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自動車の生みの親、メルセデスがEVに込める「本気度」

制作:NewsPicks Brand Design
執筆:笹林司
撮影:依田純子
デザイン:九喜洋介
編集:海達亮弥

2019年7月、メルセデス・ベンツが初のバッテリー電気自動車(EV)である「EQC」を、欧米に続き日本でローンチした。

EVは実際の販売台数よりも話題性のほうが先行しており、イノベーターや限られたアーリーアダプターが興味を持つ程度なのが現状だ。

しかし、「EQC」はその現状を変えるかもしれない。先に行われた日本での発表会では「普通の自動車として勝負する」ことが強調された。

メルセデス・ベンツが世界で初めてガソリンエンジン車を完成させたのはご存じの通り。その後もさまざまな新技術を開発し、自動車を進化させ続けている。

メルセデス・ベンツをベンチマークに、技術や性能を研鑽(けんさん)したメーカーも多い。そんなメルセデス・ベンツが手掛けるからこそ、大いに注目を集めている「EQC」。

EVとしてエポックメイキングな一台となりえるのか。関係者の話からその可能性を探った。

自動車の生みの親、メルセデスがEVに込める「本気度」

CASE戦略をシームレスにつなげる核となる「EQ」ブランド

自動車の生みの親、カール・ベンツが完成させた世界初の原動機付き三輪車に特許がおりたのは、1886年1月29日のことだ。

この日を自動車の誕生日とするなら、その歴史は約130年に及ぶ。そして今、自動車は誕生以来「100年に一度の大変革期」を迎えている。

そのキーワードとして多用されるのが「CASE戦略」。自動車の未来を語る際、必ずといっていいほど例に挙げられるこの戦略は、もともと、メルセデス・ベンツを手掛けるダイムラーが提唱したものだ。

公になったのは、2016年9月のパリ・モーターショー。当時、ダイムラーのディーター・ツェッチェ前CEOは、「Connected(コネクト)」「Autonomous(自動運転)」「Shared&Services(シェア&サービス)」「Electric(電動化)」を組み合わせ、未来の自動車産業が進むべき方向性を指し示した。

自動車の生みの親、メルセデスがEVに込める「本気度」

CASEは、シームレスにつながってこそ、最大限の価値を生み出す。

そして、その戦略を具現化するための核として発表された新ブランドが、メルセデス・ベンツの新ブランド「EQ」である。

「EQ」は「エレクトリック・インテリジェンス」を意味しており、電動モデル(エレクトリック・モビリティ)を始めとした、電動化に伴う新技術、インフラストラクチャー、関連サービスなどを包括したブランドだ。

ここでいう電動モデルとは、電気自動車(EV)だけでなく、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、水素燃料電池車(FCV)など、電気を利用する全ての車種を指す。

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メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎CEO

メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎CEOによると「2022年までに10車種以上の電気自動車を導入し、2030年までに販売比率の50%以上を電動モデルが占める」という。

「EQ」ブランドでは、EVを「EQ」、FCVを「F-CELL」、PHEVを「EQ Power」としており、「EQ Power」はすでに市販されている。
そして、満を持してEVの第1弾として発表されたのが「EQC」なのだ。

世界で初めて「EQC」がお披露目されたとき、ツェッチェ前CEOは「100%EV。そして100%メルセデス・ベンツだ」という表現を用いた。

より分かりやすい表現をするなら、日本での発表会で上野CEOが語った「ハンドリングや走り、静粛性、利便性、安全性などはこれまでのメルセデス・ベンツと同じ」という言葉だ。

そこに「電気自動車の良さが加わっている」のほうがいいだろう。

自動車の生みの親、メルセデスがEVに込める「本気度」

「EQC」 が持つメルセデス・ベンツらしい走行性能

「EQC」は、ダイムラーの「CASE戦略」の「E」=「電動化」を担いながらも、戦略そのものを体現する車両でもある。

例えば、「EQC」には自然対話型音声認識機能「MBUX」が搭載されている。

「EQC」用にカスタマイズされており、「充電ステーションを探して」「8時までに車の室内温度の調整を設定して」といった、細かな要望も音声認識で対応する。これは、CASEでいえば、「C」=「コネクト」にあたる部分だ。

自動車の生みの親、メルセデスがEVに込める「本気度」

また、メルセデス・ベンツが最も重視する安全性では、フラッグシップモデルである「Sクラス」と同等の安全運転支援システムを搭載。このシステムは、CASEでいえば「A」=「自動運転」を見据えた技術でもある。

安全面では、バッテリーにも衝突安全構造を一体化した堅牢なフレームを採用しており、外部からの激しい衝撃があっても、一定の衝撃を吸収することで安全性を担保している。

さらに、「EQC」を購入したオーナーは、5年間または10万kmまでの期間中であれば、同社の他のモデルを無料で1週間借りられる「シェアカー・プラス」というサービスもスタートした。

期間中に5回までサービスが利用可能であり、帰省やレジャーなどのときには、この仕組みを利用することができる。これをCASEに当てはめると「S」=「シェア&サービス」となる。

自動車の生みの親、メルセデスがEVに込める「本気度」

静粛性もメルセデス・ベンツが譲れない価値である。そもそも、EVである「EQC」はエンジン音がないため、ガソリン車やディーゼル車よりも静かだ。

それに加えて、駆動システムから発せられる音やノイズ、風切り音も低減させており、室内ではかなり高い静粛性を実現しているという。

走行性能の評価は高く、足回りはしなやか。アクセルとハンドリングのレスポンスも高く、アクセルを踏み込んだ分だけ加速して、ハンドルを切った分だけ素直に曲がる。

実は「EQC」が製造されているドイツのブレーメン工場では、「GLC」や「Cクラス」といったメルセデスの人気車種も同じラインで製造されている。

つまり、“車の走りを知り尽くした、熟練の技術者が組み立てているEV”というわけだ。

EVの強みを生かして、メルセデス・ベンツらしさをさらに加速させる

走行距離も、内燃機関モデルに引けを取らない。航続走行距離は欧州参考値で400km超えを実現した。

自動車の生みの親、メルセデスがEVに込める「本気度」

リモートでエアコンを起動させることで、電源につながった状態で車内の温度を最適化し、走行時はヒートポンプを使うことで、電気使用量を抑えている。

前述したように、世の中にはいまだに、EVはイノベーターや一部のアーリーアダプターといった特別な人が買う車という認識があるかもしれない。

しかし、「EQC」はメルセデス・ベンツがラインアップするガソリン車やディーゼル車、HV、PHEVと並列で検討し、「自らのカーライフに照らし合わせて、自分に合えば買う車」に仕上げられているのだ。

発売に合わせ、新たな販売方法も導入する。最初にローンチする55台に関しては、オンラインストアのみでの販売となっている。

その上で、購入方法も拡充した。残価設定型ローンに加え、新しくリース契約満了時に残価差額の精算が不要なクローズエンドリースと、クレジットカードでの決済払いも追加している。

オンラインストアはこちら
「Mercedes-Benz Online Store」

最も売れているカテゴリーでチャレンジして、多くのユーザーを獲得する

「EQC」が“普通”に選ばれる車として普及すれば、EVはまた一歩、歩みを進めることになるだろう。

そして、メルセデス・ベンツは普及させることに本気だ。それは、「EQC」のベースにミッドサイズSUVを選んだことにも象徴されている。

本国で開発責任者を務めたミヒャエル・ケルツ氏は、「EQC」プレス発表会で来日し、以下のように語った。

自動車の生みの親、メルセデスがEVに込める「本気度」

「ミッドサイズSUVは、世界でもっとも大きな成長を遂げている分野。走りの性能も高く、都市部でも便利に使えるサイズです。
多くのお客様を獲得するために、ミッドサイズSUVを選びました」(ケルツ氏)

しかし、SUVは前面投影面積が広く、空気抵抗係数も大きい。この値が大きくなると、当然電費は悪くなる。

開発にあたり難しいポイントだったというが、ケルツ氏によると、「さまざまなファインチューニング(微調整)によって、空気抵抗係数を大きく下げることができた」という。

自動車の生みの親、メルセデスがEVに込める「本気度」

この数字はSUVにしては異例の低さで、スポーツカーに比肩する値である。

「『EQC』は『GLC』と同じプラットフォームを共有しています。これは、エレクトリックアーキテクチャの観点から、未来におけるエレクトリックドライビングにとって大きなステップになった。

きっと、EVの文化を大きく前進させるはずです」(ケルツ氏)

未来のライフスタイルを垣間見させてくれる「EQC」

EVが普及した未来には、どういった社会が訪れるのだろうか。その解のひとつが、冒頭の「CASE戦略」だ。

「EQC」が、「CASE戦略」を前進させるエポックメイキングな車として開発されたことは、これまで記した通りだ。

そしてもうひとつ、東京・六本木の「メルセデス・ミー 」に、EQが普及した未来を思わせるものがある。

自動車の生みの親、メルセデスがEVに込める「本気度」

六本木に建設された「EQ HOUSE」

それが「EQ House」だ。「CASE戦略」が実現する未来のライフスタイルを、竹中工務店による最先端のデザインと技術で具現化した体験施設となっている。

排ガスを出さないEVは家の中に収納され、「EQ House」内のセンサーと連動することで、人と家、車がシームレスにつながるという。発表時には「EQC」が「EQ House」内に鎮座していた。

車の前には、ガラスのインターフェースがあり、ガラスに手をかざすとバッテリーなど、車の情報や家の状態などを表示してくれる。

また、メルセデス・ベンツの車両に搭載されている自然対話式音声認識「MBUX」のように、音声による照明や空調の調節も可能だ。

自動車の生みの親、メルセデスがEVに込める「本気度」

EVの未来は車だけの進化ではなく、住宅も含めた私たちの生活全般に及ぶのかもしれない。

「EQC」は、一義的にはメルセデス・ベンツらしく、ドライブすることへの喜びを感じることができ、静粛性、安全性を実現し、ガソリンやディーゼル車、HV、PHEVと並列で検討ができる車に仕上がっている。

しかし、その先には「CASE戦略」が生み出す未来のライフスタイルが垣間見える。その先進性に触れられるのも、間違いなく「EQC」の魅力だろう。

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