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アーティストMHAKがEQAで表現した、 電気自動車とアートの未来

photo: Susumu Moritaki
words: Satoru Yanagisawa

先日、お披露目されたメルセデス・ベンツの新型電気自動車「EQA」。その発表に先駆け、開発中のテストカーをイメージし、独自のカモフラージュグラフィックをのせたEQAで、私たちの期待感を高めてくれたのが現代アーティストのMHAK(マーク)さん。そんなアートピースが展示されているメルセデス ミー 東京に隣接のEQ Houseで、作品に込めた想いを語ってもらった。

「オファーをいただいたときは『よし、来た!』って感じでしたね。打ち合わせでコンセプトをうかがって、そこからはもう脳フル回転です。本当だったら、実際に公道を走っていても違和感がないくらいのトーンで行きたかったんですが、そうなると“カモフラージュする”という、発表前のティザーとしての趣旨からかけ離れてしまうので(笑)。
でも、存在感を前面に押し出すラッピングカーが多いなか、その抜き具合といいますか、そんな部分は僕らしく、イメージどおりに仕上がったと思っています」

MHAK

メルセデス・ベンツから「EQ House」とのコラボレーションの打診を受けたときの感想、そして自身のアイデンティティともいえるカモフラージュデザインを施した電気自動車「EQA」の仕上がりについて話すMHAKさん。

「このEQAは、排熱のための網目がまったくないフロントグリルなどにガソリン車との違い、近未来的な雰囲気を感じました。面が多いので、デザインを考えやすかったですね。ベースとなる車体は白、そして展示されるEQ Houseも事前に見させてもらっていたので、この白い空間に違和感なく存在するものをつくりたかった。本来であれば、こういった展示をさせていただくときはもう少し色を使うんですが、僕のなかで『白と黒の車体こそメルセデスでしょ』というイメージがあったので、柄はモノトーンに。
突拍子もないものが入っているという印象になるのだけは避けたい。とはいえ、それなりにパンチもなきゃいけない。なので、ラッピングをする部分と余白のバランスはすごく考えました。誰もがやり得るような簡単なことはしたくなかったんです」

MHAK
MHAK

そのなかでも一番こだわったところ、気に入っている部分はどこかと聞いてみた。

「真横からの見た目ですね。サイドだけは自分のスタイルをバチッと入れたくて、クルマに対してはずっとそういう思いがあったので、そこだけは絶対にはずせなかった。流線的というか、自然と流れるようなデザインが僕のスタイルなので、クルマ自体のフォルムとの融合にはこだわりました。サイドに関しては20~30回は描き直していると思います」

MHAK

プロダクトとの調和なくしては、空間との調和をかなえることはできない。MHAKさんは一貫して“生活空間との共存”をテーマに制作活動をおこなっている。そんな思いに至った経緯とは?

「古い家具が好きで、ずっと集めていたんです。そんな家具と絵を違和感なく組み合わせたいというところから、僕の創作活動ははじまりました。純粋に絵が好き、絵を描くことが好き、という方向じゃないところから入ったので、“モノ”に落とし込むのが好きなんです。だから、自分の作品もあまり邪魔にならないようにしたいと思いますし、自分が欲しくないものはつくりたくないというか」

僕の描いた模様が、誰の生活にも
当たり前に存在していてほしい

言わずもがな「Mercedes-EQ」は、電動化による無駄な排出のない未来、サステナブルな社会実現を目指す、メルセデス・ベンツの一大プロジェクトだ。MHAKさん自身も、地域創生をテーマとしたアーティスト集団「81 BASTARDS」の一員として、持続可能な社会の実現に向けて日々活動をしている。

MHAK

「僕の地元は福島の會津若松なんですが、東日本大震災がいちばん大きかったですね。そこから地方のよさを見つめ直すようになって、いろいろな町に行かせていただきました。壁画を描かせていただいたり、そういった活動で呼んでいただくことが多いんですが、その地域特有の民芸品ってあるじゃないですか。その作業現場を見学したり、伝統工芸師さんにお会いするなかで、そういった活動が楽しくなってきて。
伝統工芸師の方たちは頭が固い人が多くて、一見さんは門前払いされてしまう。何回も足繁く通って、『また来たのか、帰れ帰れ』となるんですけど、そのうちだんだんと心を許してくれるようになるというか。そんな方たちといっしょに作品をつくるのが最終目標なのですが、地元、會津若松の漆職人さんとはよくモノづくりをさせてもらっています」

“アート”と聞くと、敷居が高いもの、自分には縁がないもの、と思っている人も少なからずいるかもしれない。でも、MHAKさんのアートが目指す“生活空間との共存”は、そんな人たちにも心地よく寄り添う可能性を秘めている。

「僕の作品は、アートの間口を広げるためのものだと思っています。昨今、現代アートのブームもありますが、僕がこういった模様しか描かないのは、抽象的なものではなく具象的なものを表現してしまうと、『はい、ここに絵がありますね』って、とてもわかりやすいじゃないですか。パブリックなもののようなイメージで、『これ何?』って思われるくらいが僕の理想です。模様が描かれているくらいだったら、違和感なく空間に溶け込みますし。それで出来上がったのがこの模様で、また変わっていく可能性もありますし、今後どうなるかはわからないですけど。
単純に僕のゴールは、このパターンが世界中でライセンスフリーになって、勝手に“MHAK”っていう名前で使われてほしいんです。ドットとかストライプ、それこそ迷彩柄みたいに、誰がつくったかわからないようなもので全然いい。そんな、どんなものにも当てはまる例としていろんなプロダクトをやらせていただいていて、誰にとっても当たり前の柄のひとつになってほしいですね。最終的には、そこを目指したい」

MHAK

電気自動車が、私たちの生活とクルマをより密接なものにしてくれるとしたら、MHAKさんのアートワークは、より多くの人たちとアートをつなぐ架け橋となってくれるもの。EQAとMHAKさんの出会いは、必然だったのかもしれない。

SPOT INFORMATION

EQ House

EQ House

メルセデス ミー 東京に隣接する「EQ House」にてMHAK特別デザインEQAアートピースを5月9日(日)まで展示中。

ADDRESS 東京都港区六本木7-3-10
https://www.mercedesme.jp/
 
※展示は5月9日(日)をもって終了しています。

PROFILE

MHAK

MHAK

1981年、會津若松生まれ。ペインター/アーティスト。デザイナーズ家具や内装空間に多大な影響を受けたことから、絵画をインテリアの一部として捉えた“生活空間との共存”をテーマに壁画を中心とした制作活動をおこなう。空間と絵画を共存させることは絵画そのものを雰囲気として認識させる必要性があると考え、抽象表現にこだわったスタイルを追求。曲線で構築し反復する独特なスタイルをつくり上げ、個人邸や飲食店、ホテル客室など数々の内装壁画を手掛けてきた。一方で、Levi’s® HARAJUKUやRVCA SHIBUYAなどといったストア外装壁画も数多く手掛けている。その他、adidasやYONEX、THE NORTH FACEなどといったグローバル企業やストリートブランドへのアートワークの提供もおこない、2017年にadidas Skateboardingとのコラボレーションで自身の名前が冠されたシグニチャーシューズを含んだコレクションをグローバルで発表。また地域創生としての地方での活動や、世界中にメンバーを要するアーティスト集団「81 BASTARDS」の一員など、その活動は幅広い。現在までに日本はもとよりアメリカ、オーストラリア、イタリア、アルゼンチンなど、世界中のさまざまな都市で作品を発表し、国内外にその独特な世界観を拡げ続けている。

ABOUT CAR

EQA 250

持続可能なクルマ社会を実現するために、メルセデス・ベンツが新たに立ち上げた電気自動車ブランド「Mercedes-EQ」。EQAは、メルセデスの100%電気自動車であるEQCに続く第2弾となる、小型電動SUV。排熱のための網目がないブラックパネルグリルやテールライトがシームレスに繋がった背面など、先進的なデザインを纏う。機能面では、電気自動車ならではの高い静粛性に加え、メルセデスの特長である高度な操縦安定性、品質などをさらに高いレベルで実現。ドライバーの安全運転を支援するサポートシステム、レーダーセーフティパッケージを標準装備する。

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