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趣味に生きる。鮨に生きる。身も心も整える場所──房総の海

photo: Yui Fujii(Roaster)
words: Kohei Kawakami
direction: Akiji Osaki(Roaster),
Narumi Amano(Roaster)

予約困難な人気店で知られる中目黒の『鮨 尚充(すし・たかみつ)』店主、安田尚充さんのロードトリップを追う本企画。『鮨 尚充』で取り扱う食材は産地や時期を見極めた極上のものばかりだが、なかでも同店の真骨頂と言えば「うに」。その至高のうにを求め、海外の美食家が予約を取ろうと必死になり、その一席にはプレミアム価格がつくことも。そんな同店を切り盛りする安田さんには、一年を通じて欠かせないことがあると言う。それは意外にもサーフィンなのだとか。今回安田さんは、試乗するGLE 400 d 4MATIC Sportsにサーフィンボードを乗せて、千葉県の岩和田海岸へ向かった。

「サーフィンは趣味としてはもちろんですが、なにより海が好きなんですよ。もともと両親が屋形船を営んでいることもあって、幼少の頃から海は身近な存在。僕のルーツといってもいいかもしれません。出張先のニューヨークでもサーフィンをするくらい好きで、季節を問わず一年を通して、時間を見つけては海に入っています」

身も心も整える場所――房総の海

「サウナで“整う”という表現がありますよね。僕にとっては海がそんな場所。海に来ることで考えや気持ち、体調のバランスの整理がつくんです。

サウナの場合、暑いサウナ室から出た後に冷水に入り、休憩をするまでがワンセット。対して海の場合は、こうしてクルマで移動している時間も“整う”ためのワンセットに含まれています。サーフスポットへの移動はクルマが欠かせませんし、何においても事前準備は大切な工程ですから。さらに今日は、メルセデスでの移動。バッチリ整いそうです。というのも、僕にとってメルセデスは特別な存在なんです」

身も心も整える場所――房総の海

「僕は、16歳で自由が丘の鮨店『鮨幸』に入店した後、2011年に独立するまで15年間『鮨幸』で修行をしていました。妻と出会ったのは、その修行時代でした。付き合いをはじめた頃に、彼女のご両親の一番好きなクルマは、メルセデスだと知りました。はじめは、理由がよくわかりませんでした。それこそ修行している身分で買えるクルマでもありませんでしたし。しかし、今はわかります。彼女のご両親が求めていたのは安全性だ、と。今日試乗した最新モデルのGLEにも感じますが、メルセデスの安全性は何にも代えがたい特別な価値だと思いますね」。

本来の温故知新。それを地で行く鮨職人としての半生

身も心も整える場所――房総の海
身も心も整える場所――房総の海

「今では時間をつくって海に来ることができますが、修行時代はそうはいきませんでした。朝の9時から深夜の2時まで働き通し、それを15年間続ける毎日でしたから。当時は、休みの日は殆んど寝ていましたね(笑)。僕が経験してきた修行というものは、古いスタイルだと思います。近年、15年も修行をする職人は殆どいません。普通の人にとっては苦行に見えるかもしれません。でも僕にとっては、板場に立ち、握った鮨をお客様に提供することが最高の時間なんです。鮨は仕事でもあり、“人生”そのもの。趣味といっていいくらい好きなことなんです。そのことに気付いたのは修行をはじめて2年目のことでした。ですから、修行していた15年間、一切迷いはありませんでしたね」

身も心も整える場所――房総の海

まな板をイメージさせる色味にこだわって選んだショートボードを愛用。

身も心も整える場所――房総の海。

お気に入りの滑り止めワックスは「Sticky Bumps」。この季節(2月下旬)は、適正水温14℃〜19℃で春夏用の「Cool」(写真左)、もしくは適正水温15℃以下で冬用の「Cold」(写真右)を使用しているそう

「サーフィンで行くのはもっぱら千葉方面が多いです。九十九里の片貝海岸をはじめ、鴨川の方にも行くこともありますね。早朝、もしくは前日の夜に出て海岸の駐車場で仮眠し、朝日が昇るタイミングで海に入るんです。今回は撮影と言うことで朝マズメ(※1)を過ぎていますが、この時間の海も良いですね」

(※1)夜明けから日の出までの前後1時間程度の時間帯

身も心も整える場所――房総の海

「海は、いつ来ても違う表情があります。毎回同じコンディションだったら飽きてしまうし、10年以上も続けてはいないと思います。その日の表情にあわせて上手く波に乗れたときは至福の瞬間ですね」

身も心も整える場所――房総の海

毎回違う表情を見せる海。それは板場も同じ

身も心も整える場所――房総の海

「毎回違う表情を見せてくれるのは海だけではありません。僕が普段立つ板場も同じです。お客様の年齢や性別、今日の体調や様子をよく観察して、シャリの量を減らすなどの調整をしたり、出すネタや器を変えたりしています。それは初めて来るお客さんはもちろん、常連さんの前であっても。機械のように毎回同じものを出すことはできますが、それは僕の鮨ではないし、面白くないですから」

身も心も整える場所――房総の海

「こうして眺めているだけでも十分満足できる」と、語る安田さん。

「切磋琢磨という言葉は本来、切は骨、磋は加工がしやすい象牙、琢は珠を意味し、それぞれのパーツに合った磨き方でなければ輝きませんよ、という意味らしいです。それと同じで、サーフィンでは毎回異なる波にも都度あわせる必要があり、鮨では、お客様にあわせてより良い料理を提供する。サーフィンと鮨、まったく違うものですけど、とても似ているんですよね」

身も心も整える場所――房総の海。

千葉県御宿町の岩和田海水浴場。人気のサーフスポットであり、海沿いに伸びるビーチラインの景観は美しくドライブにもおすすめ

高級食材だけでなく、時には地の物を頂く

身も心も整える場所――房総の海

サーフィン後は、腹ごしらえに安田さん馴染みの店へ。訪れたのは、漁協直営の食堂『ばんや』。鮮度良好でリーズナブルとあって、連日観光客で賑わう地魚料理店だ。
「『鮨 尚充』で扱っているのは厳選された高級食材。現在豊洲市場で流通する鮮魚のなかで最高峰のものが届きます。そうした関係上、普段滅多にファミリーレストランや回転寿司などの料理や食材を口にすることがありません。しかし、海や旅先では普段口にしないものも積極的に食べるようにしています。高級食材に舌が慣れてしまうと、お客様の感覚を理解できなくなってしまいますから」

身も心も整える場所――房総の海

『ばんや』の人気料理の一つ、「朝どれ寿司」850円

身も心も整える場所――房総の海

「ミックスフライ」850円。人気のアジフライを含め、地の魚をまんべんなく味わえる一品。

身も心も整える場所――房総の海

「修業時代は名店と呼ばれる店によく足を運びました。鮨のジャンルでミシュラン掲載店は28店舗ほどありますが、殆どの店に行ったことがあります。また、鮨に限らず仕入れ先で良いお店があると聞けば、積極的に食べに行くようにしていました。ミシュランで星が付かない店であっても何かしら発見はあります。例えば、今回お邪魔したこちらの場合は値段です。この価格でこのボリュームは驚きでした」

身も心も整える場所――房総の海

「サザエのつぼ焼き」2個800円。

身も心も整える場所――房総の海

安田さん曰く、知らない土地や店では地の物を選ぶのがいいそう。「やはり鮮度が違いますから、地の物に尽きると思います。いくつか頂いてそう確信しました。普段、自分が扱うものとは別次元のものですが、それでも価格を考えれば十分満足」

身も心も整える場所――房総の海

「海は良いですね。幼い頃から海に近い環境で育った僕にとって、海は身近な存在であると同時に心身を整えてくれる特別な場所。僕にとって板場を除けばこれ以上の場所は他にありません。定期的に海に入って“整える”ことで、“趣味”である鮨も生きていくと思っています」

PROFILE

安田尚充/Takamitsu Yasuda

安田尚充/Takamitsu Yasuda

鮨職人。『鮨 尚充』代表。16歳で自由が丘の『鮨幸』に両親のすすめで入店。その10年後には同店の板場に立ち、一フロアを任されるように。2011年に独立し現在に至る。常連客の中には俳優やタレントをはじめ、スポーツ選手など著名人が多く、活況を呈する東京の鮨店の中でもその存在感はトップクラス。

SPOT INFORMATION

『漁協直営ばんや本館』

『漁協直営ばんや本館』

ADDRESS 千葉県安房郡鋸南町吉浜99-5 
TEL 0470・55・4844 
営業時間 9:30~17:45(L.O 17:00)/土・日・祝9:30~19:30(L.O 18:45)
定休日 無休
駐車場 有り

ABOUT CAR

GLE 400 d 4MATIC Sports

スポーティさをさらに追求した、力強いエクステリア。従来よりもパワフルで滑らかなドライビングを実現したSUV。

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