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【F1 2017 REPORT】第14戦シンガポールGP

words:Takeshi Sato

完走車12台の波乱のレース! 制したのは、ルイス・ハミルトン!

大都市で行われる非日常的な光景のナイトレースで、予想もしなかったドラマが起こった——。
9月15日(金)から17日(日)にかけて、シンガポール中心部のマリーナ・ベイ・ストリート・サーキットでF1第14戦シンガポールGPが開催された。

2008年よりF1グランプリとして開催されるこのレース。シンガポール中心地に特設される市街地コースで、高級ホテルや高層オフィスビルが建ち並ぶエリアをF1マシンが疾走するシーンも、ほかのコースでは見られないものだ。そして、最大の特徴は、ナイトレースであること。予選、決勝ともに夜のスタートとなるが、最新の照明設備によって昼間と同じ明るさでレースが行われる。その煌々とコースが照らされる様子はどこか現実離れしていて、昼間のレースを見慣れたファンを大いに驚かせた。

また、コースのレイアウトは、セパンやバーレーンなどのコース設計で知られるドイツ人設計者のヘルマン・ティルケの基本コンセプトを形にしたもの。1周5.065kmの市街地コースを反時計回りするマリーナ・ベイ・ストリート・サーキットは、第1回シンガポールGPが開催された2008年以来、安全性向上やオーバーテイクの増加を目的に、毎年少しずつ改良が加えられるが、過去9年セーフティカー出動率が100%というのも注目すべき点である。

観光客誘致が大きな目標のグランプリでもあるため、サーキットではF1レースのみならず、大がかりなコンサートなども行われ、会場は華やかに盛り上がる。このあたりも、他のF1グランプリとは雰囲気を大きく異にする。
今年はアリアナ・グランデやデュランデュランといったアーティストがライブを行い、会場はさらに熱気を帯びた。

16日(土)の予選は午後9時スタート。さすがに昼間の暑さは和らぎ、気温は28度にまで下がった。
予選Q1、Q2と周回が増えるにつれ、路面コンディションが向上してライバルたちはタイムを上げる。しかしメルセデスAMGの2台はなかなかタイムが上がらず、5位から7位あたりで低迷した。
スターティンググリッドを決する予選Q3でもタイムは伸び悩み、結果、ルイス・ハミルトンが5位、バルテリ・ボッタスが6位で予選を終えた。

予選を終えたハミルトンは、この順位を冷静に振り返った。
「シンガポールでは毎年苦戦するので、簡単にいかないことは予想していました。今日はベストを尽くしたけれど、これ以上のタイムは望めなかった。オーバーテイクの難しいコースなので、少しでも良いスタートを切りたい。ただ、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が並んでいるから、スタートでは何が起こるかわからない」

6位という不本意な結果に終わったボッタスは、こんなコメントを残した。
「フェラーリとレッドブルにこれほど差をつけられたことに、正直に言って驚いています。この種類のサーキットでの問題点が明らかになりました。明日のレースは厳しいですね。戦略と少しばかりの運が必要でしょう」

そして決勝レースでは、「何が起きてもおかしくない」「運が必要」という2人のドライバーの言葉が現実のものとなった。

17日(日)の決勝レース前に雨が降り、シンガポールGPは10回目にして初めてのウェットレースとなった。午後8時、スタート時点の気温は28.5度、路面温度は33.5度。
ハミルトンの“予言”通り、スタートから波乱が起こる。ハミルトンと熾烈なチャンピオン争いを繰り広げるセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)と、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、キミ・ライコネン(フェラーリ)の3台がスタート直後の1コーナーへ向けた先頭争いで後続を巻き込んだ多重クラッシュに発展する。

この波乱のスタートを切り抜けてトップに立ったのが、メルセデスAMGのハミルトンだった。レース後、ハミルトンは決勝をこう振り返っている。
「スタート前に雨が降ってくれて僕がどれくらい嬉しく感じたか、想像できないと思います」
ドライの状態では厳しいレースとなるはずだったが、雨によって状況は一変したのだ。そして上位陣がクラッシュ——。

トップに立ったハミルトンは、その後も順位をキープ。レース中に雨は上がり、コースはウェットコンディションからドライコンディションへと移行していく。
3度にわたるセーフティカーの導入でハミルトンが築いたリードが縮まる瞬間もあったが、ファステストラップを連発する安定した走りで2時間のレースを乗り切った。
メルセデスAMGのもうひとりのドライバー、ボッタスも3位でフィニッシュ。表彰台にはメルセデスAMGのふたりのドライバーが並び立った。

ハミルトンはレース後、このような言葉を残した。
「雨のシンガポールを走るのはどのチームにとっても初めてだったから、とてもチャレンジングでした。でも何より困難に立ち向かわなければならない状況が大好きです。僕らが最も苦手とするタイプのコースで、これだけのポイントを獲得できたのですごくハッピーだし、バルテリ(・ボッタス)もいい仕事をしました」

一方のボッタスはこう言う。
「これがレース。今日は、やればできるということをお見せできたと思います。すべてがわれわれにとって良い方向に運んでくれて、とてもラッキーでした」

このレースでハミルトンとチャンピオンを争うベッテル(フェラーリ)がリタイアしたことで、年間ランキングでトップを行くハミルトンはポイント差を28pに広げた。また、3位ボッタスがベッテルとの23pに縮めたことで、年間ドライバーズランキングでもワン・ツー・フィニッシュの可能性が出てきている。
コンストラクターズでは2位フェラーリに102pの差をつけ、タイトル獲得に大きく前進した。
次戦となる第15 戦マレーシアGPは、9月29日から10月1日にかけてセパン・インターナショナル・サーキットで開催される。

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