
昔から憧れだった、機能美を極めたメルセデス
平林さんは、多岐にわたる領域で長年活躍を続けるアートディレクター。これまで、セレクトショップ『ARTS&SCIENCE』、『UNITED ARROWS』のアートディレクションや、紙巻たばこ『HOPE』、『NTT DOCOMO』のパッケージデザイン、トップアーティストのCDジャケットデザイン、雑誌『GINZA』のアートディレクションなどを手掛けてきた。
「クルマの用途は主に通勤です。家から事務所まで約15分の距離ですが、毎日乗ります。あとは買い物ですね。うちはモノを大量に買い溜めするタイプなので、大きいクルマがベストなんです」
そう語る彼女の愛車は、G280 CDI professional。2017年に夫婦で購入したもので、なんと6台目のGクラスだという。
「初めてメルセデスを買ったのは2002年。それからずっとGクラスを乗り継いできました。しかも全て白色。たぶん乗り換えていることに気づいている人はほとんどいないんじゃないですか?(笑)」

平林さんが所有し続ける白いGクラスは、子供の頃からずっと乗りたいと思っていたクルマだそう。その原体験は?
「紛争地域の平和を維持するため、国連軍が現地に白いGクラスで現れる報道の様子を印象深く覚えています。彼らが、まるで正義の味方のように感じられてすごく格好良かったんです。それがメルセデスに憧れを持ったきっかけですね」
初めて見た本物のGクラスは、資生堂の広告部で働いていた頃に出会ったカメラマンの愛車だった。子供の頃から憧れていたクルマは、思い描いていた通りの姿。改めてその魅力に惚れ直し手に入れたくなったそう。

国連好きが高じて制作した冊子「(fig.1) UN UNITED NATIONS – COLLECTION, TEXT and IMAGES」には、本人所有のGクラスのミニカーを掲載
「今の愛車、G280 CDI professionalは、当時の国連軍が採用していたモデルの復刻版で2010年に限定発売されたもの。長年ずっと欲しくて、ようやく手に入れました。中古品ですが、前のオーナーがけっこういじってしまっていたんです。それをできるだけオリジナルに戻しました。シートだけはこだわって、純正のチェック柄のファブリックではなく、黒の合皮に替えています」
手に入れた念願の一台。平林さんが一番気に入っているポイントは、そのフォルムだ。

「とにかくルックスが大好き。こんなに四角くて、ガラスがフラットなクルマは唯一無二。後ろのドアが観音開きになるのも、買い物のときに荷物を入れやすいので気に入っています。それから、ボンネットの上に特殊な塗装が施されていて、靴で乗っても滑らないようになっている点も好き。ミリタリーのディテールが随所にあるあたりがたまらないですね」
終始ワクワクした様子で話してくれる平林さん。彼女にメルセデスのブランドイメージを訊いた。
「一般的に言われる高級感ももちろん分かるのですが、私にとって一番強いイメージはドイツの街中を走るメルセデス。至る所で見かけるベージュのタクシーのほとんどがメルセデスですし、救急車もそう。まさに“はたらくクルマ”ですね。長持ちしてよく走り、余計なデザインがなく洗練されている。そんな機能美を突き詰めている点が好きです」

合理的でシステマチックなドイツのモノづくり
機能美を好む平林さんの哲学を通して見るメルセデス。その信頼性の高さからドイツで“はたらくクルマ”として使われているように、彼女の事務所でも数々のドイツ製のプロダクトが活用されている。
ドイツ最大の航空会社「ルフトハンザドイツ航空」からしばしば払い下げ品として放出される、機内で使用されたコンテナ。世界中から集めた、エアラインのロゴがあしらわれたガムテープやゴミ袋を収納するために活用している。
また、10年前から定期的に訪れるベルリンで、行く度に“持てるだけ”購入しているというミニコンテナは工業用品。グレーの独特の発色が気に入って、これだけをひたすら購入しては、資料室の整理に使っている。
そして、デザインの参考にもなるという「LEITZ」のペーパーホルダーも大量にストックされている。
「デザインが美しいだけではなく、情報がきちんと整理されているモノは、仕事をする上で参考になります。ドイツのモノづくりは、考え方が合理的でシステマチックなところに惹かれますね」

平林さんが好むドイツのプロダクト。最後に、余談ではあるがドイツ語圏でもあるスイスで電車に乗った時の印象的なエピソードも話してくれた。
「現地で初めて電車に乗って遠出をした時、乗り継ぎの回数が多くて目的地まで辿り着けるか不安だったんですね。そうしたらチケットに文字で、何時何分にどこの駅に着き、その駅では乗り換え時間が何分で、次の電車は何番線のホームで……という大量の情報が分かりやすく印字されていたんです。そういったシステマチックな情報の整理の仕方に感動しました」

自身にとって、一生モノのメルセデス
情報も合理的な整理を突き詰めると、やがて究極のミニマリズムへと至る。そこには加飾は必要なく、洗練されたデザインだけが残る。
そんなドイツ製のプロダクトと平林さんの美意識の共鳴を感じた後で改めてG280 CDI professionalを眺めると、そこに宿る機能美に得も言われぬ感動すら覚える。
平林さんは言う。
「このメルセデスは自分にとっての一生モノ。ずっと乗り続けようと思っています」
PROFILE
平林奈緒美 / Naomi Hirabayashi
東京都生まれ。1992年、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業後、株式会社資生堂宣伝部に入社。2002年よりロンドンのデザインスタジオ「MadeThought」に1年間出向後、2005年よりフリーランスのアートディレクター、グラフィックデザイナーとして活動を始める。これまでの主な仕事に、『la kagu』、『UNITED ARROWS』、『ARTS & SCIENCE』などのアートディレクション、矢野顕子や宇多田ヒカル、サカナクションなどのCDジャケットデザイン、雑誌『GINZA』のアートディレクション、書籍や雑誌の装丁などを手掛ける。主な受賞に、NY ADC金賞 / 銀賞、British D&AD銀賞、JAGDA新人賞、東京ADC賞など。
ABOUT CAR
メルセデス・ベンツが誇る究極のオフローダー。環境にも優しい最先端のディーゼルエンジンやメルセデスが誇るインテリジェントドライブ、先進的なコネクテッドテクノロジーを採用する。
※※写真は欧州仕様車です。一部日本仕様と異なります。