、人工物は何も無い。揺れて揺れて登りきった後に、その風景が毎回待っているのだ。これは楽しくてしょうがない。運転するヨメは必死そうだが、ノリノリだった。揺れが激しくなるたびなぜか爆笑し、丘を越えるたび歓声をあげる。数えきれない丘を越え、大地の向こうに太陽が降りた頃、一行は今日の宿泊地へと到着した。

砂漠のキャンプ

宿泊地といっても、何も無い。テントの張りやすそうな平地と、誰かが燃やした焚き火の跡があるだけだ。真っ赤に燃える空の下、僕らはそれぞれ、車の上に積んだテントを降ろす。あの揺れに耐えられるようガッチリと固定されてテントは、降ろすだけでもひと仕事だった。皆で協力して降ろし、ざっくばらんにテントを張る。全員ぶんを張り終えた頃には、空いっぱいに星が広がっていた。マイクがおこした巨大な焚き火を囲んで、僕とヨメは一息ついた。ちなみにだが、マイクはテントを張らない。毎日寝袋だけで、なぜかGクラスのタイヤにもたれかかって眠る。きっとそうやって地球中を旅して来たのだろうと想像できた。

砂漠に孤独に立つ、我らがキャンプサイト。けれどそんな場所だとは思えないほど、夕食は豪華だった。チームにはシェフが同行。彼は、皆より先に宿泊地に到着して夕食の準備をしてくれていた。キッチン用テントでもうもうと煙をあげているのは、巨大なオージービーフ。隣には、巨大なエビ。そしてポテトにサラダ。各々それらを取り、焚き火を囲んでワイワイ食べる。ちなみに、次の日の夕食はカンガルーとクロコダイルとエミューの肉だった。今回の旅で野生のラクダやカンガルーに出会えると聞き楽しみにしていたのだが、結局最後まで出会うことは叶わなかった。しかし味わうことはできた。カンガルーの肉は、思いのほかジューシーで、臭みもなく美味しかった。そして3日目にはチキンがでた。

8月のオーストラリアは冬。でも日中の砂漠は暑く、Tシャツでも汗ばむほどだった。けれど太陽が沈んだ途端に一気に寒くなり、夜中は0度近くにもなる。食事の後、ワインを片手に焚き火を囲んで、マイクの話を延々と聞くのが毎晩の定番となった。

マイク・ホーンという人

僕らのマイクの印象は、面白くて元気なおじさんだ。けれどプロフィールにも書いてある通り、世界的に有名な冒険家で、数々の偉業を達成している人だ。でも普段の彼は、冗談だらけの楽しい子どものような人だった。ホッキョクグマがマイクの寝るテントに乗っかってきた話、護身用のライフルが凍ってしまわないよう寝袋で抱いて寝た話、北極点に立つと360度が南で方角が分からないという話。話のひとつひとつが驚きに溢れていて、それでいて最後はみんなを爆笑に導く。素敵な人だと思う。

彼のしてきた大冒険は、僕にも誰にでもできることだと彼は言う。「毎日がチャレンジで、毎日が勉強だ。諦めず学んでそれをできるようになり、また次のことができる」。モチベーションスピーカーでもあるマイクと話をしていると、なんでも出来るように思えてくる。彼の握手は、骨が折れそうなほど力強かった。全身に力がみなぎっているようで、こんな風に生きて行きたいと何度も思った。

でもやっぱり面白おじさんだと思う。マイクは奥さんを病気で亡くしているそうだが、51歳になった彼はそろそろ次の恋愛がしたいのだと、車の中でおもむろに語り出した。車中マイクの恋愛話は大いに盛り上がり、冗談か真剣かは定かでないが、ヨメのお姉さんとお見合いをする、ということになってしまった。彼は来年、北極点に向かう途中、ボートで日本に来るらしい。もし実現したら、こんなに面白いことはない。

part2へ続く

 

PROFILE

マイク・ホーン / Mike Horn

Mike Horn

冒険家。1966年ヨハネスブルグ生まれ。1997年、アマゾン川7000kmを自力で下る冒険を皮切りに、人力のみの赤道世界一周、原住民と同じ生活をしながらの北極圏2万キロ航海、8000m級峰の無酸素サポートなし登頂など、数々の冒険を達成している。現在、Pole2Poleという南極点と北極点を経由して地球を縦に周回するプロジェクトを行なっている。また、フランスの二つのテレビ番組「À l’état sauvage」「The Island」のプレゼンターを務め、どちらも高視聴率番組として人気を博している。

旅する鈴木 / TravelingSUZUKI

TravelingSUZUKI

ヨガ講師の“ヨメ”鈴木聡子と、映像作家の“ダンナ”鈴木陵生による旅夫婦ユニット。2011年より東周りで世界一周新婚旅行を始め、アフリカ縦断、エベレストベースキャンプまでの登山、インドでのヨガ修行などを経て、6年経った現在も未だ続いている。旅の様子を伝える映像ブログ「旅する鈴木」が、第18回文化庁メディア芸術祭の推薦作品に選出。KADOKAWAより映像作品集「World Timelapse」(DVD/Blue-ray)、いろは出版より「Ta bird books」シリーズが販売中。

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