3月のオーストラリアで開幕したF1GPの2017年シーズンも、11月24日(金)からの第20戦アブダビGPでついに最終戦を迎えた。すでにコンストラクターズタイトルはメルセデスAMG ペトロナス、ドライバーズタイトルはルイス・ハミルトンに決まっている。
ただし断じて消化試合ではないと、虎視眈眈と優勝を狙っているドライバーがいる。メルセデスAMGのもうひとりのドライバー、バルテリ・ボッタスだ。
アブダビGPを前にしたボッタスのドライバーズポイントは280ポイント。2位のセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)の302ポイントとは22ポイント差だ。
ご存じのようにF1では優勝すると25ポイントが与えられる。したがってベッテルの順位次第ではあるけれど、ボッタスには年間2位の可能性があるのだ。
メルセデスAMG ペトロナスはすでに、2018年シーズンのドライバーに関しては今年と同じ2人で挑むと発表している。来シーズンにつなげる意味でも、ボッタスに注目が集まる。

アブダビGPが行われるヤス・マリーナ・サーキットは、アラブ首長国連邦のアブダビの郊外に浮かぶヤス島に建設された。リゾート施設開発の一貫として計画されたサーキットで、マリーナ周辺を走るシチュエーションやコース周辺に高級ホテルが立ち並ぶあたり、東洋版のモナコGPの趣もある。
ドイツ人設計者のヘルマン・ティルケが手がけ、F1開催サーキットとしては珍しい反時計回り。このコースで初めてF1GPが開催されたのは2009年で、その時点では初めてのトワイライトレースで、コースには照明が灯された。
レイアウトの特徴は、約1.2kmの長いストレートと、終盤の低速コーナーの連続が組み合わされていること。平均速度が時速200km前後の比較的低速なコースで、オーバーテイクが難しいことで知られる。

25日(土)の予選では、注目のボッタスが速さを見せた。
現地時間の午後5時、夕闇が迫るヤス・マリーナ・サーキットの気温は24度にまで下がる。予選Q1ではボッタスとハミルトンの2台のメルセデスAMGがファステストラップを交互に塗り替え、そこにフェラーリ勢が続くかたちとなった。
予選Q2も同じような展開が続き、スターティンググリッドを決する予選Q3を迎えた。予選Q3は最初からボッタスが勝負をかけ、1回目のアタックでハミルトンに0.172秒差をつけてトップに立つ。
ハミルトンも懸命に追いかけるが、最後のタイムアタックの終盤でややマシンの挙動が乱れ、ボッタスのタイムには届かず。ここで、ポールポジションにボッタス、2位にハミルトンというスターティンググリッドが決まった。

ボッタスは、予選を満足げな表情で振り返った。
「フリー走行からマシンのセッティングを少し変えたら、それがうまくいった。本当に良い予選を戦うことができたと思う。明日、一番前の位置からスタートできることは、素晴らしい気分だ。前戦に続いて2戦連続でポールが取れたことはスピードに自信が持てるし、来季にもつながると思う」
一方、2位のハミルトンもボッタスのポールポジション獲得を祝った。
「バルテリ(・ボッタス)にはおめでとうと言いたい。自分に関しては、フリー走行から予選にかけて路面温度が下がるので少しセッティングを変更する部分があった。最後に姿勢が乱れたのはそれが理由だけれど、シーズン中にこういう実験ができたことは前向きに考えたい。ここはオーバーテイクが難しいコースだけど、すべてをかけて走りたいと思う」
ハミルトンも言うようにオーバーテイクが難しいこのコースでは、スタートが重要となる。はたして、2台のメルセデスAMG ペトロナスはいかに決勝レースを戦うのか。

26日(日)の午後5時、55周で競うトワイライトレースが始まった。気温は24度と、予選とほぼ同じ過ごしやすいコンディションだ。
このレースのカギを握るスタートであるが、波乱はなかった。ボッタスはしっかりとポールポジションからのスタートを決め、トップをキープ。ハミルトンが2位に続くが、ボッタスとドライバーズランキング2位の座を争うセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)も3位のポジションから上位をうかがう。
仮にボッタスがこのまま優勝しても、ベッテルが3位に入ると年間ランキングで追いつくことができない。目前のレース順位とは別に、最終戦だけあって年間ランキングも睨みながらドライバーとチームはレースを進める。

上位陣はワンストップで走り抜くことが予想されたが、21周目にまずボッタスがピットイン、タイヤを換える。3周後にハミルトンもタイヤ交換。この時点でもトップがボッタス、2位がハミルトンという隊列に変化はない。3位のベッテル(フェラーリ)とは徐々に差が広がり、10秒以上引き離す。
ボッタスとハミルトンはファステストラップを更新しながら1位、2位のフォーメーションを堅持。危なげなく、ワン・ツーフィニッシュでシーズン最終戦を飾った。ボッタスはポール・トゥ・ウィンで自身3度目となるF1での勝利を勝ち取った。ブラジルGPではポールポジションからスタートしたものの優勝は逃したが、今回はしっかりと勝ちきった。

レースを終えたボッタスは、「正直、ルイス(・ハミルトン)からのプレッシャーは相当だったよ」と切り出した。
「でも冷静に、ミスすることなく一周ずつ走ることができた。できれば年間のドライバーズランキングで2位になれればベターだったけれど、セバスチャン(・ベッテル)もこの週末は調子がよかったからね。まぁ、コンストラクターズタイトルに少しでも貢献できて嬉しいよ。チームの一員であることを本当に誇りに思う。今シーズンはいろいろと学ぶことができたから、来シーズンが待ち遠しい。この週末のポール・トゥ・フィニッシュによって、僕のパフォーマンスが証明できたからね」
最後まで同門のボッタスを攻略できなかった王者ハミルトンはこう述べた。
「バルテリ(・ボッタス)はすごいレースをやったよ。クリーンでミスもなかった。ここはオーバーテイクが難しいサーキットで、先行車両より1周あたり1.4秒速くないと抜くことができないんだ。いずれにせよ、このレースはバルテリがいいシーズンオフを過ごすきっかけになると思う。シーズンが終わって、家族と過ごせるのを楽しみにしているよ。今シーズンは素晴らしい1年で、ハードワークしてくれたチームには感謝の言葉しかない」
素晴らしいレースで1年を締め括ったメルセデスAMG ペトロナスと2人のドライバー。ただし、ライバルたちは今年の悔しさを胸に、逆襲に転じるはずだ。シーズンの終わりは、次のシーズンの始まりでもある。しばしの休息の後に、さらなる飛躍を目指してチームは始動するはずだ。
1年間、メルセデスAMGペトロナスF1チームへの応援をありがとうございました。