約1カ月の夏休みが明けて、8月25日(金)から27日(日)にかけて、ベルギー東部のスパ・フランコルシャンサーキットでF1第12戦ベルギーGPが開催された。
スパ・フランコルシャンサーキットは、ドイツと国境を接するリエージュ州に位置する。フランス語圏であるベルギーにあって、一部でドイツ語も使われる地域だ。温泉の語源にもなったスパと隣町フランコルシャンにまたがることからこの名称となっている。このスパ・フランコルシャンサーキットでのGP開催は今回で50回目を数える。
アルデンヌの森の中にあるスパ・フランコルシャンサーキットの特徴は、枚挙に暇がない。まず1周が7.004kmと、他のコースに較べて非常に長い。高低差が104mもあることから、アップ&ダウンが激しく、そこにスリリングかつエキサイティングな高速コーナーがレイアウトされる。
このサーキットを最もエキサイティングだとするドライバーも多い。

なかでも“F1で最もスリリングなコーナー”とも称されるのが、左に旋回しながら進入し、そこから右へと向きを変えて一気に丘を登るオー・ルージュ。日本語で「赤い水」を意味するオー・ルージュは、高低差約80mの急勾配を左、右とステアリングを切り返し一気に駆け上がる名物コーナー。ドライバーには通常の横のGフォースではなく、強烈なバーティカルG(縦G)がかかり、世界中のサーキットの中で最も度胸が試されるコーナーのひとつだと言われている。ほぼ全開でオー・ルージュを駆け上がったマシンはその出口にある左コーナー、ラディオンを越え、その先のケメル・ストレートで最高速に達する。ストレートエンドのオーバーテイクポイントはスパの見どころでもある。2000年、当時マクラーレン・メルセデスに在籍していたミカ・ハッキネンが、ライバル、ミハエル・シューマッハとのスリリングなバトルを制して「20世紀最高のオーバーテイク」の伝説を築いたことでも知られている。
土曜日に行われた予選で見事な走りを見せたのがメルセデスAMGのルイス・ハミルトン。朝のフリー走行では2台のフェラーリの後塵を拝していたが、予選ではポールポジションを獲得。ハミルトンのポールポジション獲得は通算68回目となり、ミハエル・シューマッハに並んだ。
ハミルトンは、予選を次のように振り返る。
「シューマッハは歴史に残る偉大な人物であり、彼と並ぶことができたことを誇りに思います。明日の決勝レースではフェラーリとの差がもっと縮まり、接戦になるでしょう。ただし、この数週間は素晴らしい時間を過ごすことができたので、ポールポジションという有利な条件を活かしてレースを進めたいと思います」
一方、メルセデスAMGのもうひとりのドライバー、バルテリ・ボッタスは3位。悪くないポジションであるが、彼は問題を抱えていることを正直に明かした。
「マシンのバランスは悪くありませんが、グリップが不足していました。理由がわからず、少し混乱しています。これからデータを確認して、正解を探したいと思います」

27日(日曜日)の決勝レースは、気温22度、湿度58%のドライコンディションでスタート。雨にたたられることの多いスパ・フランコルシャンにあっては珍しく雨の心配がないレースとなった。
スタートからレース序盤は波乱なく、ほぼ予選の順位のまま推移。ハミルトンはトップ、ボッタスは3位をキープする。
29周目に他車のアクシデントでセーフティカーが導入され、ハミルトンと後続との距離が縮まる。33週目終盤ではセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)の猛追を受けるものの、ハミルトンはペースアップに成功。ファイナルラップまで攻防は続いたものの、ハミルトンはトップを維持し、そのままチェッカーフラッグを受けた。ちなみにこのレースはハミルトンにとって200戦目となるF1GP。記念すべきレースを見事にポール・トゥ・ウィンを飾った。
記念すべきレースを、ハミルトンはこう振り返る。
「今日のフェラーリはとても速く、素晴らしいファイトをお見せできたと思います。われわれもフェラーリも、まったくミスをしなかったはずです。セーフティカーが入った時には、あまりに遅いためにタイヤの温度管理が難しくなり、セバスチャン(・ベッテル)との差が縮まりました。今日のレースは、本当にチームに感謝したいと思います。チームの助けがなければ、勝利はなかったでしょう」
一方、失望を隠さなかったのが5位でレースを終えたボッタスだ。
「今日のレース結果には心から失望しています。セーフティカーが導入された後、僕はソフトタイヤを履いていましたが、オーバーテイクしていったライバルはもっとソフトなタイヤを使っていたようで、そこでグリップに差がありました。ただし、しっかりとポイントを獲得したことはチームにとってよかったと思っています。今回は僕にとって厳しい週末となりましたが、来週のモンツァではもっと強くなってサーキットに戻って来たいと思っています」
ボッタスが言う通り、夏休みが明けたF1はここから連戦が続き、9月1日(金)にはイタリアGPが開幕する。
ベルギーGPを終えてのドライバーズランキングは、ハミルトンがトップのベッテルと7ポイント差の2位、3位にボッタスが続く。コンストラクターズランキングでは、メルセデスAMGが2位フェラーリに44ポイントの差をつけてトップに立つ。
F1GPも残り8戦、チャンピオン争いはいよいよ正念場を迎える。