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【F1 REPORT】第9戦オーストリアGP

Word:Takeshi Sato

人生最高のスタートを見せたボッタス。
今季2度目、自身通算2勝目を達成!

前節の荒れたアゼルバイジャンGPから一週間。最終ラップ、しかもゴール直前で2位を走行していたランス・ストロール(ウィリアムズ)をゴール直前でかわし、0.105秒の差で2位となったバルテリ・ボッタスの走りは今も鮮明に記憶に残っている。そして今回、「人生で一番のスタート」とボッタス本人が語ったが、オーストリアGPでも人々の記憶に残る走りを披露した。

7月7日(金)から9日(日)にかけてF1第9戦がオーストリア南部の都市、シュピールビルクのレッドブル・リンクで開催された。ここは印象派の絵画に登場しそうな緑豊かな美しい丘陵地帯に位置し、1969年竣工という歴史あるサーキットだ。

まず、サーキットについて紹介したい。かつてはエステルライヒ・リンクと呼ばれ、1970年から87年にかけてはF1が開催された。地形を活かしたアップダウンの多いレイアウトは、オーバーテイクポイントの多い高速コースとしてファンやドライバーを魅了したという。たとえば3度のワールドチャンピオンに輝いた伝説のドライバー、ニキ・ラウダは、このコースの第1コーナーを「世界で最も難しい10のコーナー」のひとつに挙げている。

しかし、その一方でエスケイプゾーンやピットストレートが狭すぎて危険だという指摘もあり、F1は1987年を最後にオーストリアGPから撤退した。その後、有力なスポンサーの援助もあり、コースを改修。セパンやバーレーンのGPコースを設計したことで知られるドイツ人コース設計者、ヘルマン・ティルケの手によって、コースは安全基準を満たすモダンなレイアウトに生まれ変わった。
同時に名称もA1リンクへと改称、1995年に再びF1が開催されるようになる。2003年にF1開催は中断したが、2011年より再開、2014年には今の「レッドブル・リンク」と名称を改めた。

現在コースレイアウトは、かつてのような厳しさは影を潜めたが、アップダウンとストレートの多い、エキサイティングなサーキットであることに変わりはない。ちなみにオーストリアGPとメルセデスAMGペトロナスF1チームは相性が良い。この3年間で3連勝、昨年はルイス・ハミルトンが見事ポール・トゥ・フィニッシュを飾っている。期待に胸が躍る。

金曜日のフリー走行を経て、土曜日の14時に予選がスタート。気温は29度、路面温度は47度。
ここで素晴らしい走りを見せたのがメルセデスAMGのボッタス。見事に自身2度目となるポールポジションを獲得した。予選Q3でのタイムアタックは、本人も納得いくものだったようで、次のようなコメントを残している。

「Q3は完璧とは言えないけれど、よいアタックだった。今は最高の気分。僕にとってはまだ2度目のポールポジションだけれど、これから何度でも経験したい」

もうひとりのドライバー、ルイス・ハミルトンは、Q3のアタックにおいて本当にわずかなミスがたたり3位。「フラストレーションがたまる一日だった。ポールを獲る可能性は充分にあったが、自分のパフォーマンスにがっかりした」と落胆を露わにした。さらにハミルトンはギアボックス交換のペナルティを受けて順位が5つ降格。決勝は8番グリッドスタートとなった。

予選終了後の記者会見では、メディアから「後方からスタートするハミルトンが追いつけるように、ボッタスがペースを落とす作戦を採るつもりはあるか?」という質問が飛んだ。
これについて、ふたりのドライバーは明確に否定。ボッタスは、「後ろを気にせず、自分のレースに集中したい。ルイス(・ハミルトン)が追い上げ、ふたりでたくさんのポイントを獲得することを望んでいる」と述べた。
一方のハミルトンも、「バルテリ(・ボッタス)がペースを落とすなんて考えられない。彼が全力で走ることが、合理的だ」と、発言。決勝のレース展開に注目が集まった。

土曜日の時点では日曜日の天候が崩れるという予報もあったが、ドライのコンディションで14時に71周で競う決勝レースがスタート。29度、路面温度は47度と、コンディションは前日とほぼ同じだ。

ここで見事なロケットスタートを決めたのがボッタス。スタートを意味するレッドシグナルが消えた瞬間から、反応速度0.201秒というフライングの疑惑がかかるほどの驚異的な好スタートで、トップをキープする。調査によりフライング疑惑は払拭されたが、嫌疑をかけられるほどの素晴らしい反応だった。
ボッタスは好調ゆえか、自信満々のレースを披露。ファステストラップを更新しながら、徐々に後続との差を広げていく。前日にメディアが考えたような、ハミルトンを援護する動きは一切ない。8位スタートのハミルトンもすぐに順位を上げ、6位につけた。

31周目、まずハミルトンがタイヤを交換する。タイヤ交換後のハミルトンは、ファステストラップを連発しながら追い上げを図る。

レース終盤は、手に汗握る展開となった。
ボッタスはタイヤ交換のタイミングによって1位を明け渡すことはあったものの、基本的にはトップをキープ。このまま安泰かと思われたが、終盤に後輪にタイヤのオーバーヒート状態を示すブリスターが発生。2位を走行していたセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)との差は、残り5周で1.5秒差内となり、猛追を受けた。
そしてハミルトンは、終盤で3位を走行していたダニエル・リカルド(レッドブル)に猛アタック。唯一ウルトラソフトを履くハミルトンだが、ほかのドライバーよりも明らかにタイヤコンディションが厳しいなかで最速タイムを塗り替え続けた。特に最後の2周は、0.5秒差内となりデッドヒートを繰り広げた。70周目、ハミルトンはオーバーテイクボタンを使って最後の勝負に出る。コーナーでリカルドの横に並んだものの、彼の防御は固く、しっかりとインを守る。
結局、ボッタスは落ち着いてベッテルをいなし、見事にトップでゴール。ロシアGP以来となる、自身として2度目のF1での優勝を飾った!ハミルトンは、追い越すことはできなかったものの、表彰台まであと一歩の4位でフィニッシュした。それぞれの好バトルに観客席は大いに沸いた。

レース後、ボッタスは次のように喜びを語った。
「今日のシャンパンは格別だった!人生で最高のスタートができた。ただ、タイヤ交換して5周も走ると左後輪にブリスターが発生して、それがドライビングを厄介なものにした。セバスチャン(・ベッテル)を抑えて走るのは初めてではないから、とにかくドライビングに集中したよ。だからチャッカーを受けた瞬間はホッとした。タイトル争いはまだまだ続くから、これからもポイントを重ねていきたい」

一方のハミルトンは、こう振り返る。
「難しい週末だったけれど、今日のマシンは完璧だった。おかげでいいパフォーマンスを発揮することができた。本当だったらダニエル(・リカルド)を追い抜けたはずなので、次回からはこういったミスは避けるようにしたい。ドライバーズタイトルを争うセバスチャン(・ベッテル)とのポイント差は少し離されてしまったけれど、まだまだ先は長い。今日はバルテリが素晴らしいレースを見せたし、優勝して当然だ。彼もタイトル争いに加わっている。次のシルバーストーン(イギリスGP)が楽しみだよ。シルバーストーンをシーズン後半のきっかけにしたい」

オーストリアGP終了後のドライバーズランキングは、ハミルトンが首位セバスチャン・ベッテルと20ポイント差の2位、ボッタスがそこから15ポイント差の3位。ハミルトンが言うように3者の戦いにもなってきた。コンストラクターズランキングでは、メルセデスAMGが2位フェラーリと33ポイント差をつけた。次節は、ハミルトンも楽しみにしていると言うように母国でのレースに期待がかかる。好調ボッタスの2連勝も注目だ。メルセデスAMGペトロナスF1チームの戦いは、7月14日に始まる。

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