電気自動車は、人を包む“セカンドハウス”になる。
新型コロナウイルスの感染拡大は、これまでの社会の常識や価値観をさまざまな方向から揺さぶっています。ここ数年、声高に叫ばれてきたサスティナブルな社会のあり方も、そのひとつ。今回のクリエイターインタビューの舞台は、六本木にあるメルセデス・ベンツの情報発信拠点「メルセデス ミー 東京(Mercedes me Tokyo)」。建築家の中村拓志さんと、女優の長谷川京子さんが、メルセデスの電気自動車EQAに試乗。昨今の電気自動車の潮流の中で、日本が脱ガソリン社会に移行するためのヒントや、電気自動車が私たちの暮らしにもたらす変化など、“THE NEXT STANDARD(これからの当たり前)”としての電気自動車の価値について考えていきます。
(初出:ウェブマガジン「六本木未来会議」クリエイターインタビュー 掲載日:2021年10月13日)
クリエイティブな都市の居心地よさ。
——メルセデス ミー 東京は、実は「車を売らない」というコンセプトなんです。
中村 こういう場所ができるのは、車がただ速く走ればいいとか、燃費がよければいいっていう時代から、環境性能をより重視するようになり、人の暮らしにどんどん近づいてきていることの現れですよね。Mercedes-EQは排気ガスが出ないので、まさに人に近い存在になってくるのでしょうが、そんな未来を見据えて10年前からメルセデス ミーを展開してきたのは、先見の明があると思います。
長谷川 10年前からあったなんて、かなり画期的なコンセプトですよね。
メルセデス ミー 東京(Mercedes me Tokyo)
車を売らないショールームとして、メルセデス・ベンツ日本が本国に先駆けて2011年にスタートした、メルセデス・ベンツの情報発信拠点。カフェやオリジナルグッズのコレクション販売のほか、車両見学や試乗サービスを行っている。六本木のほか品川プリンスホテル、羽田空港、大阪に常設。
中村 住まいを見てみても、テクノロジーの進歩とともに私たちの暮らしは少しずつ変わっていくものですけど、設計者がすべてをどうこうできるわけではなく、やはり社会のインフラやシステムへの依存は避けられません。日進月歩で技術が進化しているのに対して、建築はそこまで大きく変わり続けるものではないので難しくはあるんですけど、EQ Houseは意欲的にチャレンジした家だと思いました。
EQ House
メルセデス・ベンツと竹中工務店のコラボレーションによって、2019年「メルセデス ミー 東京」敷地内に建てられた、モビリティとリビングの未来の形を具現化した体験施設。家の中にモビリティが入り込み、リビングと交差。中央にある透明なインターフェイスに情報が浮かび上がり、手の動きや声で環境をコントロール。調光フィルムが空間を包んでプライバシーを守るなど、生命が宿っているかのような家を創出。
長谷川 中村さんのお仕事は、社会の進歩に対してより敏感でないといけないじゃないですか。自身のクリエイティビティと常に進歩している技術は、どう折り合いをつけているんですか?
中村 建築はそれこそ何千年も続いてきたものなので、僕自身は今はどちらかというと変わらないことの豊かさを大事にしています。もちろん人の感覚や身体や自然の定義なども、テクノロジーの進歩によって当然変わるものなので、そういう意味では常に興味を持っています。
——ところでお二人は普段、六本木にはよくいらっしゃいますか?
長谷川 来るのですが、東京ミッドタウンや六本木ヒルズなどお決まりのところばかりで、以前のように街をぶらぶら歩いて立ち寄るようなことが、少なくなってしまいました。
中村 僕もヒルズとミッドタウンが多いですね。
長谷川 複合施設バンザイって感じですよね。
中村 便利ですからね(笑)。
長谷川 そう、駐車場もありますし。私は映画が大好きなので、TOHOシネマズ六本木ヒルズによく行きます。午前中からお昼にかけての上映だったりすると、その日はジャンクフードOKってことにして、お昼ごはんをポップコーンにしちゃう。バターをいっぱいかけたポップコーンとコーラで、映画を観るんです。最近はコロナでなかなか難しいですけどね。
TOHOシネマズ六本木ヒルズ
都心型シネマコンプレックスの先駆けとして誕生した映画館で、TOHOシネマズのフラッグシップシアターとして2015年にリニューアル。独自規格の巨大スクリーン「TCX」のほか、最高級の音響を体験できる「ドルビーアトモス」「ヴィヴ・オーディオ」などを導入。
中村 東京ミッドタウンのテラス付きのレストランが好きで、よく利用しています。半屋外の豊かさがあるのが、東京ミッドタウンのいいところ。庭とか屋外の気持ちのいい場所をちゃんと持っていて、そことの関係をうまく取っているお店が多いですよね。クリエイティブな都市には、才能豊かな人たちが集まる部分と、人をずっとそこにいたいと思わせる居心地のよさがあるものです。『クリエイティブ都市論』という本にも書かれているんですけど、多様な人を受け入れながら、リゾートのような自然の豊かさを体感できる場所が、クリエイティブの重要な要素だと言われていて、東京ミッドタウンはまさにそういう場所だと思います。
『クリエイティブ都市論 ―創造は居心地の良い場所を求める―』
アメリカの都市経済学者リチャード・フロリダが、2008年に発表。クリエイティブ・クラスにとって自己実現の重要な手段となっている居住地の選択について、独自の経済分析、性格心理学の知見を使って実践的に解説している。
移動のツールであり、“第2の家”でもある自動車。
——お二人とも車を運転されるそうですが、車は生活の中でどんな存在ですか?
長谷川 私にとってはセカンドハウスみたいな感じです。朝から夕方まで車で移動することが多いので、とにかく車の中での快適さを重視しています。移動に使うことが多いのにプラスして、たとえばロケ撮影のときに車で待機するようなこともあるので、今の車に関しては、特に後部座席の快適さに重きを置いて選びました。1日に3、4カ所行くとなると荷物も増えて、その分のスペースも必要ですしね。
中村 僕の場合、車は仕事の行き帰りのツールとして毎日乗るもの。後ろにキャンプ道具的なものを積んで、気持ちのいい日にぱっと出して、外で仕事をすることもたまにあります。
——今回、EQAに実際に乗ってみていかがでしたか?
中村 今、結構長い時間をかけて自分の家を設計しているんですけど、屋上をソーラーで敷き詰めて発電して、電気自動車に切り替えようと思っているんです。今乗っているのはハイブリッド車なんですけど、走り出しの電源で動いている瞬間が無音で心地いいので、EQAもとても興味深く乗ることができました。加速が非常によく、しかもコーナリングが安定していて、SUVとはまったく思えない乗り心地でした。あと夜ひとりで乗っていて、助手席のほうに手を伸ばしたら、センサーが感知して手元にライトがついたのは驚きました。もともとメルセデスで定評があるのでしょうが、人の振る舞いに寄り添うような設計思想は素敵です。
長谷川 電気自動車は、今の車を買う前に試乗したことがあったのですが、EQAの乗り心地は包まれている感じというか、繭の中に守られているような感覚を味わえて、従来の「車に乗る」という印象とはまたちょっと違う気がしました。静かに加速するところも、余計にそう感じさせるのでしょうね。
中村 ギアを切り替える時のガクガクする感じがなくて、シームレスなんですよね。アクセルを踏んだり離したりする時も、全部つながっているような気持ちよさがありました。
長谷川 フォルムが丸みを帯びているのは、そういった動きをイメージしているんでしょうか?
中村 電気自動車の近未来感が表現されたデザインですよね。エンジンの放熱を気にしなくいいから、フロントグリルがなくなってブラックパネルで覆われている。当然、リアにもマフラーがないですしね。
長谷川 エネルギーが変わることで、デザインにも新たな可能性が出てくるんですね。
EQA
メルセデスの100%電気自動車「Mercedes-EQ」の第2弾として、EQCに続いて2021年4月に日本で発売されたコンパクトSUV。ほかにもEQ初のラグジュアリーEVセダンEQS、コンパクトSUVをベースにしたEQB、新たなビジネスサルーンEQEがドイツ本国で発表されている。日本への導入も待ち遠しい。EQB、EQE、EQSは日本未導入、写真は本国仕様。
——そもそも車には、どんな価値を求めていますか?
長谷川 運転するときの乗り心地や、子どもが乗ることも想定して複合的な理由で選んでいるのですが、テンションも私にとっては大事なポイント。車って、ファッションやアクセサリーのひとつみたいな感覚もあるので、乗ることでテンションが上がるような車を選びたいんですよね。とはいえそれだけでなく、未来を見据えて、自分が社会に貢献していると思えるようなサスティナブルな要素も、もっと積極的に取り入れていきたいです。
中村 僕はサスティナブルな建築やエコロジカルな建築を手がけていることもあって、ガソリン車のボンボンっていうエンジン音はかっこよくはあるんですけど、もはや楽しめなかったりします。なのでソーラーでクリーンに発電して、電気自動車に乗るようなライフスタイルに早く移行したい。建築もそうですが、今は場所性というか、その場所を大事にする文化がどんどんできていますよね。コロナ以降は顕著で、自分がいる場所を愛したり、大事にしないと生活が豊かにならないことに多くの人が気づき始めている。電気自動車はそんな現代の感性にとても合っていると思うし、場所を汚さず、利便性を保てるような存在に、どんどんなっていくんじゃないでしょうか。
※本記事は、2022年1月13日までの限定公開です
ニット¥15,400 (KYOKO HASEGAWA×Whim Gazette/ウィム ガゼット 青山店)
パンツ¥62,700 靴¥67,100 (ともにトリー バーチ/トリー バーチ ジャパン)
ネックレス¥57,200 (ガブリエラ アルティガス/ウィム ガゼット 青山店)
PROFILE
長谷川 京子/KYOKO HASEGAWA
女優。1978年生まれ。モデルとして活躍後、女優デビュー。
ドラマや映画などで幅広く活躍。YouTubeチャンネルも話題に。今夏には自身が手掛けるランジェリーブランド「ESS by(エス バイ)」がデビュー。
近著に「長谷川京子 おいしい記録」(集英社)で食と日々の暮らしのエッセーを出版など、活動の幅を広げている。
中村 拓志/HIROSHI NAKAMURA
1974年東京生まれ。鎌倉と金沢で少年時代を過ごす。1999年明治大学大学院で建築学修士を修めた後、隈研吾建築都市設計事務所を経て2002年NAP建築設計事務所設立。
自然現象や人々のふるまい、心の動きに寄りそう「微視的設計」による、「建築・自然・身体」の有機的関係の構築を信条としている。そしてそれらが地域の歴史や文化、産業、素材等に基づいた「そこにしかない建築」と協奏することを目指している。20日本建築学会賞(作品)ほか多数受賞。画像:KEI Tanaka





