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smart vision EQ fortwoが具現化する「CASE」の全て

words:Kazuo Shimizu
photo:Ryo Kawanishi

「第45回東京モーターショー2017」アジアプレミア、smart vision EQ fortwoがかなえる未来とsmartの思想を、国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏にご紹介いただいた。

2016年9月に発表されたダイムラー社の中長期戦略、CASE(Connected/コネクト、Autonomous/自動運転、Shared & Services/カーシェアリングおよびサービス、Electric Drive/電気自動車)。あれからおよそ1年の歳月を経て、CASEは次世代自動車を象徴する用語として定着しつつある。しかも、その実現は遠い未来の話ではなく、手を伸ばせばそこにある近い将来のようだ。

2017年9月のフランクフルト・モーターショーに続き、東京モーターショーでもお披露目されたsmart vision EQ fortwo(以下、visionEQ)はこの中長期戦略、CASEを体現した世界初のモデル。全長2,699×全幅1,720×全高1,535mmのコンパクトな2シーターのボディはコロンと丸みを帯びていて何ともかわいらしいが、内部には最先端テクノロジーがギュッと詰め込まれている。

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このモデルは無人走行も可能な、いわゆるレベル5の完全自動走行機能を持つ電気自動車(ピュアEV)。幅広いユーザー層を対象としたシェアカーとしての利用が想定されている。

ユーザーはスマートフォンのアプリでシェアカーを呼び出す。このとき近隣にあるvisionEQのうち、もっとも効率的に配車できる車両がユーザーのもとに向かう。バックグラウンドでは人工知能(AI)による需要予測システムが動いており、ユーザーの乗降記録や配車状況などをもとに常時計算しているので、ユーザーを長々と待たせるようなことはない。

自走してユーザーのそばに来たvisionEQは、フロントグリルに配されたモニタパネルにユーザーの名前や簡単な挨拶などを表示する。シェアリングカーだけに周辺には同じデザインの車両がたくさん走っている可能性があり、商業施設や公共交通の駅周辺などでは混乱が予測される。車両に誰が乗るべきかを明示しておけば、トラブルを回避できるだろう。

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また、ヘッドライトはLEDディスプレイになっており、キャラクターの目のように動かすことができるので、車両がユーザーに対してあたかもウインクや目くばせしているように見せることができる。

シェアリングカーなので個々の車両を“愛車”とは呼ばないだろうが、こうした車両からの働きかけは人間に愛着を感じさせるには十分だ。こういうちょっとしたコミュニケーションにも手を抜かないのはさすがダイムラーと言うほかない。

ちなみに車外とのコミュニケーションについてはもっと積極的な内容を提案している。乗員がではなく、クルマ自身が車外にメッセージを発信するというアイデアは、smartならではの斬新な驚きに溢れるものだ。ドア部分はプロジェクションディスプレイになっており、シェア可能な場合は緑色、利用できない場合は赤色という具合に一目でわかる姿に変えることが出来る。空車時は天気予報やサッカーの試合結果などが表示されたら、外から見ていて楽しいだろう。

また、タクシーがステッカーで広告収入を得ているように、シェアリングカーのvisionEQのモニタは広告媒体として利用価値がありそうだ。走行環境に合わせて表示内容を変えれば、より良い広告効果を得られるだろう。広告の内容は各種商品やサービスでも良いが、観光地ならお勧めの観光スポットやご当地グルメをPRしたり、モーターショーなど開催中のイベントを告知したりすれば、車両自体が移動の目的を生み出すことができる。visionEQは人間を乗せて移動するだけではなく、地域活性化のためのツールとしても機能するかもしれない。

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さて、visionEQはレベル5(自動化定義のドライバーレスの完全自動走行車)なので、ステアリングホイールもペダルも一切ない。ユーザーは目的地に向かうまでの間、自由に時間を使うことが出来る。ドアいっぱいのガラス越しに流れる車窓風景を楽しむのも良い。

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そうこうしていると、スマホのアプリには別のユーザーから相乗りのオファーが届く。Yesを選べば道中でピックアップするし、一人でいたい場合はNoを選んでもいい。ちなみにダイムラーが用意したコンセプトムービーではYesを選び、途中から男女2人でドライブを楽しむ様子が描かれていた。
このように、visionEQはユーザーにいままでにない移動体験を提供する。

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システムのベースになっているのは2008年からダイムラーグループが手掛けているfree-float(乗り捨て)型のカー・シェアリング・サービス「car2go」。2017年6月現在、ドイツや中国など世界各国で展開しており、全世界のユーザー数は260万人以上。1.5秒ごとに1台の割合で利用されている計算だという。ここで蓄積したデータはvisionEQが描く近未来のシェアリングサービスの需要予測にも活用されるだろう。

簡単に利用できるシェアリングサービスが普及すれば、自宅から駅までの移動や、学校や幼稚園への送迎など、ちょっとした距離の移動が格段に楽になりそうだ。これまでは目的地に着いたら、駐車場を探さなければならなかった。通勤や通学で一斉に人々が動く時間帯になると、周辺道路も駐車場も大混雑で、ストレスフルな状況だった。

しかし、visionEQは自走可能かつシェアリングカーなので、ユーザーが降車したら、次の利用に向けてサッと動き出せばいい。街中では無用な渋滞が生じないだろうし、駅や商業施設の周辺にマイカー用駐車場を作る必要もない。人が集う都市は、より人間にとって住みやすい環境になるだろう。visionEQによって、まさにスマートな(賢い)モビリティが実現されるのだ。

ここで一旦、現実社会に戻ろう。

もともとsmartはシティコミュータとして愛されてきたモデルだ。コンパクトなボディは小回りが利き、走りも軽快で、都市の移動に向いている。遠くから見てもsmartらしさが感じられるデザインにはファンも多い。

そんなsmartファミリーに新しい仲間が増えている。特に注目すべきはオンラインストア限定モデル、smart forfour turbo crosstown limited(以下、smart crosstown)だ。これまでファッションアイテムなどにはオンライン限定のものが多数見られたが、クルマでは聞いたことがない。購買者はオンラインストアで決済までを行うことができるという。

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そんなレアキャラのsmart crosstownにはオフロードデザインを採用。全体にシックなトーンでまとめられており、とりわけ16インチ8スポークの黒いアルミホイールはがっしりした印象を与える。エンジンは最高出力66kW(90PS)、最大トルク135Nm(13.8kgf/m)を発生する直列3気筒エンジン。駆動方式はRRで、スポーティな走りが可能だという。

安全性にもこだわっている。万が一の事故でもキャビンを守る堅牢なトリディオンセーフティセルを採用。エアバッグは5つとも標準装備となっている。しっかり走りも楽しみたいユーザーにはもってこいの内容。標準装備されたプレミアムSDナビなど、オンラインストア限定モデルならではの充実した装備レベルも魅力だ。

走りよりも自分らしさを大切にしたいユーザーには2人乗りモデルに設定されているsmart BRABUS tailor madeがおススメ。こちらは今春から始まったtailor madeプログラムに対応する。ボディカラーやトリディオンセーフティセル、ホイールなどのエクステリア、シートやステアリング、アクセントトリムなどのインテリアを多彩な色と素材から組み合わせることが可能だ。

洋服のように注文を受けてから造るため、納車までに9カ月程度を要するが、自分のこだわりの全てを詰め込むことができる。多様な選択肢から選ぶプロセスも、自分だけの一台を心待ちにする時間も、全てが楽しいに違いない。

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そして、3月に欧州で発表されたのがsmart forfour electric drive。使い勝手の良い4人乗りのEVモデルだ。

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モーターは最高出力82hp、最大トルク160Nm。リチウムイオンバッテリーは17.6kWh。航続距離はNEDCモードで155kmと、日々の利用には問題ない。子どもを迎えに行って、買い物した荷物も積んで帰るためには、相応のキャビンスペースは必要で、その分の車体重量が増えるのは当然のことだ。ロングドライブよりも日々の使い勝手が重要な人にはぴったりのクルマだと言える。

そもそもsmartはEVに熱心なブランドである。初めてのEV、smart electric driveを欧州で発売したのは今から10年前の2007年のこと。現在では全ての車型でEVをラインアップする。さらに、先日のフランクフルト・モーターショーでは、2020年までに北米と欧州で発売するsmartの全てをEVにするという、野心的な方針も発表された。

visionEQの描く未来図はもうすぐそこに迫っている。

 

モータージャーナリスト 清水和夫

清水和夫

1954年生まれ東京出身。1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースで活躍する一方、モータージャーナリストとして、多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとしても多数出演。国際産業論に精通する一方、スポーツカー等のインストラクター業もこなす異色な活動を行っている。


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