伝統のレースが最終章を迎えた。
8月26日(土)、27日(日)の2日間にわたって、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットでSUPER GT第6戦「インターナショナル SUZUKA1000km」が開催された。
1966年に始まったこの歴史あるレースは、1000kmのレースとしては今回が最後となることが発表されている。1000kmという距離はトータル周回数173回、SUPER GT全8戦の中で最長で、約6時間の長丁場となる。このレースを走り抜くにはドライバーの技量、マシンの速さと信頼性、チームの戦術、ピットワークなど、総合力が問われる。
鈴鹿サーキットはF1グランプリも開催される国際サーキットで、1周5.807kmと、SUPER GTが行われるサーキットでは最も長いコース。S字コーナーやヘアピン、シケインといったテクニカルなコーナーと、130Rやデグナー・コーナーといった高速コーナーがバランスよく配置される。
ドライバーからはチャレンジングで走って楽しいと好評のサーキットで、特に「SUZUKAが一番エキサイティング」と語る外国人ドライバーは多い。
GT300クラスの土曜日の予選は午後2時35分にスタート。真夏の太陽が照りつけ、気温は30度を超えた。Mercedes-AMG GT3勢で最も速かったのがグッドスマイル 初音ミク AMG 。
SUPER GTでは、成績に応じてウェイトのハンディが課されるウェイトハンディ制が採られる。グッドスマイル 初音ミク AMGは100kgのハンディが課せられるにもかかわらず、予選では見事な走りを披露、4位に食い込んだ。
ただし、1000kmの長旅となる鈴鹿1000kmは例年、波乱のレースとなる。9位につけたLEON CVSTOS AMGも虎視眈々と上位を狙う。
日曜日の決勝レースには大勢のモータースポーツファンが訪れた。主催者の発表によれば、その数は4万5000人(土曜日の予選は2万7500人)。昨年の決勝3万4000人を大幅に上回った理由は、最後の鈴鹿1000kmを見届けようとファンが駆けつけたためだ。また、“鈴鹿FINAL”にあたって人気ドライバーが起用されたことも、集客につながった。
午後12時30分、快晴のもと、鈴鹿1000km最後のレースがスタートした。気温は30度と前日よりはいくぶん涼しく感じるものの、路面温度は47度。ドライバーとマシンへの負担は大きい。1000kmのレースとは、すなわち通常の2〜4倍の距離を走るため、集中力の維持が必要だ。ドライバーは脱水症状を起こす可能性もある。一方、マシンにとってもエンジン、ブレーキなどオーバーヒートが起こりやすいため、冷却による温度管理が重要で、常にマシンのコンディションから目が離せない。
さらにこのレースでは、最低5回、ドライバー交代を伴うピットストップが義務づけられており、基本戦略は5ストップ/6スティント。173周を均等割りすると約29周で1スティントとなる。すなわち、ピットインのタイミングなどチームの戦略も結果を大きく左右する要素となる。
レースは序盤からクラッシュが起こり、ペナルティを課せられるマシンが多発するなど、波乱の展開に。その中で静かに順位を上げたのは、9位スタートのLEON CVSTOS AMGだった。スタート直後にピットインし、黒澤治樹から蒲生尚弥へとステアリングが託された。この戦略が功を奏し、順位を上げて第2スティントで一気に追い上げ、2番手に。その後もレースは追突、クラッシュ、横転が相次ぎ、セーフティカーが2度出動。そして長いレースが残り20分を切ったところで、2位LEON CVSTOS AMGがトップのマシンをロックオンする展開となる。そして残り15分、150週目の1コーナーで蒲生尚弥が駆るLEON CVSTOS AMGが見事にオーバーテイク! その後、2位につけていたVivaC 86 MCが逆バンクコーナーでクラッシュ。LEON CVSTOS AMGは最後までトップを走り抜き、チェッカーを受けた。9番手からのスタートで、見事な戦略と走りにより、最後の鈴鹿1000kmを制したのだ。この瞬間、観客席はどよめき、多くのモータースポーツファンが拍手を送った。優勝したLEON CVSTOS AMG はもちろんだが、GAINERが9位、Rn-sportsも13位と、メルセデスはタフなレースを最後まで走りきった。
最後の鈴鹿1000kmで歴史に残る勝利を飾ったLEON CVSTOS AMGは、年間ポイントランキングでもトップに立ち、チャンピオンへ近づいた。これまでポイントリーダーの座にあった、2位のグッドスマイル 初音ミク AMGとのチャンピオン争いも注目だ。10月7日、8日にタイのチャン・インターナショナル・サーキットで行われる第7戦を楽しみに待ちたい。