先週のベルギーGPからの連戦となるF1第13戦イタリアGPがイタリア北部の都市モンツァで開催された。前戦において自身200戦目を見事ポール・トゥ・ウィンで飾ったルイス・ハミルトンには、今回ポールポジション歴代獲得数単独1位、さらにドライバーズランキング首位浮上のチャンスもあり、いつも以上に観る者が期待してしまう、そんなレースでもあった。
イタリアGPが行われるアウトドローモ・ナツィナオナーレ・ディ・モンツァ(モンツァ・サーキット)は、1922年ミラノの郊外、モンツァ国立公園に建設された。現存するサーキットの中ではヨーロッパ最古であり、F1GPが始まった1950年以降、一度の例外を除いてここでイタリアGPが開催されている。
このコースの特徴は、F1が開催されるサーキットの中でも、なんといっても約250km/hと平均速度が図抜けて高いこと。全長1120mの長くてフラットなホームストレート、高速コーナー、3カ所のシケインなどで構成されるコースは、典型的なストップ・アンド・ゴー・サーキットであり、オーバーテイクが困難であるため予選順位が極めて重要となる。ポールポジションを取ったドライバーがレースに勝利する確率はモナコ以上とさえ言われている。コース全長5,793m 、周回数53周。毎回手に汗握る超高速バトルが繰り広げられる。今シーズンは9月1日(金)から3日(日)にかけて、そのモンツァ・サーキットでイタリアGPが開催された。

2日(土)の予選に先立って行われた午前のフリー走行は、雨にたたられ、各チームとも有効なテストを行うことはできなかった。午後2時に始まる予定だった予選も、強雨のために赤旗中断となり、本格的なタイムアタックが行われたのは午後4時40分を過ぎてからだった。
予選Q1で快走したのがメルセデスAMGのバルテリ・ボッタス。チームメイトのルイス・ハミルトンも2位に続いた。予選Q2では今度はハミルトンがトップ、ボッタスが2位と、順位が逆転。
そして午後5時20分過ぎからスタートした運命の予選Q3。ハミルトンが最後ラップでマックス・フェスルタッペン(レッドブル)のタイムを上回る劇的な展開で、1分35秒554を記録し、ポールポジションを見事獲得した。これで今シーズン8回目、さらにはミハエル・シューマッハの最多記録を更新する通算69回目のポールポジションを達成したのだ。一方ここまで好調を維持したボッタスは、予選Q3で痛恨のブレーキングミス。6位から決勝レースでの巻き返しを狙う。

予選を終えて、ふたりのドライバーは以下のようなコメントを残した。まずは大記録を打ちたてたハミルトン。
「いまの気持ちを正確に言葉にするのは難しい。本当に自分が成し遂げたのだと実感するには、少し時間が必要だと思います。今日は素晴らしい日で、自分が祝福されていると感じました。チームやスポンサーを務めてくださるメルセデス・ベンツ、ペトロナスのみなさんにも心から感謝したいと思います」
不本意な結果に終わったボッタスは、不調の理由は把握していると述べた。
「結局、ウェットタイヤの温度を管理することができませんでした。ただし、幸いなことに明日はドライのレースが予想されています。フェラーリの2台より前からスタートできるのは悪くない位置です。長いレースになりそうですが、しっかりとドライブしたいと思います」
ポールポジションを取ったドライバーが高い確率でレースに勝利する、というデータは、果たして証明されるのか。決勝に期待がかかる。

日曜日の決勝は、予選とは打って変わって晴天に恵まれた。午後2時、気温24度、路面温度36度というコンディションでレースはスタート。
ポールポジションからスタートしたハミルトンは、堅調にトップを維持。レッドブルのペナルティによって4位からスタートしたボッタスも、早くも3周目にストロール、4周目にオコンをいずれもターン1で抜いて2番手まで挽回し、メルセデスAMGが1-2体制となる。
ハミルトンは終始余裕を持って走行、タイヤを温存しながらトップを快走する。31周目に3位を走っていたベッテル(フェラーリ)がピットインすると、これを見てハミルトン、ボッタスも立て続けにピットインし、上位勢の順位は変わらない。そしてその後もハミルトンは、まったく危なげなく53周を走り切り、見事ポール・トゥ・ウィンで今シーズン6勝目、前戦ベルギーGPに続く2連勝を飾った。
ボッタスもハミルトンから約5秒遅れの2位でフィニッシュ。メルセデスAMGは今シーズン3度目となる1-2フィニッシュで、イタリアの熱心なファンに強さを見せつけた。

この勝利によってドライバーズランキング争いでもトップに立ったハミルトンは、喜びを爆発させた。
「信じられないくらいエキサイティングなシーズンになっている。シーズンが深まるにつれていい方向に向かっているのは、本当に素晴らしいことです。今日のレースに関して言えば、後方のマシンと少し差があったので、タイヤを温存できたのがよかったと思います。バルテリも素晴らしい仕事をして、この1-2を得ることができました。フェラーリ勢を抑えてトップに立てたことは喜ばしいことですが、レースはまだまだ続きます。特にフェラーリはハイダウンフォースでとても速いので、これからも厳しい戦いが続くでしょう。最後まで“ビースト・モード”で行くつもりです」
見事に2位に入って仕事をこなしたボッタスも、満足げだ。
「4番手からスタートして2位でフィニッシュできたのでとても満足していますし、チームのために1-2フィニッシュできたことも本当に嬉しいです。特に、モンツァで表彰台に上がれたことは、素晴らしい経験でした。先のことを言えば、フェラーリとの戦いは続くはずなので、まだまだやることはたくさんあると感じています」
今回の結果を受けて、ドライバーズランキングではハミルトンが238ポイントと2位のセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)に3ポイント差をつけて、ついにトップに立った。3位にはボッタスが続く。
コンストラクターズランキングでは、メルセデスAMGが435ポイントと2位フェラーリに62ポイントの差をつけて首位。
イタリアGPでヨーロッパ・ラウンドは終了し、シーズンも終盤にさしかかり、次戦からいよいよアジアツアーがはじまる。まずは、9月15日シンガポールGPだ。開幕が待ち遠しい。