Drive > Interview > 『クリーンなテクノロジーが、今いる場所を大事にする感性を育む』【後編】

中村拓志 / 建築家 × 長谷川京子 / 女優
Hiroshi Nakamura / Architect × Kyoko Hasegawa / Actor

『クリーンなテクノロジーが、今いる場所を大事にする感性を育む』【後編】

photo: tada
text: ikuko hyodo
styling: naoko toida
(Kyoko Hasegawa)
hair&make-up: sadae sasaki
(Kyoko Hasegawa)

電気自動車は、人を包む“セカンドハウス”になる。

新型コロナウイルスの感染拡大は、これまでの社会の常識や価値観をさまざまな方向から揺さぶっています。ここ数年、声高に叫ばれてきたサスティナブルな社会のあり方も、そのひとつ。今回のクリエイターインタビューの舞台は、六本木にあるメルセデス・ベンツの情報発信拠点「メルセデス ミー 東京(Mercedes me Tokyo)」。建築家の中村拓志さんと、女優の長谷川京子さんが、メルセデスの電気自動車EQAに試乗。昨今の電気自動車の潮流の中で、日本が脱ガソリン社会に移行するためのヒントや、電気自動車が私たちの暮らしにもたらす変化など、“THE NEXT STANDARD(これからの当たり前)”としての電気自動車の価値について考えていきます。

(初出:ウェブマガジン「六本木未来会議」クリエイターインタビュー 掲載日:2021年10月13日)

まずは今いる場所を大事にすることから始める。

——EUでは2035年に排出ガスゼロ車(電気自動車・燃料電池車)のみの販売とする規制が提案されています。カリフォルニア州でも同様に2035年に販売される車両のゼロエミッション化を義務付けるそうですが、日本でも実現するためには何ができると思いますか?

長谷川 これはぜひ中村さんのご見解を聞いてみたいですね。

中村 やっぱり、一般市民の気持ちがそっちの方向に行かなければ、机上の空論でしかないとは思います。エコロジーやサスティナブルも同様で、これまでなかなか前に進まなかったのが、コロナによって期せずして多くの人が意識的になってきているのが、ここ2年くらいの興味深いところではありますよね。徳島の「上勝ゼロ・ウェイストセンター」の設計を手がけ、昨年竣工したのですが、この1年とても大きな反響がありました。上勝町は長いことごみの削減に取り組んできて、リサイクル率80%以上を達成した先進的な町なんです。

 

上勝ゼロ・ウェイストセンター

中村さんが設計を担当した公共複合施設。2003年、町内から出る焼却・埋め立てごみをゼロにする目標を掲げ、日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言を行った徳島県上勝町。本施設は旧ごみステーションをリニューアルして環境配慮型コミュニティー施設として上勝町に2020年5月にオープン。ホテルが併設され、宿泊者は町民と同様のルールで、ごみの45分別を体験し、「捨てない経済」と「捨てたものが生まれ変わる経済」を学ぶことができる。画像:Koji Fujii / TOREAL

まずは自分がいる場所を大事することから始めて、身の回りからボトムアップして社会や地球のことまで想像できるような感性が、本当に今、市井の人々の中に芽生えてきたと感じています。そういう意識が、脱ガソリン社会へとつながっていくのではないでしょうか。コロナ以降、住宅や別荘をリニューアルしたり、新築する人が増えてもいるんですけど、今まで日本人って、自分の住宅にきちんと投資しようとする人が比較的少なかったと思うんです。食やファッションなど自分をよく見せるような、外の部分に投資する人はたくさんいましたけど、内側の住宅空間を大事にしようという感性が、なかなか育まれなかった。これも、今いる場所を大事にする感性の変化として大きいと思います。

——電気自動車が社会全体に受け入れられるためには、何が必要だと思いますか?

中村  個人的には、太陽光発電を各家庭に設置するのとセットで、電気自動車が普及してほしいですね。クリーンなエネルギーで充電をしないと、意味がないと思うので。その辺は税金だったり、住宅に対する考え方だったり、電気料金の問題だったり、乗り越えないといけない課題がたくさんあるとは思うのですが。

——メルセデス・ベンツは2039年までに、カーボンニュートラルを達成する「Ambition 2039」を掲げています。こうした目標を掲げることについてはどう思いますか?

中村  目標を持つことはもちろん大事ですけど、誰かから与えられた学校の課題みたいな受け身の状態だと、実現が難しいですよね。倫理観に訴えて、ゴリ押しで進めるのではなく、エモーショナルな部分というか、電気自動車にしかできない体験の豊かさを創出していくことが、目標を達成するキーになると思います。その点、試乗させてもらったEQAは、低重心だからこそのコーナリングの安定性だったり、加速性や静寂性など、ガソリン車が持っていない体験の豊かさを十分につくることができている気がします。

長谷川  今回試乗したEQAはもちろん、今後展開されていく新しい電気自動車のシリーズにも惹かれるものがありそうですね。

Ambition 2039

Ambition 2039

2019年、Daimler本社がメルセデス・ベンツを含めたグループ全体の中期経営計画として発表した、今後20年間のサステナビリティ戦略。2039年までに開発からリサイクルまで自動車におけるすべてのバリューチェーンでCO₂-neutralを目指すほか、2022年から世界中のすべての生産拠点を、CO2ニュートラルにすると発表。

——普段の生活でサスティナブルな観点から気をつけていることや、実践していることはありますか?

長谷川 中村さんがおっしゃったように、今まではどちらかというと外に目を向けていたけれども、コロナでできないことが増えた分、内側を見る時間が増えたのは私も一緒です。自分の生き方を豊かにしようと思うと、やっぱり無駄なことはしたくなくなりますよね。

生活でいうと些細なことですが、冷蔵庫の食材を無駄にしたくないとか、ごみが多いと罪悪感が生まれたりとか。たった1日でごみ袋がいっぱいになったりすると、どうすれば減らせるか考えるようになりますし、そういった工夫は子どもの教育にもいいですよね。とにかくものを大事に使いたいと思うようになって、流行りものに投資する機会がかなり減りました。その分、今はまだちょっと難しいけど旅行とか経験にお金を使いたいなって思うようになりましたね。

中村  こないだ上勝ゼロ・ウェイストセンターに泊まりに行って、ごみをセンターに持ち込んだんです。45分別もあるから、めちゃくちゃ大変だし、ショックを受けるんですよ。たとえばティッシュのごみってたくさん出ますけど、捨てるにはグラムいくらでお金を払わなければいけない。一方でペットボトルなんかは、町にいくらお金が入るか記されていて、分別ごとに出費なり収入なりの金額がすべて書いてある。

そういう時間を過ごして東京に帰ってくると、長谷川さんがおっしゃったように、日々いかにごみを出しているか気づくんですよね。それってものすごい罪悪感なんですけど、今、都心で大事なのは細かく分別することもそうですが、なにより生ごみを減らすことなんです。というのも生ごみは水分が多いので、生ごみだけだとうまく燃えない。プラスチックが燃料として必要なので、プラスチックごみと生ごみを混ぜて捨てちゃっていいですよっていうのが、今の都心のごみの処理方法なのです。だから生ごみを減らさない限り、分別自体を始めることができない。まずは僕らができることとして、コンポストを使うなどして生ごみを減らすことから始めたいと思っています。

生活に寄り添い、愛される、未来の車。

——このEQ House 実は実際住むこともできるとのこと。もしEQ House の住人だとしたら、どんなことをしてみたいですか?

長谷川 六本木のこの立地で暮らすのは落ち着かないかも(笑)。でも、EQ House が森林の中にあったら、楽しめそうですよね。

中村 たしかに最新のテクノロジーを持っているからこそ、より自然に近いところで暮らすのは面白いかもしれない。先進性と原始性がミックスした暮らしは、未来像としてありな気がします。EQAに乗ってどこかに行くとしたら、僕は海がいいな。エンジン音がなくなったことで、今まで聞こえなかった音が聞こえるようになるわけじゃないですか。そういった音を聞くために車に乗るのは、従来のドライブの概念にはない発想ですよね。路面の音なんかも、アスファルトの違いでひとつの音楽みたいに感じられそうだし、鳥のさえずりが聞こえるかもしれない。静寂ゆえに空間をクリアに感じて、外部の小さな変化に気づくことができそうですよね。普段あまり意識しない音に出合い、向き合う時間として魅力的だと思います。

長谷川 それは素敵な提案の仕方ですね。音だけでなく、もしかしたら木々の香りとかも違って感じるかもしれないですよね。電気自動車を選ぶ理由として、「このままだと地球に悪影響だから」とネガティブな面を強調するのではなく、「電気自動車にはこんな楽しさがあるよ」とポジティブにアピールしてもらえたほうが、本当に乗ってみたいと思えるもの。ガソリン車にずっと乗ってきた私たちは、ガソリン車からの景色しか知らないわけなので、電気自動車からの景色もどんどん知りたくなりますよね。

中村 電気自動車が普及することで、暮らしの面でも車がさらに身近な存在になっていく気がします。たとえば家の充電器としての役割も出てくるだろうし、排気ガスを出さないから、車が大好きな人ならEQ Houseのように室内に入れてしまうかもしれない。自動運転で寝ながら移動することが可能になったら、ますますセカンドハウスとしての意味合いも強くなるはず。走ることだけを目的とするのではなく、車がもっと生活に寄り添った存在になり、なおかつ人に愛される存在になっていくんじゃないかなと思います。

長谷川 車好きとしても、未来がとても楽しみですね。

Mercedes-Benz Rent(MBレント)

MBレント

メルセデス・ベンツが提供するレンタカーサービス。全国の正規販売店よりレンタルが可能。六本木「メルセデス ミー」では本記事で紹介したEQAなども利用可能。

https://www.mercedes-benz.jp/mbrent/

充電エリア

充電エリア

高速道路や商業施設、販売店など全国約21,000基の提携充電ステーションにて備え付けの専用の充電カードを使って「普通充電」か「急速充電」の2つの方法で充電できる。さらにメルセデスの充電サービス「Mercedes me Charge」では最初の1年間は充電利用料および月額基本料が無料(現在EQA、EQCのみ)。レンタルのEQAでも充電カードが備え付けられている。六本木ではグランドハイアット東京をはじめ、複数箇所で充電可能(編集部調べ)。オンラインサービス「Mercedes me connect」では、充電ステーションの満空情報付き位置検索や充電状況の表示などのMercedes-EQ専用サービスが用意されている。※画像は、家庭用のメルセデス・ベンツ充電用ウォールユニット。

■取材を終えて
地球のため、社会のため、と頭ではわかっていても、「実感」が伴って自分事にならないと重い腰を上げられない環境問題。コロナという未曾有の事態を体験した今こそ、さまざまな実感を通して動き出す絶好のタイミングなのでしょう。普段から車に乗っているお二人がイメージする、電気自動車が当たり前にある未来の景色も実感がこもっていて、ポジティブに選びたくなる要素が溢れていました。

※本記事は、2022年1月13日までの限定公開です

ニット¥15,400 (KYOKO HASEGAWA×Whim Gazette/ウィム ガゼット 青山店)
パンツ¥62,700 靴¥67,100 (ともにトリー バーチ/トリー バーチ ジャパン)
ネックレス¥57,200 (ガブリエラ アルティガス/ウィム ガゼット 青山店)

PROFILE

長谷川 京子/KYOKO HASEGAWA

長谷川 京子/KYOKO HASEGAWA

女優。1978年生まれ。モデルとして活躍後、女優デビュー。
ドラマや映画などで幅広く活躍。YouTubeチャンネルも話題に。今夏には自身が手掛けるランジェリーブランド「ESS by(エス バイ)」がデビュー。
近著に「長谷川京子 おいしい記録」(集英社)で食と日々の暮らしのエッセーを出版など、活動の幅を広げている。

中村 拓志/HIROSHI NAKAMURA

1974年東京生まれ。鎌倉と金沢で少年時代を過ごす。1999年明治大学大学院で建築学修士を修めた後、隈研吾建築都市設計事務所を経て2002年NAP建築設計事務所設立。
自然現象や人々のふるまい、心の動きに寄りそう「微視的設計」による、「建築・自然・身体」の有機的関係の構築を信条としている。そしてそれらが地域の歴史や文化、産業、素材等に基づいた「そこにしかない建築」と協奏することを目指している。20日本建築学会賞(作品)ほか多数受賞。画像:KEI Tanaka

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